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科学はひとつ
宇宙物理学者による知的挑戦の記録
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2023年8月29日
- 書店発売日
- 2023年9月1日
- 登録日
- 2023年4月13日
- 最終更新日
- 2023年9月2日
紹介
■勇気をもって、社会問題に対して発言しよう。
──3.11からはじまる、一人の科学者の手記。
2011年3月11日、巨大津波と原子炉事故という未曾有の危機に人々が直面したとき、細分化されすぎた科学の専門家集団は、目の前の事態にまったく対処できなかった。
その惨状を前に、宇宙物理学を専門とする筆者は「たとえ専門領域でなくとも、科学者が勇気をもって社会問題に対して発言していく」ことの必要性を痛感し、自身の手記の公開を始める。
「本来、科学はひとつである」との思いを支えに、原発事故後の対処策から、津波発生原理の再検討、銀河とブラックホール、生命の起源、科学論、気候変動論まで、現代の碩学が12年にわたって語り続けてきた知的挑戦の記録を、全9章に再編。すべての章に著者書き下ろしの解説を加えて集成した一冊。
■目次
はじめに
第1章 福島第一原子力発電所事故
解説
植物による放射性セシウム汚染土壌の浄化について
ほか4篇
第2章 地震と津波防災
解説
東海地震について
ほか6篇
第3章 天体物理学
解説
降着超大質量ブラックホールにおけるZeV(10^21 eV)加速
ほか8篇
第4章 気候変動
解説
過去2,000年の気温変化と王朝の盛衰
ほか10篇
第5章 生命の起源
解説
蛇紋岩化反応による非生物的メタン噴出
ほか11篇
第6章 種の起源と生物進化
解説
人類の起源:放射線被曝と脳容積拡大
ほか9篇
第7章 科学論
解説
佐久間象山、大山益次郎遭難碑
ほか12篇
第8章 書評
解説
サハロフ回想録
ほか6篇
第9章 ルーツと青春
解説
母の故郷訪問
ほか6篇
あとがき
目次
■目次
はじめに
第1章 福島第一原子力発電所事故解説
解説
植物による放射性セシウム汚染土壌の浄化について
原子力発電所メルトスルー事故後のコンクリートマグマプールの拡大について
微生物による放射性セシウム除去
オクロ・オケロボンド地域の自然原子炉の動作周期
検出器で風評被害を根絶する
第2章 地震と津波防災
解説
東海地震について
海底地滑りによる津波災害拡大
大正関東地震(1923)における相模湾内海底地滑りと津波の発生について
小川琢治(湯川秀樹の実父)が指摘した津波発生原因としての海底地滑り
パル地震による津波災害と、パルと東京の地形の類似性
大規模な地滑りが津波地震を起こす
水中核爆発による津波について
第3章 天体物理学
解説
降着超大質量ブラックホールにおけるZeV(10^21 eV)加速
宇宙デブリ除去のための実証実験を宇宙ステーションで行う
原始惑星系円盤における固体物質分布の間隙
ブラックホール連星の起源と超巨大ブラックホールへの成長
タンデム惑星形成理論
銀河中心超巨大ブラックホールの形成シナリオと地上重力波検出器によるブラックホール合体イベントの検出頻度
スーパープレッシャー気球の放球成功、国際協力で成層圏利用推進
紫外線で夜の地球を網羅的に観測──国際宇宙ステーション搭載の望遠鏡
宇宙における航跡場加速
第4章 気候変動
解説
過去2,000年の気温変化と王朝の盛衰
全球凍結事変のスターバーストモデル
7世紀初頭の気候寒冷化と隋の崩壊
アエロゾル密度による海洋境界層における雲被覆率の急激な変化
アエロゾルが低層雲に与える影響
星雲の冬
火山噴火が引き起こす大飢饉、玄米備蓄のすすめ
白亜紀末の寒冷化と暗黒星雲遭遇による大絶滅
太陽活動の弱化がもたらす天候不順と政変・戦乱の時代
日本への水田稲作の伝搬: 環東シナ海文化圏仮説
海上低層雲による気候変動緩衝
第5章 生命の起源
解説
蛇紋岩化反応による非生物的メタン噴出
自然原子炉における生命誕生
窒素とエチレンの混合ガスへのガンマ線照射によるシアン化水素生成
自然の原子炉が臨界に達する条件
電子放電によるシアン化水素の形成
光化学酸化還元反応システムによる前生的な単純糖の形成
放射線により励起されたCO2の還元反応
還元TCA回路の光触媒による駆動
鉱物の光触媒による太陽エネルギーを使った非光栄養微生物の増殖
生命起源の原子炉間欠泉モデル
生命の初期進化における核酸様補酵素の役割
原初的生命を育んだ「ゆりかご」としての自然原子炉
第6章 種の起源と生物進化
解説
人類の起源:放射線被曝と脳容積拡大
大地溝帯でなぜ新種が生まれるのか?
