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和歌の黄昏 短歌の夜明け
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2019年9月25日
- 書店発売日
- 2019年9月30日
- 登録日
- 2019年9月10日
- 最終更新日
- 2019年9月27日
書評掲載情報
2019-11-24 |
東京新聞/中日新聞
朝刊 評者: 水原紫苑(歌人) |
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紹介
歌は、21世紀でも「平和」を作りだすことができるか。
「『古今和歌集』から日本文化が始まる」という新常識のもと、千四百年の歴史を誇る和歌・短歌の変遷を丁寧にひもとく。
「令和」の時代を迎えた現代が直面する、文化的な難問と向かい合うための戦略を問う。
日本の近代を問い直す!
目次
序章 早わかり「和歌・短歌史」
I 和歌の黄昏
1 和歌は、異文化統合のシステムだった
2 皆殺しの短歌と、「四海兄弟」の和歌
3 中島広足と神風思想
4 三島由紀夫は、和歌文化を護ろうとした
5 蓮田善明の「反近代」、そして「反アララギ」
6 「もののあはれ」という暴力装置
7 赤穂浪士たちの仇敵は、源氏文化だった
8 本居宣長の「大和心」と「大和魂」
9 明治天皇と「大和心」
10 近藤芳樹と『源氏物語』
11 橘守部による和歌の大衆化
12 香川景樹と「原・もののあはれ」
13 江戸の文人大名と『源氏物語』
II 短歌の夜明け
14 現代短歌は、いつから平面化したのか
15 短歌の物語性と批評性の母胎は、漢語である
16 正岡子規と『源氏物語』
17 正岡子規の「歴史」詠
18 短歌と新体詩の距離
19 大和田建樹の新体詩の戦略
20 落合直文は、なぜ「折衷派」なのか
21 樋口一葉は旧派歌人だった
22 森鷗外の和歌と小説
23 翻訳詩の功罪……上田敏の『海潮音』
24 在原業平になりたかった男……与謝野鉄幹
25 「西下り」した女業平……与謝野晶子
26 佐佐木信綱と古典文学
27 佐佐木信綱の『新月』
28 『まひる野』と、窪田空穂の「神」
29 若山牧水のあくがれた「城」と「国」
30 若山牧水と『伊勢物語』
31 若山牧水と古典和歌
32 原阿佐緒の『涙痕』を読む
33 北原白秋と『小倉百人一首』
34 北原白秋『桐の花』と、「もののつれづれ」
35 「もののあはれ」と革命……石川啄木
36 斎藤茂吉『赤光』と「もののあはれ」
37 島木赤彦『切火』と、近代文語
38 伊藤左千夫と日露戦争
終章 「もののあはれ」と日本、そして世界
おわりに……「令和」の祈り
前書きなど
江戸時代中期に興り、本居宣長が大成した国学は、平和と調和を祈る文化的エッセンスである「古今伝授」を真っ向から否定した。『古今和歌集』以来の優美な歌では、外国文化と戦えないという不信感が『万葉集』を復活させたのである。強力な外来文化に立ち向かう武器として『万葉集』や『古事記』を持ち出し、古代を復興した。あまつさえ、天才的な文化戦略家だった宣長は、「パックス・ゲンジーナ」(源氏物語による平和)を反転させ、『源氏物語』を外国文化と戦う最強の武器へと組み換えた。これが本来企図された破壊の力、「もののあはれ」の思想である。だが、宣長の天才的な着眼の真意は、近代歌人には理解されなかった。『源氏物語』を排除して、『万葉集』のみを近代文化の支柱に据えて、欧米文化と渡り合おうとする戦略が主流となったのである。
上記内容は本書刊行時のものです。