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印刷詩集
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2023年12月25日
- 書店発売日
- 2024年1月25日
- 登録日
- 2024年1月15日
- 最終更新日
- 2024年1月30日
紹介
印刷へ、印刷から─愛の詩〈うた〉。
500年変わらぬ鉛活字の世界が、
この数十年で革新した技術に戸惑いながら、
それでも刷り、折り、綴じ、くるみ、眺めるを繰り返し、
輪転する中で浮かぶ著者の言葉・イメージが
伝える印刷世界は、ただ愛おしい──
「著者・龍秀美は詩人として知られる。日本語文学において、現代詩だけでは、生活できないことも知られている。(中略)この詩集では、ここ50年の印刷・出版の変遷を、随所に見ることができる。いや、もっと長い時間の幅で、眺めることもできる。」
──「『印刷詩集』によせて:印刷・出版の激動期を振り返る」より 坂口 博氏
***
ル ビ
活字の大きさの単位が
定められていなかった昔
アメリカなどではそれを宝石の名で呼んだ
──あっ、そこダイヤモンドでいって……とか
──エメラルドの方が見やすいんじゃない?
とか言ってたわけだ
ルビーは5.5ポイントの活字のこと
五号活字の横に付けると
振り仮名にちょうどよかったらしい
良いねェ!
昔は気分が豪勢だったに違いない
活字とそれで作られた書物が
宝石のように貴重だった昔
でも 言葉は磨きさえすれば
いまだって宝石になる
キラキラ光るコトバを話そう
(本書より)
前書きなど
あとがきに代えて
この詩集は、わたくしが勤務していました秀巧社印刷株式会社の社内報「秀巧だより」に、印刷に関係することを詩にして連載したものの抜粋です。2007年7月に秀巧社創業90周年を記念し小冊子にして社内で配布されましたが、それ以外では人目に触れておりません。
今回、埃を払って一冊の本にしてみようかと思い立ったのは、この時代が意外に面白く感じられたためでした。坂口博氏の懇切な解説にある通り、この時代はあらゆる分野で技術の大きな転換がありました。ひとくちで言うとアナログからデジタルへの歩みです。
特に印刷分野ではこの歩みが段階を追って“目に見えるかたち”で行われました。15世紀からの500年の歴史を持つ鉛活字による印刷はわたくしが入社した当時はまだかなり行われていました。しかし写真植字とDTP(デスクトップ・パブリッシング)がその命脈を途絶えさせました。その後のデジタル化の勢いはご存じの通りです。
その一大変化の時代を偶然にもすっぽり包み込むようにして15年間書き続けた「印刷の詩」です。
その間わたくしには現代詩を書いているという意識は無く、目前の作業をぽつぽつと、しかし愛情だけは注いで書いたという気がします。少なくない年月を共にすごした「わたしの印刷」を振り返ることによって、いわば手触りのある〈「極私的ワーク」の時代〉に浸りたい思いが今さらながらとも思える出版に踏み切らせました。
文字通り「御笑覧」いただければ幸いです。
2023年 霜月
龍 秀美
上記内容は本書刊行時のものです。