大型類人猿の祖先におけるセグメント重複バースト
放射線被曝を受けた親の子孫の細胞におけるゲノム不安定について
放射線の非標的効果
アマゾン熱帯雨林の動物相の多様性の起源
低線量率被曝した父親(チェルノブイリ清掃作業従事者)の子どもにおけるゲノム不安定の解析
世代を超えて蓄積される放射線損傷:チェルノブイリ降下物に慢性的に曝露された小動物
生命進化の統一理論:超新星、放射性火山灰降下、ゲノム不安定、大絶滅による進化
ストレスを受けた植物の世代をまたいだレトロ転移をsiRNAが妨げている
第7章 科学論
解説
佐久間象山、大山益次郎遭難碑
S学問とY学問の興亡
反証可能性とカメレオン
科学における論文の重要性
「言論の自由」は科学の必須栄養素
国際プロジェクトで活躍する日本人
農村衛生研究所設立趣旨文
研究者の生命線としての図書館
ジェームズ・クック航海の偉業──天文学から航海術へ
オランダ・ローレンツ委員会、水害を根絶する
伊能忠敬の挑戦
ジェラール・ムルー氏のノーベル物理学賞受賞を祝う
「複雑な系」への挑戦
第8章 書評
解説
サハロフ回想録
吉田松陰著作選 留魂録・幽囚録・回顧録
Noah’s Flood: The New Scientific Discoveries about the Event That Changed History
Collapse: How Societies Choose to Fail or Succeed
世界の見方の転換
This Is Your Brain on Music: The Science of a Human Obsession
The Story of the Human Body: Evolution, Health and Disease
第9章 ルーツと青春
解説
母の故郷訪問
李永春家屋
H君とK君
私の自由研究
五右衛門の足跡
金谷萬六
七大学柔道の精神
あとがき
前書きなど
私がこの12年間書き溜めてきた手記を記事としてまとめ、本書『科学はひとつ』として上梓します。
2011年3月11日、東日本大震災において発生した地震、および津波災害に起因する福島第一原子炉事故によって、私は「細分化された科学」の無力を悟りました。
当時、原子炉の破損状況を誰もが心配していましたが、テレビや新聞では漠然とした情報が繰り返し伝えられるのみであり、科学者たちは誰一人として、その憂慮すべき状況を直視した発言を行いませんでした。
現在、科学の各分野において専門化・細分化が進んだ結果、科学者が自分の専門分野に閉じこもり、自身の専門以外の事柄に関しては、その専門家の意見を鵜吞みにする、という弊害が顕在化しています。3・11の際に人々が目の当たりにした科学者たちの緘黙も、「正常な原子炉」の専門家が、己の領域の外の問題に対して口をつぐんだために生じたものだと言えるでしょう。科学の細分化、誤解を恐れずに言うならば、科学の分断の問題は、いまや非常に重篤な状況にあります。本来、科学は一つであるべきです。
そこで私は、自分の博士論文のテーマであった天体物理学を超えて、すべての科学分野を自分の研究テーマとし、人類的な課題に挑戦していくことを決意しました。
(「はじめに」より一部を抜粋)
上記内容は本書刊行時のものです。