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ホットケーキが焼けるまで
ヴァリエテ本六diary
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2022年10月26日
- 書店発売日
- 2022年11月1日
- 登録日
- 2022年10月6日
- 最終更新日
- 2022年10月24日
書評掲載情報
2023-01-28 | 東京新聞/中日新聞 朝刊 |
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紹介
2006年5月、東大正門前に「ヴァリエテ本六 Gallery and books」はオープン。社会科学系の古書店「慶応書房」閉店後、若き女性建築家による改築を経て、本とアートの二枚看板でスタートし、2019年に閉じるまで、実に多くの人々が「本六」に集い愉しんだ。写真・絵画・彫刻・陶芸等々の企画展は年間10回におよび、美学やアート、環境問題の講演会からカルテットの演奏会、落語会、絵本の読み聞かせやヨガ教室まで、店主のアイデアは止まることなく、“夢見るギャラリストのびっくり箱”のような空間となった。難病のALSを発し動く自由を奪われたものの、考える自由までは失わない店主がまとめたブログと写真による10年余りの足跡。
目次
Ⅰ[ホットケーキが焼けるまで]
2006~2010
公園入り口まで歩く/生きてくだけでも大変な特別な夏/記憶と忘却……
2011~2014
支援物資を都庁に/小雨の夕刻、千駄木でディナー/お隣のおばちゃんのこと……
2015~2019
「無限古書店」(テレビドラマに出たょ)/「下り坂」のすごいたのしみ……
Ⅱ[本6通信][本六の本棚の本日の一冊]
団子坂の図書館/本六にいらしてくださった赤瀬川さん……
Ⅲ ヴァリエテ本六 企画・展示目録
前書きなど
建物の記憶──あとがきにかえて
家が建物が人を引き寄せるのだろうかと、ウインドウ越しの表通りを眺めている時によく思った。
店とオフィスは左右二枚の木製の引き戸で仕切られていた。扉は上半分が、四方が丸いカーブの透明ガラスがはめ込まれていた。日中は水場のある右側を開け放してあり、オフィスつきあたりまで見えるのだが、それを防ぐようにそこに立って、ガラス戸の向こうの本郷通りを眺めているのが、私の至福の時間だった。
ギャラリーに展示された作品たちは、大概静かな落ち着きを示してそれぞれが其処にあることに満足しているようだった。
そして本たちが優しい援軍として、作品と私を背後から見守っているのだった。
それらが均等に調和よく存在できたのは、この家が建って以来、かれこれ百年ほどそこに流れた時間があったからではないだろうか。……
この建物の主人公はやはり無垢の木材で造られた本棚だったと思う。ギャラリーへの改造、設計を依頼した小山田未希さんも私も本棚を生かしたいと思っていた。中央に設置していた一連の本棚の一部をウインドウの手前に移動し平行に設置してくれたこと、感謝している。
開店した当初は棚には何も入れず、ギャラリーの中の様子は外からちらほら見えたが、やがて表裏とも本で埋まってしまった。
備品のことも記すと、まず木製の長椅子は杉並区の教会から放出されたものを縁あって譲り受けた。
本を店内に向けて開いたような形のウインドウに一灯提げた照明器具は、友人姉妹から。取り壊された民家につけられていた。
オフィスに置いた諸々の家具は西片のマンションから古書ともにやってきた。
唯一の発注品は小山田さんがデザインした正面の看板文字「H6」。友人夫妻の営んでいた鉄工所の制作だった。
どれも本六に欠かせないものとして、ピタリとはまった。昔からそこにあるように。……
版元から一言
著者の高橋丁未子さんが、編集者時代に親交を持った作家の中でも、保坂和志さんとは、お互いにリスペクトし合う素敵な関係が続いています。本書刊行にあたっては、帯文に次の言葉をいただきました。
「1984年の12月くらいだった(と思う)、まだ編集者だった高橋丁未子さんとはじめて会って以来、私は一貫して丁未子さんに深い尊敬の念を抱いている。世間的な意味での「尊敬」なんて言葉が似合わない人だからこそ、私の尊敬はずうっと続いている。この本を読むと、きっとみんな私の気持ちがわかるはずだ。どのページも、丁未子さんだ。私は丁未子さんが、大好きだ。次から次へとページをめくりたくなるけど、ぜひ、ゆっくり、少しずつ読んでください」(保坂和志)
上記内容は本書刊行時のものです。