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日本の人形芝居をとらえなおす―伝統的人形操りへの多様な視点
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2026年3月25日
- 書店発売日
- 2026年7月3日
- 登録日
- 2026年2月12日
- 最終更新日
- 2026年7月7日
紹介
文楽を中心に、近代の人形芝居と人形操りについて、国を越えた多角的アプローチで迫る論集。
第一部「演技と表現」、第二部「媒体と場」、第三部「創作と伝承」、第四部「伝統と近代」の四部構成。
三人遣い、乙女文楽、八王子車人形と現代人形劇、日本とドイツの人形劇との関わりなど、伝統的人形操りについて多様に論じられる一冊。
目次
はじめに (細田明宏)
第一部 演技と表現
第一章 現行文楽における人形遣いの演技と表現(後藤静夫)
第二章 文楽人形うしろぶり考 女方人形の愁嘆表現にみる動作の特異性(中野ふくね)
第三章 からくりと能(三) 竹田からくり「武功乱曲扇」を中心に(山田和人)
第二部 媒体と場
第四章 乙女文楽人形のマテリアリティと人形遣い・人形の関係性 稽古の様子から人形の「不具合」まで(ゴロウィナ・クセーニヤ)
第五章 現行文楽における人形首の選定(首割り)と変更(後藤静夫)
第六章 観客にとって、文楽人形の顔はどれほど人間に近いか 心理学的アプローチから考える (大江朋子、細田明宏:共著)
第七章 道頓堀の人形浄瑠璃興行に関する覚え書き 竹本座と金毘羅大芝居のことなど(久堀裕朗)
(コラム)三人遣いと民主主義 「ブンラク」の国際的展開(山口遥子)
第三部 創作と伝承
第八章 八王子車人形と現代人形劇による『シャンクス・メア』―日米の人形芝居アーティストによる文化を超えた創作と上演 (クラウディア・オレンスティン、:翻訳、細田明宏)
第九章 近代日本における民俗的(ヴァナキュラー)な人形芝居の出現と展開―「人形的身体」から考える(薗田郁)
第十章 大学教育における文楽人形劇 少子化の荒波の中で(片山剛)
第四部 伝統と近代
第十一章 西川伊三郎の代々(澤井万七美)
第十二章 日本の「人形劇」誕生前夜―ドイツの芸術的人形劇との関わりを中心に
(山口遥子)
第十三章 近代の東京における「女人形遣い」―女性による人形浄瑠璃の興行(細田明宏)
前書きなど
日本にはさまざまな人形芝居が伝承されている。本書はそのような人形芝居を多様な視点あるいは方法でとらえなおすことによって、新たな像を提示しようとするものである。
人形操りに関するこれまでの研究においては、高度な人形操法で知られる文楽の三人遣いへの注目が際立って高かったといえる。しかし日本の人形芝居をより立体的に理解するためには考察対象の幅を広げる必要があるだろう。そのため本書は、さまざまな人形芝居を議論の対象として取り上げる。文楽の三人遣いのほか、三人遣いから派生した八王子車人形や乙女文楽、竹田からくり、さらには近代に成立した女人形遣いや民俗的な人形芝居、現代人形劇などである。
本書ではこれらの人形芝居の歴史的な様相あるいは、実際の伝承や上演のありようについての議論が展開される。伝統的な人形芝居などのいわゆる「伝統芸能」はややもすれば、固定化された上演形態あるいは演目を形を変えずに受け継いでいくものと考えられがちである。しかし、たとえ世代を超えて受け継がれている人形芝居であっても、その伝承を受け継ぐのは個々の演者であり、その演者たちによる個々の上演によって伝統が形成されていく。したがって伝承や上演がどのようになされるかということは、常に新しく、また本質的な問
題なのである。
また、日本の人形芝居をどうとらえるかという「見方(perspective)」も重要な問題である。見方が違えば、見え方や見えるものが違ってくるからである。日本の人形芝居といってもその存在意義は日本に限定されるものではなく、文化を超えた価値を持ちうる。日本の人形操りが異文化の文脈に置かれたり解釈されたりする時に、見方の違いが最も顕著に表れると思われる。山口遥子氏にコラムという形で報告してもらった、欧米の現代人形劇における「ブンラク(Bunraku)」はそのような例の一つといえる。
研究においても見方の問題は重要である。本書第八章では、アメリカの演劇研究者であるクラウディア・オレンスティン氏が八王子車人形における伝承の問題を論じる。興味深いのは、日本の研究者であれば人形芝居の「八王子車人形」を中心に論じるだろうと思われることを、彼女は演者の「五代目西川古柳」を中心に論じているということである。すなわち世代を超えて受け継がれている「八王子車人形」を中心に見るか、実際に上演する「五代目西川古柳」を中心に見るかという見方の違いがあるのであるが、それは論者の属する文化の違いによるところが大きいのではないかと筆者には思われる。大事なのは、どちらの見方が正当かということではなく、それらを同じ俎上に載せることでお互いに理解を深めていくことだろう。
以上のような観点から、本書では多様な視点や方法によって日本の人形芝居を多角的に論じる。具体的には、文学作品や土地台帳、新聞記事などの文字資料に対する文学的/演劇学的研究あるいは芸能史的研究、さらには参与観察に基づく文化人類学的研究、調査結果を定量的に分析する心理学的研究などである。
関連リンク
上記内容は本書刊行時のものです。
