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サメを追っかけ、病にも追っかけられて 手島和之(著) - ロゼッタストーン
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サメを追っかけ、病にも追っかけられて (サメヲオッカケ ヤマイニモオッカケラレテ)

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B6判
縦182mm 横128mm 厚さ10mm
重さ 220g
148ページ
並製
価格 1,800円+税
ISBN
978-4-947767-18-9   COPY
ISBN 13
9784947767189   COPY
ISBN 10h
4-947767-18-9   COPY
ISBN 10
4947767189   COPY
出版者記号
947767   COPY
Cコード
C0095  
0:一般 0:単行本 95:日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2020年6月4日
書店発売日
登録日
2020年6月1日
最終更新日
2021年4月9日
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紹介

この本は、30年以上サメの研究を続けた男性の自伝的エッセイです。著者の手島氏は、急性骨髄性白血病のため、2020年2月4日に亡くなりました。ちょうど著者校正が終わった段階で、あとの作業は、次男の信洋さんが引き継いでくださいました。
人生が残り少ないことを覚悟し、これまでやってきたことを書きのこしたいという思いで綴られた魂の1冊ですが、文章のタッチは明るく、サメについての専門的な内容もわかりやすく書かれています。サメは対外受精ではなく交尾をするとか、サメの中にはサメの形をした赤ちゃんを産む種類もいるとか、魚なのに魚っぽくないサメの世界は、非常に興味深いものです。著者は本の中で、ホシザメの進化に関するある仮説をとなえ、何千年か後に解明されるだろうと予言しています。小さな本の中に、ロマンが詰まっているのです。

目次

はじめに
定年退職・妻の死そして母の死
食道の破裂
急性骨髄性白血病
お上がり
海技実習
ビールは不浄か 
マレーシアでの日々
英語(一)
英語(二)
英語(三)
星ふる夜にホシはなし
ホシザメとシロザメ
交尾をするさかな 
卵生・胎生・胎盤
胎盤についての会話
お父さんと信くんとのおはなし 
世界のホシザメ類
水産大学校助手と水泳部顧問
文部省移管
アメリカの親友シーヒーさん 
アメリカ東海岸におけるシャークマンについて
水産庁遠洋水産研究所
北東太平洋において
水産庁西海区水産研究所下関支所
水産庁西海区水産研究所石垣支所 
第二背鰭を欠くオオテンジクザメ
オオテンジクザメのこども子供 
水産庁東北区水産研究所
退職
恩師水江一弘先生
長府に住んで
ビダーザ療法 
おわりに

父から託された最後の仕事(手島信洋)

前書きなど

昭和二十二(一九四七)年生まれの私は、太平洋戦争の敗戦から七十四年目の令和元(二〇一九)年八月十五日で満七十二歳となりました。
 巷での会話を耳にしました。
 「戦争を知らない団塊世代のヒトが、いよいよ、七十歳代になったんだね。もう、そんな歳になるのかね」
 「早いね、時間の経つのは」
 「誰がいい出したのかね~。人生百歳時代とか」
 「百歳までたいした病気もせず、多少耳が遠くなり、目がぼやけても、元気に歩くことができ、ご飯をおいしく食べることができたら、本当に幸せだね……」
 「本当だよね、私もそうありたいものだね」
 ところが、私自身、七十一歳で急性骨髄性白血病を患い、一ヶ月に十日間の入院生活を繰り返しています。
 病は本人に相談なく勝手に忍び寄って来て、知らず知らずのうちに、健康な身体に住み着いてしまいます。
 「病さん、あなたが住み着いている私の身体、私が死んだらあなたも死ぬのよ」
 病は驚いた様子で、
 「へ~、本当にそうなの、信じられない」
 「おバカさんね、そんなことも知らないの。そうなのよ、私が死んだら、私の身体は消滅するのよ。そしたら、あなた、どこに住むつもりなの」
 「どうしよう、ね、どうしたらいいの」
 「はは~、そんなこといって、誰かの身体に乗り移ろうという算段なのね。そう簡単にうまく運ぶかしらね」
 「どうすればいいの、ね、教えてよ」
 「どうすればいいのかって、勝手に住み着いておきながら。無責任なことだわね」
 「でも、何とか考えてよね」
 「そうね~、私が死ななければいいのよね。ただし、ある程度元気な身体でね」
 「あ、そうか、あなたが死ななければ、私も生きていられるのよね」
 「それには、病さん、あなたは、絶対に暴れないで、大人しくしていてね。そしたらお互いに生活できるのよ。せめて、あと五年、仲良く一緒に過ごしましょうね」
 「うん。分かったよ」
 「本当に分かったの」
と、いったところで本当に分かったかどうか。分からないだろうね。でも、分かってよね。
 高額医療費制度があるお陰で、何とか治療に専念できていますが、実際の医療費は膨大な額に達しています。
 こういう状態になって、心の思いを書けるうちに書いておこうと、ここに残すこととします。もし宜しければ、ご笑覧下さい。
 なお、思いつくままに書いたため、異なった項目内に重複している内容があります。また、年代は順不同となっています。ご了承下さい。

版元から一言

子供の頃から、同じような形なのに、なぜサメは魚でイルカは哺乳類なのか不思議でしたが、この本でサメが一般的な魚とは随分違うことを知りました。残念ながら、本の完成を見ることなく、著者はお亡くなりになりました。ただ、本の中には著者の思いや人生が詰まっていて、本の中で著者は生き続けるのだと強く感じています。著者が最後の力をふりしぼって書いた1冊が、少しでも多くの方の心に届くことを祈っています。

著者プロフィール

手島和之  (テシマ カズユキ)  (

昭和22(1947)年、山口県下松市生まれ。水産大学校(現・国立研究開発法人水産研究・教育機構水産大学校)漁業学科卒業。長崎大学大学院水産学研究科修士課程修了(水産学修士)。京都大学農学博士(論文題目「日本産ホシザメとシロザメの生殖に関する研究)。平成20(2008)年3月、国立研究開発法人水産研究・教育機構水産研究所を定年退職。令和2年2月4日、永眠。享年72歳。著書に『サメへの道―サメ研究30年の成果』(文芸社)がある。

上記内容は本書刊行時のものです。