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ボタニスト
パリの標本館を築いた植物学者たち
原書: Botaniste
- 出版社在庫情報
- 品切れ・重版未定
- 書店発売日
- 2020年10月6日
- 登録日
- 2020年8月22日
- 最終更新日
- 2023年11月18日
紹介
著者マルク・ジャンソンは、パリ国立自然史博物館の標本館を率いる少壮の植物学者。350年の歴史を有するこの標本館は世界最大級の規模を誇り、800万点におよぶ植物標本を収蔵する。この植物研究の殿堂に自らの半生を重ねあわせつつ、先人たちの業績と近代植物学の歴史をたどるエッセー集。17世紀フランスで植物学の父と呼ばれたトゥルヌフォールに始まり、18世紀中葉、革新的な分類体系を提唱しながら不遇の人生を送ったアダンソン、その名前がフランス語の胡椒の語源にまでなったポワーヴル、植物にも繁殖目的の性別があることを大っぴらにしてスキャンダルを巻き起こしたヴァイヤン、さらには北極星の騎士リンネ、自然史上もっとも不運な科学者の一人といわれるラマルク、そして「植物の壁」で日本でもよく知られる現代のパトリック・ブランまで――有名無名のボタニストたちの事績をユーモアあふれる筆致で綴る。通底するのは、植物への限りない愛情と、「土と雲そして泥を愛する放浪者」ボタニストたちへの畏敬の念である。
版元から一言
一つ一つ異なる個性をもつ金属活字を並べて言葉をつくる場となるヴィンケルハーケン。活版印刷に欠かせないこの道具の名前をとった本叢書は、拙社専門のタイポグラフィとその周りをとりまく叡智を集めたシリーズである。
第一弾は自然科学。パリの歴史ある数多の植物標本は地球の記憶であり、人間の営みの鍵である。日本では牧野富太郎に代表される専門的な分野だが、その叡智は様々な分野に及んでいると考えられる。タイポグラフィにおいても、重要なポイントが共通しているように思えてならない――タイプフェイスの分類や比較は、自然界に存在する美しいものや役に立つものが関係しているのではないだろうか。また、拙社の理念であるバーゼル・デザイン教育の最初の授業は、各学生が気に入った落葉を裏山で採集し、ディテールを観察することだったのもここに真理があるのではないだろうか。
アンスティチュ・フランセ・パリ本部による出版助成プログラムを受けた本書は、2019年の現地話題作。原著のページデザインを手本に簡素の中に存在する美を踏襲、パリの標本館の空気をそのまま閉じこめた。植物を愛してやまない人はもとより、自然の一部にすぎないすべての人に読んでほしい58のエッセイ、ぜひお手元にこの一冊を。
上記内容は本書刊行時のものです。