版元ドットコム

探せる、使える、本の情報

文芸 新書 社会一般 資格・試験 ビジネス スポーツ・健康 趣味・実用 ゲーム 芸能・タレント テレビ・映画化 芸術 哲学・宗教 歴史・地理 社会科学 教育 自然科学 医学 工業・工学 コンピュータ 語学・辞事典 学参 児童図書 ヤングアダルト 全集 文庫 コミック文庫 コミックス(欠番扱) コミックス(雑誌扱) コミックス(書籍) コミックス(廉価版) ムック 雑誌 増刊 別冊
帰還の港SENZAKI 堀雅昭(著) - UBE出版
..
詳細画像 0
【利用可否不明】

書店員向け情報 HELP

帰還の港SENZAKI (キカンノミナト センザキ) 日本で最初の引揚港 (ニホンデサイショノヒキアゲコウ)

歴史・地理
このエントリーをはてなブックマークに追加
発行:UBE出版
B5判
縦257mm 横182mm 厚さ7mm
重さ 338g
126ページ
定価 1,500 円+税   1,650 円(税込)
ISBN
978-4-910845-11-1   COPY
ISBN 13
9784910845111   COPY
ISBN 10h
4-910845-11-9   COPY
ISBN 10
4910845119   COPY
出版者記号
910845   COPY
Cコード
C0021  
0:一般 0:単行本 21:日本歴史
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2026年5月30日
書店発売日
登録日
2026年5月14日
最終更新日
2026年6月1日
このエントリーをはてなブックマークに追加

紹介

忘れられた引揚げの物語
引揚げとは何だったのか。その問いは、ある日ふと、長門の画家・香月泰男の〈シベリア・シリーズ〉の前で、胸の底から立ち上がった。香月が舞鶴から帰還したその頃、近くの仙崎港にも、まだ引揚げの余波がつづいていた。だが調べてみると、日本で最初に引揚船が入港したのは舞鶴ではなく、仙崎港のほうであった。昭和20年(1945)9月2日、「興安丸」が釜山から仙崎へ帰還し、5000とも7000ともいわれる人々が、荒廃した祖国の土を踏みしめていたのである。しかし、その歴史は長く語られなかった。敗戦の痛手は深く、引揚者たちはしばしば「特別な眼」で見られ、沈黙を選んだ。

仙崎という「第二帝国」の入口
仙崎は、戦前と戦後が触れ合う境界の港であった。終戦前日の8月14日には、731部隊が早くも帰還していた。そして終戦後の一年間で、外地から41万人余りを迎え、内地から34万人余りの朝鮮人を送り出した。
仙崎の古刹・圓究寺の本堂に残る香炉とろうそく立ては、外務省の「山津機関」が、ここで邦人帰還者の救護活動を行った証として今も残っていた。900年もつづいた観音信仰の寺が、戦後最初の「衆生救済」の場となったことは、歴史の偶然を超えた、神秘だった。

ヤミ市のざわめきと、戦後の胎動
仙崎の海辺には、かつて朝鮮人収容所があり、周囲にはヤミ市が生まれていた。暴力と混沌、自由と欲望が入り混じる、戦後日本の胎動があった。敗戦と同時に崩壊した配給制度の隙間を縫うように、人々は食糧を求め、物資を求め、明日を求めた。その喧噪は、やがてドッジ・ラインの実施とともに消えていく。

引揚者たちが切り開いた、新しい日本
本書では、戦後日本の再生を担った引揚者たちの姿を描き出した。秋吉台の大理石産業、向津具半島の植林、日置の酪農、徳佐のリンゴ園……。そのどれもが、荒廃した国土に未来を植えようとしていた。引揚者住宅から生まれた中間層は、やがて高度成長の背骨となってゆく。文化の世界でも、仙崎港から引揚げた松本清張、本田靖春、立花隆、森田拳次、藤田敏八らが、文学、評論、漫画、映画の各分野で戦後社会を牽引した。彼らの作品の奥底には、仙崎での帰還体験が、見えない水脈のように流れている。

80年目の海へ
令和7年(2025)は引揚開始から80年の節目であった。そこで、日本最初の引揚港として、第二帝国の幕開けを先導した仙崎の記憶を未来へ手渡す必要があると考え、出版に踏み切った。占領軍写真を有するニュージーランド国立図書館をはじめ、国内外の多くの機関と市民の協力を得て出版出来た、初めての本格的な仙崎引揚史が『帰還の港 SENZAKI』である。美しいだけの仙崎の海だが、その静けさの底には41万人余りの帰還者たちの沈黙と再生への祈りが残る。本書は、その記憶の断片をすくい上げ、つなぎとめ、消えかけた足跡を追い戦後日本のもう一つの出発点を見つめ直すための一冊である。

