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九州文学
巻次:586号2024年秋・冬号
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2024年11月1日
- 書店発売日
- 2024年11月11日
- 登録日
- 2024年10月28日
- 最終更新日
- 2024年11月19日
紹介
火野葦平や劉寒吉らを輩出し、86年の伝統を持つ九州発信の文芸誌『九州文学』586号。
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九州文學は1938年(昭和13年)、福岡県を中心に活動する火野葦平、劉寒吉、岩下俊作、原田種夫らによって創刊。以来、昭和・平成・令和と継承されていき、詩、俳句、小説と多くの作家が切磋琢磨して、創り上げてきました。2020年7月より第八期として新しく船出しリニューアル。伝統を守りつつ、今後も豊かな言語芸術を志して参ります。
目次
【巻頭詩】
霜月[本田雅子]
【詩】
夜の海へ[柴田康弘]
老花の路[麻田春太]
ふうちゃんの毎日[松野弘子]
『ドクトル・ジヴァゴ』に寄せて[金子秀俊]
教会にて[石﨑真由美]
偏西風[林 恭子]
太平洋戦争・この禍根[高森 保]
忘れたくなかった三つの場面[梶原佑心]
【俳句】
竹の春/冬ざれ[麻田春庵]
ぬくめ酒/初仕舞[中園 倫]
【川柳】
もう卒寿[高森 保]
【随想】
戀でした[中園 倫]
鮎の夜釣り[田中義治]
【小説】
高森城合戦記[塚元秀樹]
源重郎世事手控 ㈡蛇蝎[野見山悠紀彦]
昭和四十年代初め筑後川田園物語[由比和子]
水仙が咲く家[内田ゆうこ]
再 会[緑川すゞ子]
橋からの眺めⅡ[森田繁昌]
兵隊さん好き[宮川行志]
ひこばえ[今給黎靖子]
善門地蔵[関屋弘治]
【コラム】留学生余話:(23)敏腕職員、子育ての話 その2/(24)寮の騒音/(25)帰国のトラップスペース/(26)スタッフのバトル
編集委員会便り
582・583・585号への時評・季評抜粋
編集後記 他
前書きなど
【巻頭詩】
霜 月[本田雅子]
あなたの誕生日は霜月の三十日
覚えやすくて今も忘れられない
寝たきりで話はできず
目も見えなかったけれど
耳もとで名前を呼ぶと
唇が ウン というように頷き
握った手をかすかに握り返した
十一月だった
この世のあなたとの時間にさよなら
この世のあなたとの思い出にさよなら
この世のあなたとの縁にさよなら
あなたの中の私にさよなら
いずれ訪れる
私がこの世から消える日に
私の中のあなたも消えるけれど
これからも霜月は
あなたを思い浮かべる月となる
* * *
【編集後記より抜粋】
近年、書店の減少が話題になっています。それは取りも直さず、読者の減少を現わしています。なぜ人は本を読まなくなったのか? この問いには様々な答えが返って来るでしょうが、最大の要因は生活レベルが格段に良くなったからだと考えます。
衣食住に汲々としていた時代は、文学などに気を使っている余裕はないと考え勝ちですが、実態は全く逆の様相を示していたように思えます。衣食住は直接的に命の存続に関わります。そこには生存を賭けた凄まじい戦いや精神の葛藤が生まれ、それが文学を生むエネルギーになっていたと思えてなりません。(略)
本棚の中から一冊の文庫本を見つけ出しました。昭和三十五年に発刊された開高健氏の本です。そのタイトルが目に止まったからです。『衣食足りて文学は忘れられた!?』。戦後十五年しか経っていませんが、もはや戦後ではないと云われ、高度成長の真っただ中です。感性の鋭い開高氏は、既にこの時代に文学の先々を感じていたと思われるのです。
長い九州文学の歴史を引き継いで来た我々ですが、ここで衰退させる訳には参りません。人間の根源を見詰め、社会の矛盾を見極め、生死の真理を解き明かす熱意を失いたくないのです。(不羈庵)
上記内容は本書刊行時のものです。