「営業職は地味だけれども」
週に1回、百万年書房で書店営業のお手伝いをしています。最初は「テープ起こしの仕事があったらやらせてください!」と申し出たのですが、「それより営業やってよ」という返答だったので、「うーん、まあいいか」と流されまして、今年6月から東京近郊の書店さんを回っています。
百万年書房についてかんたんに説明します。太田出版で『Quick Japan』の3代目編集長として活躍しつつ、数多くのヒット本をつくってきた北尾修一氏が2017年に立ち上げたひとり出版社です。ある騒動の“黒幕”扱いをされて、まとめをつくられたりもしたようですが、実際に接してみるとそんなに悪い人ではないように思います。とはいえ語弊を恐れずに言うと、ただの“いい人”がひとり出版社を立ち上げるはずもなく、参院選前日に安倍首相演説の最前列に潜んで、応援者を観察しておもしろがるような面があり、そういう部分も北尾さん、そして百万年書房の魅力のひとつだと感じています。
これまでに出した本は6冊で(※いわゆる書籍。ZINEや電子書籍を含めると9冊)、ジャンルは多岐にわたりますがどれも一過性のブームに終わらずずっと売っていけるテーマの書籍です。いちばん部数のおおきい(ひとり出版社では超異例の初版1万部!)本が、東京・中野に実在する「しょぼい喫茶店」を立ち上げるまでとその後を書いた実話『しょぼい喫茶店の本』。
そしていちばん最近出た本が、間違った使われ方をしがちな「愛国」ということばの意味を中学生でもわかるように説明した『日本国民のための愛国の教科書』。
この2冊だけでも、百万年書房のふり幅の大きさがわかるのではないでしょうか。
そんな百万年書房の書店営業を2か月ほどやってみて、疑問に思うことやむずかしさを感じることについて書いてみたいと思います。書店さんやほかの出版社の営業さんの意見を聞けたらうれしいです。
アポ問題
今のところ、基本はアポを取らずに突撃訪問してしまっています。しかし、このやり方だと担当の書店員さんが不在のことも多く、注文書を代理の方にお渡しするのみになります。書店員さんに直接お話できないと、当然注文をもらえる確率は下がるのですが、事前連絡しないのは、「どこに何時に行く」というアポを固定してしまうとそれに合わせてうまく回れるかどうか不安だからなのですが、これを書いてみて思うのは、「ここぞ」というお店には事前に連絡をして、担当さんがいらっしゃる時間くらいは聞いてもいいのかもしれませんね…。出版社営業のアポの有無について、書店員さん側の意見を聞いてみたいところです。
いきなり感問題
これは私が気にしすぎなんだと思いますが、書店員さんにとってみたら出版社営業の促進内容ってどうしたって唐突なんじゃないかなと心配になります。品出しやお客様対応で常に忙しい書店員さんをとっつかまえて、「すみません、先日出た『日本国民のための愛国の教科書』っていう、あ、いや、タイトルはあれですがヘイト本ではなくてですね…」と謎の弁明のような促進をすることについて、つい自分自身腰の引けるところがあります。以前、この問題について親交のある書店員さんに聞いてみたところ、「いや~こっちは出版社さんってそういうものだってわかってるから、別に気にしなくていいんじゃない?」と言われたことを励みにしていますが、色んな書店員さんの意見を聞いてみたいです。まあこれも、限られた時間で、書店員さんの心をつかみ、手短に的確なプレゼンをするスキルが身につけば…という問題かもしれません。
3.そもそもみんなどうやって情報入手しているの問題
これはちょっと論点がずれるのですが、そもそも書店員さんはどのように新刊情報を入手しているのでしょうか。取次の発行する冊子やトランスビューから送られてくるチラシ、出版社やほかの書店員さんのSNSなどいろんな情報入手方法がありますが、きっとそれぞれ違う方法をとっているような気がします。発注方法も、取次の発注システム、出版社への電話・FAX・メール注文などいろいろあるし、その前にどうやって欠品を見つけているのかも知らないし、わからないことが多い多い…。このあたりを明らかにすることで、何かヒントが得られるような気もするのですが、どうなんでしょうか。
こんな調子で、書店営業をしていて浮かぶ疑問は大小あって、知り合いに会うたびに相談したりもするのですが、属人的な部分も多いからかんたんに真似できないものも多く、一朝一夕に解決する問題は少ないとも思います。ほかの出版社の営業さんを見かけると、けっこうガンガン行ってるように感じるので(100点満点中わたしが70だとすると、ほかの版元さん120くらいに見える)、押しの弱さの問題なのでしょうか。
百万年書房の本は、みんなが同じ方向に行ってしまいそうなとき、「こんなのもあるよ」とオルタナティブな考えを示します。窮屈な社会のなかに放たれた6冊をもっと届けていくにはどうするべきなのか。書店営業職って派手なことはできないけれど、地味な行動を積み重ねることで少しずつでも何かを変えていけるのでは、という思いもあったりしています。ここまで読んでくださってなにかしら思った方、プラスなことでもマイナスなことでもいいので、わたしに会ったときになにかリアクションいただけたら幸いです。よろしくお願いします。