目次

はじめに

序章 大陸政策と長州
 「興國雄略」の陽炎
植民政策の雛型「ハワイ官約移民」/日清戦争と「台湾統治」/大東亜新秩序

第1章 引揚げの記憶
敗戦と六六〇万人の帰還
最初の引揚港「仙崎」/引揚前史「七三一部隊」/「仙崎港」の誕生/「石井部隊」の先駆的帰還
帰還第一号「興安丸」
白い十字/朝鮮人送還の省炭桟橋/「七〇〇〇名」か「五〇〇〇名」/国際港・仙崎(SENZAKI)/上陸地上家/枕崎台風の「在日朝鮮人救護会」の正体/満洲国関係帰国者援護会
進駐軍の変遷
占領下の仙崎港引揚げ年表
NZEFのフォト・リフレクション
圓究寺と山津機関

第2章 ヤミ市の文化誌
山田洋次とヤミ市
引揚げ者の生活/山田洋次と博多港の記憶
ヤミ市の文化誌〔朝鮮人編〕
下関と仙崎/自治朝鮮村/帰国朝鮮人仙崎収容所と「省炭桟橋」
ヤミ市の文化誌〔日本人編〕
新日本ヲ建設スベシ/引揚者を支えた仙崎の食糧体制/全国に広まった仙崎かまぼこ影響/日本人と朝鮮人

第3章 再生への道
引揚の皆様へ
『希望あらたに』
祖国再建の第一歩
食糧増産計画/秋吉台地に挑む開拓団/雨乞台の植林
体験者に聞く
渡辺信子さん(日赤看護師)/吉岡泰雄氏(極楽寺住職)の回想
〈コラムⅠ〉堕胎と二日市保養所/〈コラムⅡ〉広島での出来事/大竹の引揚援護局/孤児の保護から始まった新生学園
農士園と酪農
徳佐リンゴ園
引揚者住宅のリアル
昭和天皇と引揚

第4章 文化人たちのSENZAKI
松本清張(社会派ミステリー作家)/本田靖春(ノンフィクション作家)/立花隆(評論家)/香月泰男(画家)/安武誠子(満洲国の女性新聞記者)/森田拳次(マンガ家)/洲之内徹(美術エッセイスト)/藤田敏八(映画監督)/「引揚者」と芸能音楽/古谷陽子(在野詩人)/番外編《壱》木山捷平『コレラ船』/番外編《貮》内田康夫『遺骨』/〈コラムⅠ〉 仙崎の引揚者住宅/引揚80年記念 ヒストリアながと企画展ほか/アーカイブからの視座―文化財専門員・上田穰/図書館司書・岡村紀枝./戦後80年・仙崎引揚80周年 特別企画映画―五十嵐匠監督「サン・ジュアンの木」

あとがきにかえて 引揚げとは何だったのか
主要参考文献
帰還の港SENZAKI刊行会
サポーター企業・団体ほか
評論家・折原脩三と仙崎

著者プロフィール

堀雅昭  (ホリマサアキ)  (

1962年生まれ。著書に『戦争歌が映す近代』(葦書房・日本図書館協会選定図書)、『杉山茂丸伝』、『ハワイに渡った海賊たち』〔毎日新聞連載「太平洋を渡った海人たち」書籍化)、『炭山の王国 渡辺祐策とその時代』、『中原中也と維新の影』、『井上馨 開明的ナショナリズム』〔NHK歴史秘話ヒストリア番組化〕、『靖国の源流』、『靖国誕生』〔BSフジ・プライムニュース出演〕、『鮎川義介』〔日テレBS番組化〕、『関門の近代』、『寺内正毅と近代陸軍』、『村野藤吾と俵田明』〔第34回・和辻哲郎文化賞一般部門最終候補作品〕(以上、弦書房)。『うべ歴史読本』〔うべ未来100プロジェクト、宇部市検定テキスト〕。『靖国神社とは何だったのか』(宗教問題)など。2022年8月に地方開拓型のUBE出版を設立。『宇部と俵田三代』、『エヴァンゲリオンの聖地と3人の表現者』、『復刻版「現代宇部人物素描」』、『椿の杜◉物語』、『日本遺産 二つの港物語』、『炭鉱と新民謡』、『光海軍工廠の日記 岩脇テルの恋と戦争』、『西瀬戸内海 回天巡礼』、『毛利元就に誅滅された井上党』、『光海軍工廠の戦争日記 岩脇テルと同時代の証言』など出版。

上記内容は本書刊行時のものです。