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版元「日記」

令和7年5月9日
 この数年、少しばかりハマっていることが、いくつかある。具体的に言えば、歌会、句会、エッセイの会、読書会──の4つの「会」の活動。中には会員として掛け持ちで、あるところは主宰として関わっている。

 短歌や俳句は、年齢からいえばずいぶん遅い入門だが、短詩型文学の魅力に気づくには私の場合、ここまでの歳月を必要とした、ということだろう。短いがゆえの奥深さに、慄きつつも魅了されている。特に17拍の俳句は、言の葉ならぬ言の刃でなされる居合の一閃の如し。塚本や寺山、蛇笏や三鬼を超える一首(句)を、という大法螺を素知らぬ顔で吹いておこう。
 エッセイの会は、東京・世田谷で73年続いている伝統ある同人誌。昨年、編集制作を依頼されたのを機に、代表も先代から委譲された。昭和27年5月発足、その前月にサンフランシスコ講和条約が発行されているので、アメリカから独立した翌月、まさに意気揚々と戦後民主主義を、女性が「書く」ことで実践してゆこうという理想の元に生まれた女性によるエッセイの会だ。最近では旗色の悪い「戦後民主主義」が、一地域でひっそりと、こんなにも息長く続いていたのは驚きでもあった。世田谷版「綴り方教室」の未来形を、参加者と一緒にデザインしていこうと思っている。
 読書会は小田急線沿線のとある駅近にある休業状態の珈琲店を月に一回使わせていただき4年目になる。私自身マスターを気取って珈琲を淹れ、カウンターの読書会子に供している。小さな川に面し、書棚に囲まれたカウンターしかない書斎のような小空間だが、珈琲の香に包まれて好きな本について語り合うひと時は何ものにも代え難い。この他にも気のおけない仲間たちと続けている古典文学(源氏物語や徒然草)の読書会とか……。
 おいおい、いったいいつ仕事してるんだ、と言われそう(実際言われている。特に妻から)だが、これら「私」の部分は、いずれ出版業という「公」を豊穣にしてくれる堆肥となるような気もしている。
 この「公」と「私」の融合が、私の「林住期」で、その媒体は「言葉」以外にはなく、韻文や散文を捻り出す真剣なる言語遊戯に興ずることと、人様(著者)の言葉を結晶化して本にすることは、私の中では紛れもなく一つのもの(営為)なのだ。
「版元日誌」というより、日記になってしまったこと、ご容赦ください。

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