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空き家・空き地を活かす地域再生
コミュニティ・アセット実践編
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2024年10月10日
- 書店発売日
- 2024年10月10日
- 登録日
- 2024年6月28日
- 最終更新日
- 2024年10月15日
紹介
「コミュニティ・アセット」とは、「空き家増加」と「コミュニティの活力低下」という二つの問題を同時に解決する「場づくり」を指す。空き家を活用することこそが、コミュニティが再生されるためのきっかけとなり、コミュニティのための場づくりこそが活動資金を生み出すと同時に、空き家を減らす処方箋になる。
本書では、「コミュニティ・アセット」の11の事例を通じ、金融による事業スキームの構築方法や完成までのプロセスを、スキームダイアグラムや豊富なカラー写真とともに伝える。
そのほか米英における先行組織のあり方や、コミュニティ・アセット構築までの定型のステップ、事業者らのインタビュアーを通じた成功のポイント、各課題についての論考などを掲載し充実した内容に。
行政、金融機関、地主、大家、設計者らなどまちづくりに関わる方の必携の書。
目次
[目次]
Introduction コミュニティ・アセットへの提言 田島則行
コミュニティアセット構築のためのステップ
Chapter 1 民間主導の公共プロジェクト
Case 1 地方から生まれた公民連携の最先端事例
岡崎正信/株式会社オガール
オガールプロジェクト
Case 2 官民連携によるまちの交流拠点
内山博文/つくばまちなかデザイン株式会社
co-en
Case 3 公民連携による集合住宅団地の新しい近隣空間
入江智子/株式会社コーミン
morineki
Chapter 2 コミュニティ事業から始まる地域再生
Case 4
DIYによる近隣活性化の始まり
河野直/合同会社つみき設計施工社
123ビルヂング
Case 5
投資から始まる場の育成・運営
松島孝夫/株式会社エンジョイワークス
平野邸Hayama、The Bath & Bed Hayama、桜山シェアアトリエ
Case 6
“共感”をコアにした集合住宅の再生
𠮷原勝己/𠮷原住宅有限会社、株式会社スペースRデザイン
山王マンション、新高砂マンション、コーポ江戸屋敷
Chapter 3 市民の汗のエリアマネジメント
Case 7
空き家が増え続ける坂道のまちに立ち向かう
豊田雅子/NPO法人尾道空き家再生プロジェクト
あなごのねどこ、みはらし亭
Case 8
オーナーを突き動かす地域貢献型のテナント戦略
東海林諭宣/株式会社 See Visions
ヤマキウ南倉庫
Case 9
貧困と衰退に立ち向かう市民活動のアイデアと工夫
大谷悠/Das Japanische Haus e.V.
ライプツィヒの「日本の家」プロジェクト
Chapter 4 まちの価値を活かした空き家再生
Case 10 既存の不動産価値を活かした再生術
藤原岳史/一般社団法人ノオト、株式会社NOTE
篠山城下町ホテルNIPPONIA
Case 11 自治体と民間を連携させ新しい流通の仕組みをつくる
和田貴充/空き家活用株式会社
アキカツナビ
Cross Talk
1コミュニティ・アセットの地平を開いた先駆者の心得
岡崎正信
2 自ら編み出した公民連携の団地づくりの手法
入江智子
3 コミュニティ事業と地域再生をつなげる手法
内山博文×河野直×松島孝夫
4 各地のプレーヤーに知識とネットワークと手法を伝えていく
𠮷原勝己
5 一つひとつの活動からまちへ広げる
大谷悠×東海林諭宣×豊田雅子
6 再生事業の資金調達のスキームづくりに“よそ者”は不可欠
藤原岳史×和田貴充
Research
1 団地に展開されたエリアマネジメント:東京都西東京市、東久留米市「ひばりが丘団地」から
森田芳朗
2 中山間地域における地域おこし協力隊の活躍:岡山県久米郡久米南町 ゲストハウス「&里方屋」から
納村信之
