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東アジアの女性雑誌文化 1930-1945
- 出版社在庫情報
- 不明
- 初版年月日
- 2026年3月9日
- 書店発売日
- 2026年4月3日
- 登録日
- 2026年1月14日
- 最終更新日
- 2026年3月16日
紹介
東アジアの女性雑誌を広く同時に見渡した時、浮かび上がる女性たちの文化生産と連帯の可能性。雑誌から浮かぶ国際的な問題に対する意識、文化生産への寄与、そして雑誌が生成した女性たちの関係性。3つの問いを中心に積み上げられた国境と言語を越えた共同研究の成果。
日本、朝鮮、中国、台湾、満洲、各地域のそれぞれの女性雑誌の概況をまとめた論考を含む、全12章、8コラム。
異なる言語を含む各地域の多種多様な女性雑誌の分析から立ち上がる、東アジア激動期の女性たちのネットワークとその可能性がここに。
女性雑誌は、「女性」というジェンダーに輪郭をあたえる規範を構成するとともに、私的な領域と公的な領域を接続し、女性たちが連帯し抵抗する場となり回路となった。本書は、今日とは異なる地政学的な関係性のなかで思想や言説が交錯する一九三〇年から一九四五年の東アジアにおいて、女性の文化生産のありようが時代と交渉し切り結ぶさまを女性雑誌という実践を通して明らかにするものである。(本書「はじめに」より)
第一部「規範形成・参照と差異化」
第二部「ネットワーク生成の装置」
第三部「雑誌文化と戦時の力学」
目次
はじめに(飯田祐子)
第一部「規範形成・参照と差異化」
第一章 植民地期朝鮮の女性雑誌における「日本語」と読者としての朝鮮女性
―『我々の家庭』と『家庭之友』にみられる「諺文」と「日本語」のはざま(張 ユリ)
●コラム1 中国一九二〇―一九四〇年代の女性雑誌(星野幸代)
第二章 台湾における女性雑誌と文学圏域の形成
―『台湾愛国婦人』と『台湾婦人界』を中心に(呉 佩珍)
●コラム2 『台湾婦人界』の女性記者(笹尾佳代)
第三章 制度/運動のかなたの「母性」
―『婦人戦線』における植民地と産児制限/調節 (中谷いずみ)
●コラム3 『年鑑』と『名鑑』からみた日本における女性雑誌の流通(光石亜由美)
第二部「ネットワーク生成の装置」
第四章 女性ジャーナリストたちの社会運動
―全関西婦人連合会機関誌『婦人』におけるネットワークの生成(笹尾佳代)
●コラム4 女工の雑誌『泉の花』(飯田祐子)
第五章 女性雑誌と一九三〇年代アジアにおけるシスターフッドの形成
―中国女性雑誌『女子月刊』を手掛かりに(魏 晨)
●コラム5 台湾最初の商業女性雑誌『婦人と家庭』(張 文聰)
第六章 植民地朝鮮における女性解放と身体政治
―社会主義系女性雑誌『女人』の産児制限関連記事を中心に (孫 知延・光石亜由美)
●コラム6 朝鮮における女性雑誌の新たな試み、妓生雑誌『長恨』(張 ユリ)
第七章 左翼女性雑誌と商業女性雑誌の連続と不連続
―『働く婦人』における戦略的実践(飯田祐子)
第八章 戦時「留東婦女」と日本女性知識人との対話
―『婦女生活』と神近市子主宰『婦人文藝』(星野幸代)
第三部 雑誌文化と戦時の力学
第九章 戦前日本婦人雑誌空間における〈アジア女性〉との出会い
―一九三五年から一九四五年の『主婦之友』『婦人俱楽部』から(木村涼子)
●コラム7 民国雑誌『玲瓏』における「表象の自律性」と情動的レスポンス(陳 晨)
第一〇章 インターナショナル・フェミニズムから帝国のフェミニズムへ
―『輝ク』における日中女性の連帯とその変節 (楊 佳嘉)
第一一章 日中YWCAの葛藤と模索
―機関誌『女子青年界』『女青年』の言説を通して(石川照子)
第一二章 一九三〇―四〇年代満洲の女性雑誌と戦時下の女性規範
―『女性満洲』を中心に(尹 芷汐)
●コラム8 「満洲」の女性雑誌(魏 晨)
主要人名索引
前書きなど
