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産婦人科#MeToo イ・ウネ(著) - アジュマブックス
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産婦人科#MeToo (サンフジンカミートゥー)
原書: 레즈비언의 산부인과

社会一般
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新書判
縦173mm 横105mm 厚さ11mm
重さ 151g
160ページ
並製
価格 1,200円+税
ISBN
978-4-910276-14-4   COPY
ISBN 13
9784910276144   COPY
ISBN 10h
4-910276-14-9   COPY
ISBN 10
4910276149   COPY
出版者記号
910276   COPY
Cコード
C0098  
0:一般 0:単行本 98:外国文学、その他
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2023年6月14日
書店発売日
登録日
2022年11月2日
最終更新日
2023年6月6日
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紹介

韓国発・レズビアンによる「産婦人科#MeToo」!
産婦人科で「性経験はありますか」って聞かれたとき、レズビアンはどう答えるべき…?
「あの椅子」については言いたいことがたくさんある!
「処女膜が破れても病院を訴えません」??
そもそも、「産婦人科」って名称からしてどうなの?
20代レズビアン・フェミニストの著者イ・ウネが、「産婦人科」をテーマに同じく20代レズビアン/バイセクシュアルの女性たちにインタビューして書かれた本書。
レズビアンに限らず多くの女性たちにとって「行きづらい」産婦人科から、男性中心社会の弊害が見えてくる。著者とインタビュイーたちの鋭い考察は、韓国のみならず日本の状況にも大いに当てはまるだろう。

目次

産婦人科#MeToo もくじ

プロローグ 苦手なのは私だけ? 「産婦人科」? チョ=パク・ソニョン

はじめに  性関係? 経験? ありますか?