3 社会性のある私欲:バンコクのリノベーションプロジェクトから
権藤智之
4 遺物を活かす空き家再生の提案
山崎亮
5 アーティストと地域住民のゆるやかな関係:大分県別府市「清島アパート」から
若竹雅宏
6 歴史的建造物の利活用によるエリア再生:ベルギー、オランダの産業遺産から
奥村誠一
7 不動産市場から見るアセット価値向上の手法:イギリスの建築ストックから
中城康彦
前書きなど
はじめに 田島則行
空き家の問題が、ニュースでも大きく取り上げられるようになってから久しい。政府や行政が毎年のようにさまざまな対策を打つが、一向に減る様子がない。空き家数は、総務省の統計(2024年)ではついに900万戸まで増えてしまい、過去30年間でほぼ倍増してしまった。その理由はいろいろあると思うが、既存の住宅や建物を長く使われるように工夫してなか ったこと、空き家になったあとの新しい活用方法の工夫をしてこなかったことが大きいと思われる。
もう一方で、少子高齢化によって人口減少と高齢化という問題が顕在化し、各地域のコミュニティの活力が徐々に弱ま ってきていることもある。人口が減れば空き家は増え、空き家を活用するにも、使う人がいないという悪循環が続くばかりである。我々は、「空き家問題」と「コミ ュニティの問題」という、二つの大きな課題を抱えたまま、鶏が先か、卵が先かの議論を長いこと続けてきたように思う。
本書ではそれぞれ個別に解決するのではなく、むしろその二つを同時に考えることこそが、解決策を見つけ出す方法だと考えている。つまり空き家を活用することこそが、コミュニティが再生されるためのきっかけとなり、コミュニティのための場づくり、拠点づくりこそが活動資金を生み出すと同時に、空き家を減らす処方箋になるのではないかという考えだ。このように二つの問題を同時に解決するための「場づくり」のことを、我々は「コミュニティ・アセット」と呼んでいる。
コミュニティ・アセットの考え方に関しては、前著の『コミュニティ・アセットによる地域再生:空き家や遊休地の活用術』(鹿島出版会、2023年)において詳しく紹介している。アメリカやイギリスにおいて縮小局面におけるコミュニティの再生を行うために、各地域のNPO組織が活躍すること
で衰退地域の再生が進められてきたこと。
1990年代に紹介されたときには日本ではまだ準備が整っていなかったが、2010年代以降は日本においても先駆的な事例が続々と実現し始めてきていることを示した。
そして本書では、前著の理論的なベースを土台にしつつも、自らのリスクでプロジェクトを立ち上げて実践している日本の先駆者らにインタビューを行い、彼らが直面してきた問題やその解決方法を詳しく振り返りながら、今後、日本においてコミュニティ・アセットで地域を再生しようと考えている、あるいはすでに一歩踏み出している人たちのために、その方法論や考え方を詳しく紐解きたい。本の構成は、まず最初に「Introducti-on コミュニティ・アセットへの提言」にて背景や考え方を詳しく説明したうえで、「コミュニティアセット構築のためのステップ」を具体的に提示する。その後、四つの章に分けて各章2 ~3 事例ずつ、全部で11の事例を紹介し、Chapter 1 が「民間主導の公共プロジェクト」、Chapter 2が「コミュニティ事業から始まる地域再生」、Chapter 3 が「市民の汗のエリアマネジメント」、そしてChapter 4 が「まちの価値を活かした空き家再生」という四つの視点でまとめている。さらにこの四つの章には7 名の識者による国内や海外事例のリサーチがそれぞれ差し込まれており、本全体を通してコミュニティ・アセットによる空き家や空き地の再生手法の実践や理論、そしてリサーチを俯瞰できるように構成している。
建築関係者やまちづくり関係者だけでなく、銀行や金融機関、地主や大家、あるいは政府や行政などの多様な主体が力を合わせて衰退局面に直面する日本を再生していくために、ともに考え、実践すべき方法を提示することで、空き家や空き地の活用を進め、コミュニティの活性化を実現するための道筋を照らしていきたいと思う。
上記内容は本書刊行時のものです。