現在手掛けている出版企画
2回目の投稿である。前回は勝手気ままに思いつくことを書いた。そうしたら、手厳しい反応があることを聞いた(自分で実際にその言説を直接見たわけではない)。
自ら勝手気ままに書いたので何を言われても仕方ないことではあるが、ネット社会の一面を見た気がした。これまで体験した出版界のマイナス面を書きたい気もするけど、前を向いて期待を込めて現在進めている出版企画について紹介させていただく。
『美術批評集成1955-64』
自分の関心が「美術」にあるため、これまで美術系の企画を立ててきた。刊行出来たもの出来なかったものもあるが、ほぼ日本美術史の古代から戦中戦前までを自分なりに研究し、且つ又研究者に指導していただきあれこれアプローチしてきた。その過程で、1945年以降の日本美術史については、未だ体系付けがなされていないと思った。手掛けた企画の先生の教え子さんでご縁もある、また方々情報収集した結果、極めて優れた研究者であると思いいたった光田由里さんに現代系の企画を相談したのはもう15年前になろうか。最初に『具体』の企画を紹介いただいた(見事に成功した)。同じように紹介いただいた、「実験工房」「ハイレッドセンター」は刊行できなかったが、この度漸く刊行できそうなのが『美術批評集成1955-64』である。戦後の美術批評を研究しているメンバーが15年以上に渡り継続してきた内輪の読書会の集成と成果の公開を目的としている。1955年から1964年にかけて刊行された雑誌・書籍はもとより、カタログ・パンフ・チラシ等灰色文献をも徹底的に収集しメンバーで共有、その上で読書会での討論協議、その成果を体系付けた構成で出版します。徹底的に集め、しっかり読み込み、体系位置づけをしていく、将に人文研究の本道と言えると思う。
編集・制作にも、当時実際の現場で出版の編集を担当した方と、美術展覧会のカタログに精通した方、両ベテランに入っていただき、配慮の行き届いた書籍となっている。戦後日本美術批評の基礎資料集の性格で専門家向けに大いに自信はある。他方、戦後美術史・美術批評・美学・思想史・表象文化等に関心をお持ちの読者にも、微に入り細を穿つ内容と系統だった編集作業から大いに読書の醍醐味を味わっていただけると自負している。『1945-54』『1965-74』『1975-84』の研究も継続中だけど、本書だけでも15年かかった、先の話は今回はなし。
本書は、専門性が高く大部な体裁ゆえ高額本となる。しかしひたすら継続性を持って「書籍」を読み、書籍が持つ特性に憑りつかれたメンバーの成果の一端です。是非刊行の暁にはご支援の程お願い申し上げます。