第1部 訪問と検査
 差別しない「よい」病院を探しています
 性関係の経験がありますか?
 ストップウォッチと歩数計のセックス
「屈辱椅子」ではなく「診療椅子」

第2部 女性の体
 処女膜念書
 本物の女性
 自分の体を知らない女たち
 NO 産婦人科、YES 女性医学科
 行き場のない女性たち

おわりに どこからどこへ行くのかわからない者たち
 悩みも会話も情報も、率直に正確にわかち合いたくて

感謝の言葉
参考文献

日本の読者のみなさんへ イ・ウネ
訳者あとがき 大島史子
解説 早乙女智子
解説 沢部一実

前書きなど

プロローグ
苦手なのは私だけ?「産婦人科」?
女性は一生のうち何回、どんなとき、どんな理由で産婦人科に行くのだろう。
初めて産婦人科に行ったのはいつだったか。「妊娠」が理由でなかったのは確かだ。それにしても「産婦人科」に関する記憶を手繰っていると、ひどく嫌な気分になってくる。結婚して子どもを産むことになり、そこそこ平気で産婦人科に通うようにはなったが、それでもいまだにとりわけ行きたくない病院の一つだ。
考えてみると、結婚前と後で私の産婦人科への態度は極端に変わっていた。結婚前は産婦人科に行くこと自体が恐怖と羞恥心を伴っていたのに対し、結婚後はだいぶ堂々として、特に何も気にならなくなった。さてその理由は? 「産婦人科」という名称に答えがある。
書いて字のごとく、妊娠した女性や結婚している女性たちだけを医療の対象とするかのようなその名称、産婦人科〔訳注・「婦人」は日本語で成人女性の意だが、韓国語では既婚女性をさす〕。
この本の原稿を初めて読んだとき、私は10代、20代だった自分が「産婦人科」をめぐって味わった不快な経験を容易に思い出すことができた。昨日のことも先月のことも忘れてしまうのに、数十年前の経験があまりに自然とよみがえったのだ。
 本書のタイトルは『レズビアンの産婦人科』〔訳注・本書の韓国語原題〕だが、実際異性愛者で既婚女性である私も、レズビアンとしてアイデンティティを確立したばかりの彼女たちと同じ悩みと経験を共有していた。産婦人科が苦手で、産婦人科で聞かれたことに答えるのは冷や汗が出るほど難しく、困らせられた。
 それほど女性たちが産婦人科で受ける質問は難しい。この本では特に「性関係の有無」が診療にどう影響するのか、患者である女性たちに一度もちゃんと説明されていないことに焦点を当てている。女性たちはこの苦手な質問にどう答えればよいのか、公式の場でしっかりと説明を受けたことが一度もない。家庭でも、学校でも、病院でも、どこでもだ。
 しかし「性経験」について問われても「ない」または「ある」と単純に答えられるものだろうか。「女性」が│それがセクシュアリティであれジェンダーであれ│性的に「経験」を持つとは、いったいどこまでを含めた話なのか。これは学者たちが論戦と討論を重ねながらいまだ合意に至っていない問題ではないか。
 単に男性器=ペニスが挿入される(フェミニストの間では男性中心的な「挿入」よりも「吸入」という表現を使用するのが大勢だが、ここでは社会通念が依然として女性を中心としたセックスを想定できずにいることを強調するために、こちらの表現を用いた)セックスをしたか、しないかという質問だったら? 「挿入セックス」自体が産婦人科診療に決定的または重要な変数となるなら、むしろ具体的・直接的に尋ねたほうがよいのでは? なぜ遠回しに難解な聞き方をするのだろうか。ようやく家庭と学校から外の社会に出て、女性としてアイデンティティを確立したばかりの誰もが共感するだろう。「性経験がありますか?」と質問された女性たちが、ありとあらゆる考えをめぐらしてしまう複雑な心境に対して。
 健康への関心がぐんと高まった昨今だが、昔も今も女性たちが集中的に受けなくてはならない医療サービスが女性にとってとりわけ難しく、はっきりとせず、さらには不親切で不快ですらあるということが、何を示唆するのか。成人女性でさえつきそいなしに一人で産婦人科に行くことが気まずく、みじめですらあるのはどうしてか。産婦人科は行きやすいと、いつでも気軽に通えると言える女性がどれほどいるのか。この問いはしかし、この本を手に取った読者たちと共感の輪を作りあげる出発点にすぎない。
著者からの問いとメッセージはまた別にある。
 第一に、女性が男性と生物学的に違うためとはいえ、管轄する医療サービスがなぜ「産婦人科」という一つのカテゴリーですまされてしまうのか。この医療サービスは誰にとって合理的で妥当とされるのか。この問いを通じてはっきりと見えることがある。「産婦人科」として分類される現医療サービスが女性ではなく、女性が産む子どもを中心に、それがあたかも自然なことかのように、医学的社会的に管理されているという現実だ。妊娠と出産以外の理由で産婦人科を訪ねる女性たちが、いやおうなく気まずい思いをさせられるわけだ。しかし本当に妊娠と出産をきちんと管理するためには、女性たちが妊娠と出産に至る前から拒否感なく気軽に自分の健康を管理できなくてはならない。そんなしごく当然の真実が無視されている。この真実は現在全世界で底打ち状態の低出生率と、果たして無関係といえるだろうか。
 第二の問いは「性経験が健康に及ぼす影響は、医療的にどう扱われているのか」だ。男性も主に泌尿器科で「性経験の有無」を聞かれているだろう。彼らは悩むだろうか。性経験が「挿入」を中心に意識されている男性たちにとって、この質問は不快で難しいだろうか。「マスターベーションはしたが性経験はない」と話す程度の気まずさが想像されるにすぎない。ならば女性は? 女性も同じ回答をすればすむのだろうか。女性とセックスする女性たちは? 「挿入」が「オルガズム」や「性関係」の必要十分条件ではない女性たちにとって、「性経験」はある、ないと単純に答えられるものではない。それは非常に広範囲な、新しい方向へ進んでいく物語なのだと、レズビアンであるこの本の著者とインタビュイーたちが教えてくれる。男性たちの介入が絶対的に不要なこの物語を出版しようと決心したのはそのためだ。
 そこから興味深い課題も発見できた。かなり前から女性たちを中心に、「産婦人科という名称を女性医学科に変更しよう」という社会的要求があったというのだ。2020年には青チョンワデ瓦台国民請願に上がって4万筆を超える署名が集まり、「医協新聞」という媒体では「産婦人科↓女性医学科、名称を変更してください!」と題した記事でこの件を詳細に取り扱った。2021年の「ヘルス朝鮮」では男女の脳の構造と生物学的な違いをしっかり研究すべきとして「脳の構造が違う……女性医学、男性医学分離すべきか?」という記事が出た。検索ポータルサイトで「女性医学」と検索すれば、ウィキペディアなどにその概念が紹介されている。今回、2022年の大統領選挙ではある候補が出した多数の公約に「産婦人科を女性医学科に名称変更する」が含まれていた。しかしその候補は大統領になれなかった。20代、30代女性から圧倒的な支持を受けたにもかかわらずだ。
 このように社会的要求があり、その要求がメディアを通じて再びスポットライトを浴び、政治的な流れまで加わったことで、少しずつ変化は起きている。「女性医学科」「女性医学」という名称が使われるようになったのだ。江カンウォンド原道インジェの保健所に「女性医学科」が開設され、ソウル江カン南ナムのある病院でも「女性医学研究所」が新たに設立された。とは言え依然として「妊娠」と「出産」に焦点を当てているようで、その点は非常に残念だ。
 しかし女性家族部が人口家族部となる運命に置かれた現時点で「女性医学」という名称が市民権を得つつある事実は、幸いを通り越して希望となるほかない。いつの時代も常に、女性にとっては「成功」より「生存」が優先課題なのだから。特に若い女性たち、そして女性を愛する女性たちに軽やかに接し、しっかりと寄り添ってくれるよう願いながらこの本を作った。
 さあ、女性を愛する女性たちの性経験と「産婦人科」がいかに不快に結びつくか、共感の準備をしてページをめくっていただきたい。予想を裏切る愉快で明るいエネルギーに驚かれることだろう。またレズビアンでなくとも共感し、読んで正解と思われるはずだ。もし今この本を開いているあなたがレズビアンなら、ああよかったと思われるだろう。よかったという安堵感は、「私だけじゃなかったんだ」という強い慰めと共感のユリイカ(発見)だ。
 そのユリイカを味わってほしいと願いつつ……。
 つけ加えるなら、30代、40代以上のレズビアン女性たちのインタビューが載っていないことが惜しかった。レズビアンとしてアイデンティティを確立したばかりの若い女性に、この社会でレズビアンとして生き残り老年を迎えようとする彼女たちが、温かな助言を与えることができたらどんなによかったろう。互いを温かく見つめるレズビアンの、世代間の物語が後に続いてくれたなら。もちろん、イフブックスの門はいつでも広く開いている。
チョ=パク・ソニョン 

