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MCDスタディーズ:福岡+みつめる
- 出版社在庫情報
- 品切れ・重版未定
- 書店発売日
- 2023年4月20日
- 登録日
- 2023年3月12日
- 最終更新日
- 2023年5月6日
紹介
この本のタイトルであるMCDは、福岡女学院大学人文学部メディア・コミュニケーション学科のカリキュラム・三領域を表しています。Mはメディア(media)、Cはコミュニケーション(communication)、Dはデザイン(design)です。また、各章に共通するキーワードのいくつかをサブタイトルとしています。この本は、本学科で授業を担当している教員の研究成果の一端に触れてもらうために作られました。各章では、執筆者が独自の切り口でそれぞれの論を展開しています。本書のなかでの議論が学生や地域のみなさんに共有され、次の議論を生むきっかけになることを願っています。
目次
第一章 カネミ油症事件が伝えるもの~食品公害から私たちの生活を考える~
講演録――私にとってのカネミ油症事件
小論――消費社会のなかの食生活
はじめに/カネミ油症事件の背景/食の工業化と安全性/「ダーク油事件」の軽視による油症被害の拡大/企業の社会的責任/おわりに――私たちの「食卓の肖像」
第二章 天神ジェンダーマップの制作~埋め込まれた社会的規範を可視化する~
一 日常のなかのジェンダー
二 ジェンダーをめぐる社会的規範
三 福岡県民のジェンダーイメージとその実態
四 都市に埋め込まれた社会的規範の可視化
五 より暮らしやすい社会の実現に向けて
第三章 ローカルメディアが果たす役割と可能性~日常のストーリーを語り、地域をつなぐ~
一 メディアと私たち
二 地域を知るためのメディア利用
三 ハイパーローカル・メディア実践
四 地域社会を担うメディア
五 ケーブルテレビと学生による協働実践
六 地域の「物語り」を紡ぐために
第四章 「振武寮」があった時代を生きた福岡女学校生~戦時下の「記憶」を語り継ぐ~
一 福岡大空襲で失ったもの
二 福岡女学校にあった「振武寮」
三 明らかになった「振武寮」と福岡女学院のつながり
四 学院史に残された「振武寮」の記録
五 戦時体制下のキリスト教主義
六 勤労動員された福岡女学校生
七 忘れてはならない戦争の「記憶」
前書きなど
『MCDスタディーズ』の二〇二二年度のキーワードは、「福岡」と「みつめる」です。「福岡」と聞いて、まず何を思い浮かべますか。この本を読み進めていくと、みなさんが今まで通りすぎてきたものや、かつて起こった出来事を新たに知るきっかけになるかもしれません。それぞれの章について簡単に紹介しておきます。
第一章は、カネミ油症事件について書かれています。これは、北九州市でいまも操業を続けているカネミ倉庫という会社が一九六八年に起こした食用米ぬか油による食中毒事件です。被害は西日本一体に広がっていますが、認定患者の数がもっとも多かったのは福岡県です。この事件の概要と背景、そしてそれによる深刻な被害が今でも続いている現状をカネミ油症患者である三苫哲也さんの講演録から学んでほしいと思います。
第二章では天神が舞台として登場します。普段は何気なく歩いている街ですが、実はさまざまなモノからのメッセージであふれています。学生が天神の街を歩いて拾い集めた広告などの〈モノ=メディア〉の意味を「ジェンダー」という切り口から読み解いた成果が、この章には収められています。身近な場所でも、時には歩みを止めてあたりを見回すと、思わぬ発見があるかもしれません。
地域のコミュニティの形成には、普段の暮らしのなかから生まれるストーリーを語り、地域で共有するためのネットワーク作りが欠かせません。そのなかでメディアが果たす役割は小さくないでしょう。第三章では、地域社会を担うメディアであるケーブルテレビに焦点を当てています。福岡のケーブルテレビと学生との協働実践がどういうものだったのか、そこから何がみえてきたのかを確かめてください。
第四章は福岡女学院が薬院にあった時代、特に太平洋戦争の時代に焦点をあてています。女学院に残された記録を中心に、その頃の生徒たちがどのような生活を送っていたのかを紐解いています。また、そこにはほとんど記録されなかった帰還特攻兵の収容施設「振武寮」にも注目しています。学院史などには書けなかった思いや十分には記されなかった出来事に目を向けると、当時の女学校生の日常がみえてくるはずです。
それぞれの章で取りあげた具体的な事例やそこで指摘されている問題点は、けっしてローカルなものではありません。今日の社会において、それらはより一層グローバルで普遍的な意味をもつはずです。この本を読んだあなたの「みつめる」先の世界が変わることを期待します。
上記内容は本書刊行時のものです。