本書は、東アジア各地域において発刊された女性雑誌を通して、女性たちの文化生産と連帯の動向を探るものである。国・地域としては日本・中国・朝鮮・台湾・満洲を対象とし、時期としては一九三〇年代から一九四五年までを主たる対象としている。本書の第一の特徴は、東アジアを同時に見渡す点にある。雑誌は、内容が多様であるうえに、刊行期間が長い場合など情報量が多いこともあり、一誌ごとに検討する研究が主となってきた。その際に
複数の雑誌の比較、あるいは二つの国・地域間での影響関係が検討される場合はあるものの、多くはそれぞれの国・地域ごとになされており、地域横断的な研究はきわめて少ない。しかし、雑誌に特定しない研究では、モダンガールや新しい女、リテラシーなどを軸として、東アジアにおける女性たちの状況の比較研究が近年なされている 。
本書は、こうした研究動向に連なり、女性雑誌を対象として、東アジアを広く視野にいれ、人や情報の移動や交差について横断的に考察する。そして、女性雑誌という装置、近代に生成された女性雑誌文化の特性について、連帯を生成する潜在的な可能性の側面から検討することを目指した。(中略)
女性雑誌というカテゴリーを代表してきたのは商業的な女性雑誌である。ことに一九二〇年代に登場した商業女性雑誌は、読者の規模を飛躍的に拡大し、女性たちに情報を伝え、欲望を発生させ、規範を形成する巨大な装置となってきた。そこには、読者を獲得するために培われた方法がある。ただし、それは啓蒙や販促や動員のみに有効だったわけではない。各女性雑誌が生み出したそれぞれに固有の読者共同体を生成する方法は互いに参照されつつ醸成されてきたものであり、商業雑誌のみならず雑誌という形態をとったさまざまな媒体において利用されてきた。
そこにある読み書くことでつながるための作法は、女性たちの文化として共有された。東アジアの一九三〇年代には、そうした女性雑誌文化が、各国・地域のそれぞれの地政学的な状況のなかで形をなしている様を見いだすことができる。(中略)
雑誌というメディアは、近代における文化生成に大きな役割を果たしてきた。女性雑誌は、「女性」というジェンダーに輪郭をあたえる規範を構成するとともに、私的な領域と公的な領域を接続し、女性たちが連帯し抵抗する場となり回路となった。本書は、今日とは異なる地政学的な関係性のなかで思想や言説が交錯する一九三〇年から一九四五年の東アジアにおいて、女性の文化生産のありようが時代と交渉し切り結ぶさまを女性雑誌という実践を通して明らかにするものである。
版元から一言
鹿ヶ谷叢書、記念すべき10冊目は、『東アジアの女性雑誌文化1930-1945』となりました!
2018年より積み上げられました研究会・シンポジウムに何度か同席させていただいてきた成果を、このように刊行でき、とても嬉しく存じます。
本書の末尾でも触れられていますが、本書の前提に、2014年から3度の科研プログラムがございます。
『女人芸術』を中心としたご研究は、すでに下記のように2冊の成果として公表されており、本書はその10年以上の営みの、一つのまとめにあたるといえます。
『雑誌「女人芸術」と一九三〇年前後の文化生産』(飯田祐子/中谷いずみ/笹尾佳代編、青弓社、二〇一九年)、『プロレタリア文学とジェンダー 階級・ナラティブ・インターセクショナリティ』(飯田祐子/中谷いずみ/笹尾佳代編、青弓社、二〇二二年)
そして、今回のお仕事の最も大きな特徴と言えるのは、やはり中国、台湾、朝鮮、日本と、それぞれの担当班をベースに国境と言語をこえて、同時代の女性✕雑誌の諸テーマを扱っていることでしょう。
この本を通読していただく実りの一つが、満洲を含む諸地域の女性雑誌の基本的な枠組みを知ることができることでしょう。
共同研究という方法を深められてきた成果だと思うのですが、「雑誌から浮かぶ国際的な問題に対する意識、文化生産への寄与、そして雑誌が生成した女性たちの関係性」という3つの柱が、それぞれの論考に活かされ、一冊の本として統一感のある、すばらしい共著を形にさせていただいたと感じております。
上記内容は本書刊行時のものです。