版元から一言

「レズビアンにとっての産婦人科」という非常に斬新なテーマで、若年当事者によって書かれた次世代韓国フェミニズム本です。
本書で指摘される産婦人科の男性中心主義は、レズビアンに対してことさら深刻な弊害をもたらすだけでなく、そうでない女性たちにも程度の差はあれ栄養を及ぼします。
また「産婦人科」という名称は韓国も同じで、日本の植民地時代にできたものです。産婦人科をめぐる問題は日本と共通する点が多いこともあり、レズビアンもそうでない女性も、韓国の女性も日本の女性も、多くの人が共感できる内容です。

著者プロフィール

イ・ウネ  (イ ウネ)  (

イ・ウネ 이은해 Lee Eunhae
レズビアンフェミニスト。韓国放送芸術総合学校放送映像科卒業。2021年、卒業式(第17回)兼定期上映会で上映されたドキュメンタリー「破っちゃっていい?」を制作。この作品と同様に「産婦人科」をテーマに、レズビアンたちにインタビューした原稿が本書となった。女性を愛する女性であることを隠さなくてもいい世の中に生きたいと活動している。主な作品は、短編ドキュメンタリー「不思議なレズのお葬式」を監督し、2022年ソウル国際女性映画祭(SIWFF=シウフ)でシウフ賞受賞(公開予定)。

大島 史子  (オオシマ フミコ)  (

イラストレーター、漫画家。「ラブピースクラブ」コラムサイトでフェミニズムエッセイ
漫画「主人なんていませんッ!」を連載。

早乙女 智子  (サオトメ トモコ)  (医療監修

早乙女智子 Tomoko Saotome
産婦人科医。1961年生まれ。筑波大学医学専門学群卒業。京都大学大学院博
士。国立国際医療センターにて研修医、レジデント終了。2020年から神奈川県
立足柄上病院産婦人科医師。専門はセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス・ライ
ツ、人口問題。性別にかかわらず誰もが自分らしく健康的に生きることをサポート
する医療、中絶を含めた「妊娠出産関連費用の無償化」を目指す。日本性科学
会副理事長、認定セックスセラピスト。著書に、『LOVE・ラブ・えっち』(共著、保
健同人社刊)、『女の子が大人になるとき』 (少年写真新聞社刊)、『保健体育の
おさらい』(自由国民社刊)などがある。https://saotometomoko.com/

沢部 ひとみ  (サワベ ヒトミ)  (解説

沢部 ひとみ Hitomi Sawabe
1970年代、この国の女性同性愛者が「病気」で「ポルノ」だった時代に、アメリカ
でレズビアンフェミニストに出会う。以来、この異性愛男性優位社会で、女が女を
愛し、女と生きることの意味を追究してきた。主著に『女を愛する女たちの物語』
『百合子、ダスヴィダーニヤ 湯浅芳子の青春』。2007年に開いた「パフスクー
ル」では、若い仲間と自己開示と対話の方法を学び一方、トークイベント「日本L
ばなし」を開催し、多様なレズビアンの群像を描き、過去・現在・未来をつなぐ活
動に励んでいる。

上記内容は本書刊行時のものです。