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琉球建国史の謎を追って
交易社会と倭寇
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2022年10月4日
- 書店発売日
- 2022年10月6日
- 登録日
- 2022年9月21日
- 最終更新日
- 2022年10月6日
紹介
南北朝・元明交代期という日中動乱の時代の狭間に、琉球王国はどのようにして立ち上がったのか。
また、その建国史は後の王国にどのような痕跡を残したのか。
確実な史料のない、謎に包まれた王国成立の過程に光をあて、琉球史に新たな展望をひらく。
前著『琉球王国は誰がつくったのか』を中心に、著者のこれまでの琉球史論を要約し、新見解を増補した決定版。
目次
はじめに
第一章 グスク時代以前
第二章 城久遺跡群の衝撃とグスク時代の幕開け
第三章 交易ネットワークの形成と変容 交易社会への躍動
第四章 大型グスクの造営過程
第五章 交易者たちの国家形成 倭寇の時代
第六章 「三山」の関係と性格
第七章 三山の統一と思紹、尚巴志の出自
第八章 十五~十六世紀の日琉関係
結びにかえて
補論 史料としての『おもろさうし』
注
引用・参考文献
あとがき
索引
前書きなど
はじめに
本書の目的は、従来の研究史の論点を整理しながら、琉球弧の後期旧石器時代から琉球国形成を経て島津侵攻までの歴史過程の大まかな見取図を描くことである。
そのなかでも焦点を当てて記述したのはグスク時代開始期(十一世紀半ば)から琉球国形成までであり、旧石器時代から貝塚時代までと、三山統一から島津侵攻までの期間については、従来の研究についてごく簡単に触れたにすぎない。その意味では、琉球国の形成において海商などの交易者たち、なかんずく倭寇(倭寇的集団)が大きな役割を果たしたことを論じた『琉球王国は誰がつくったのか』(七月社、二〇二〇年)の簡約版としての性格を持つものである。分量で言えば、本書の全体の六割ほどがそれに当たる。
後期旧石器時代から貝塚時代にかけての期間を含めたのは、グスク時代以降、南北琉球が同一の文化圏を形成することになるが、それ以前の南北琉球の文化的相違を記述しておきたかったこと、琉球弧でのヒトの痕跡をできる限り遡って記述しておきたかったことのふたつの理由からである。
また、三山統一から島津侵攻の期間で扱った内容は、十五~十六世紀の日琉関係は思紹、尚巴志父子による三山統一の時期の日琉関係が起点になっているのではないかという問題意識に関連する。
本書では、琉球国の最も繁栄した時代と考えられる第二尚氏の尚真王代から筆録・編纂が開始された、琉球王府編纂の祭式歌謡集である『おもろさうし』についても取り上げた。『おもろさうし』とは洗練された国家祭祀の言語でうたわれるものであり、琉球国が尚真王代に国家祭祀の言語を持つにいたるほど充実した国家になったことを示していると考えるからである。巻末には、補論として「史料としての『おもろさうし』」を置いた。
なお、前掲『琉球王国は誰がつくったのか』に加えられた批判についても、できるだけ答えるようにした。具体的に言えば、「農耕の開始は農耕社会の成立を意味しない」とする議論に対する批判などである。
琉球国の「建国史」(成り立ち)については謎が多い。
佐敷グスクを拠点にした思紹、尚巴志の父子によって三山が統一され、琉球国が形成されるが、三山がどのような順番で征討されたかのみならず、三山が統一された時期さえ、確実な史料がなく、わからないのである。また、三山の枠組みから見ればアウトサイダーに位置づけられる思紹、尚巴志父子がどのような人物だったのかも、よくわからないのが実情である。
国の成り立ちが、すべてではないにしろ、その後の国家の性格を規定することを考えれば、琉球国の歩みを検討するうえで、建国史がわからないまま議論を先に進めることはできないように思う。この点は、強調しても強調しすぎることはないであろう。
上記内容は本書刊行時のものです。