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東西冷戦史(一) 二つに分断された世界
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2019年12月21日
- 書店発売日
- 2019年12月13日
- 登録日
- 2019年10月18日
- 最終更新日
- 2020年2月3日
紹介
なぜ人々は世界を分断し、対立するのか?
多方面で活躍中の論客・山崎雅弘(戦史・紛争史研究家)がそのメカニズムを詳細に、かつ明快に分析。近現代の“戦争のリアル”を描く歴史書籍シリーズの第1弾となる本書では、第二次大戦後の世界で現在も繰り返される「不信と憎悪の構造」の始まりとなった東西冷戦について深く分析。朝鮮戦争、ベトナム戦争、インドシナ紛争など、東西冷戦期に勃発した凄惨な戦いの数々を多角的に検証する。
目次
はじめに
第一章 戦後世界の新秩序と「国連」の誕生
第二章 ベルリン封鎖 1948
第三章 朝鮮戦争 1950 ~ 1953
第四章 インドシナ戦争
第五章 ベトナム戦争 1965 ~ 1975
第六章 ラオス・カンボジア紛争
目次
はじめに
第一章 戦後世界の新秩序と「国連」の誕生
第二章 ベルリン封鎖 1948
第三章 朝鮮戦争 1950 ~ 1953
第四章 インドシナ戦争
第五章 ベトナム戦争 1965 ~ 1975
第六章 ラオス・カンボジア紛争
前書きなど
はじめに
二〇世紀は、戦乱の時代であった。
その一〇〇年の前半だけでも、第一次と第二次の二度にわたる世界大戦をはじめ、日露戦争、ロシア内戦と連合国の干渉戦争(日本軍のシベリア出兵も含む)、第一次と第二次のバルカン戦争、スペイン内戦、インドシナ戦争、インドネシア独立戦争、第一次中東戦争など、数多くの戦争が地球上で発生し、厖大な数の死者を生み出した。
幸運にも生き延びた側にいても、心や身体に深い傷を負う者、家や財産を失って難民となる者など、理不尽な苦しみを味わわされた人の数は計り知れない。
戦争や紛争はなぜ繰り返されるのか。その重い命題に、昔から多くの人間が取り組んできたが、人類はいまだその答えを見出せてはいない。だが、その不条理が起きる可能性をわずかでも減らしたいと思うなら、たとえゴールの光は見えなくとも、あきらめずに、そこに少しでも近づく努力を続けなくてはならない。
戦争や紛争は常に、新たな形態で発生し、特に軍事面では過去の戦訓が役立たないことも多い。隣国ドイツからの侵入を防ぐ目的で、第一次世界大戦の戦訓に基づいて構築されたフランスの大要塞「マジノ線」が、戦車や航空機の発達で完全な「役立たず」となっていることに気づかれず、二〇年後に勃発した第二次世界大戦ではドイツの電撃的な侵攻をまったく防げなかったのも、そうした教訓の典型的な一例と言える。
その一方で、戦争や紛争に至る「前段階」の政治的変化や国家間の対立がエスカレートするプロセスに目を向けると、軍事技術の変化とは別の次元で、過去から現在まで共通するパターンも数多く読み取ることができる。
いったん戦争や紛争が始まってしまえば、主に「軍事」の出番となるが、その発生回避という段階では、さまざまな政治面の相互誤解や感情的な言動の応酬、国家指導部の面子や威信への固執など、昔も今も変わらない人間的要素と「理性の限界」が、その後の展開を大きく左右する。従って、戦争や紛争の勃発を回避するためには、その前段階にこそ目を向け、何が指導者や国民を狂わせるのかを理解しておく必要がある。
これは決して空想的な絵空事でも理想論でもない。一九六二年に発生したキューバ危機(本書の続刊で紹介予定)の際、時のアメリカ大統領ジョン・F・ケネディと閣僚らは、第一次世界大戦が発生した経緯を研究したバーバラ・タックマンの名著『八月の砲声』を読み、自分たちの行動が相手に誤ったメッセージを与えないか、不注意な言動が事態を予期せぬ段階にエスカレートさせないか、慎重に舵取りを行うための指標としていた。
過去の歴史を振り返れば、戦争や紛争の回避に全力を尽くした国家指導者もいれば、その正反対に、さまざまな理由で国民を戦争や紛争へと誘導する国家指導者も存在したことがわかる。後者の指導者が、どんな論理と行動で、家畜を追い立てるように自国民を戦争へと導くかという前例を、国民側があらかじめ知っているなら、同じ手で何度もだまされるという展開を避けられる可能性も高まる。
本書は、一九四五年に第二次世界大戦が終結したあと、新たな世界秩序の中で発生した戦争や紛争を取り上げ、その発生原因と経過を読み解く試みである。
戦後の国際秩序は、「国連(国際連合の略語だが、本来の意味は『United Nations = 連合国』:第一章で詳解)」という国家間対立の調停機関と、アメリカおよびソ連の二大超大国を頂点とする「東西冷戦」の対立構造を、二つの枠組みとして組み上げられていた。
このうち、後者の「冷戦(Cold War)」とは、アメリカとソ連が直接戦争をしないという意味で「熱戦(Hot War)」の対義語として創られた名称だが、実際にはこの二大超大国の勢力範囲がぶつかり合う最前線では、それぞれの傘下に属する国々が「代理戦争」のような形で戦争や紛争を行う事態が各地で多発した。
本書では、それらの戦争や紛争の中から、東西冷戦の事実上の端緒となった一九四八年の「ベルリン封鎖」と、東西冷戦構造に起因する最初の戦争として一九五〇年に勃発した「朝鮮戦争」、ベトナムの独立戦争が次第に東西冷戦構造へと組み込まれていった「インドシナ戦争」と、それに続く典型的な東西代理戦争の「ベトナム戦争」、そして冷戦構造の歪みがもたらした「ラオス・カンボジア内戦」を取り上げ、なぜこれらの戦争や紛争が発生したのか、アメリカとソ連はこれらの戦いにどのような形で関与したのかを、政治と軍事、民族などの視点から多角的に分析・検証する。
また、これらの戦争や紛争にも一定の影響を及ぼした「国連」という国際機関がいかなる目的と経緯で創設されたかについても、最初の章で詳しく検証する。
イギリスの軍事史家バジル・リデル=ハートは、新たな戦争回避を念頭に置いた提言として「平和を欲するなら戦争を理解せよ」と述べた。本書の内容が、平和の希求という目的において、読者が「戦争を理解する」ための一助となれば幸いである。
版元から一言
●集英社新書『日本会議』『「天皇機関説」事件』『歴史戦と思想戦』などの著作をはじめ、SNS・新聞など各メディアで注目を集める著者の最新刊。
●政治・社会問題を扱う書き手の中にあって、著者は軍事・戦史に造詣が深いことが最大の強み。本書はその持ち味を最大限に生かした歴史書籍シリーズの第一弾となります。
●現在の各国勢力の成り立ちのもととなった「東西冷戦」の時代、各国でどのように対立し、戦争・紛争に至ったかを明快な論理で解説。
●世界史の基礎知識も適宜フォローした文章は、高校生から大人まで読みやすいものに仕上がっています。
●シリーズ続刊もすでに複数準備中。
上記内容は本書刊行時のものです。