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楽しい公共空間をつくるレシピ 平賀 達也(編著) - ユウブックス
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楽しい公共空間をつくるレシピ (タノシイ コウキョウクウカン ヲ ツクル レシピ) プロジェクトを成功に導く66の手法 (プロジェクトヲセイコウニミチビクロクジュウロクノシュホウ)

社会一般
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A5判
縦210mm 横148mm 厚さ15mm
重さ 378g
192ページ
並製
価格 2,500円+税
ISBN
978-4-908837-08-1   COPY
ISBN 13
9784908837081   COPY
ISBN 10h
4-908837-08-2   COPY
ISBN 10
4908837082   COPY
出版者記号
908837   COPY
Cコード
C0052  
0:一般 0:単行本 52:建築
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2020年7月30日
書店発売日
登録日
2020年7月7日
最終更新日
2023年11月21日
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紹介

河川敷や空き地、道路、団地、工事敷地内-街のあらゆる場所はイベントやフェスなどで楽しい“パブリック”な場所になる。本書では11事例の徹底取材からプロジェクトを成功に導く手法66を抽出。チームビルディングからお金、スケジュール、共感を得る仕組みまで紹介します。

目次

はじめに 平賀達也

座談会
魅力的な公共空間は社会課題をも解決する
平賀達也・山崎 亮・泉山塁威・樋口トモユキ・西田 司

Chapter 1 屋外劇場型

Recipe 01
都心の川面でそよぐ反物、「染色の街」の新たな挑戦
染の小道

Recipe 02
親子で楽しむ野外上映、場所と体験を結び付ける
ねぶくろシネマ

Chapter 2 社会実験型

Recipe 03
「実験フェス」でエリアマネジメントの事業可能性を検証
パブリックライフフェスさいたま新都心2018

Recipe 04
都市再開発を踏まえ「つかう」視点から広場の担い手を育成
あそべるとよたプロジェクト

Chapter 3 参加体験型

Recipe 05
参加者の能動的な遊びに任せた「都市を体感する」イベント
アーバンキャンプ

Recipe 06
地域のスキマに遊びを出前
移動式子ども基地


Chapter 4 持続発展型

Recipe 07
市民がつくり出す愛情溢れる駅前広場
いずみがおか広場 つながるDays

Chapter 5 機能再編型

Recipe 08
アートプロジェクトから生まれた街の価値を高めるコミュニティ農園
みんなのうえん北加賀屋

Recipe 09
郊外駅前を再生するまちのリブランディング事業
ホシノタニ団地

Chapter 6 期間限定型

Recipe 10
ディベロッパーが推進する仮囲いのなかの「みんなの学び場」
吉日楽校

Recipe 11
グローバル企業が挑む「パーク」という持続可能な
プラットフォームづくり
Ginza Sony Park

あとがきに代えて 
公共空間は守られるべき権利

前書きなど

はじめに 平賀 達也

あなたのためのとっておきのレシピ
 公共空間は、あなたや、あなたの身近にいる人々の暮らしを、より豊かにしてくれる可能性を秘めています。あなたはすでに、公共空間を使って地域や仲間のために活動を続けているかもしれないし、あるいはこれから何かを始めてみたいと思っているかもしれない。ただあなたは、日々の生活のなかで漠然と感じる不安に対して、何かしらのアクションを起こしたいと思っている。

 あなたには、幼い頃からあなたのために料理をつくり続けてくれた人がいる。やがて1人になって、空腹を満たすためにつくり始めた料理を、美味しいと言ってくれる誰かが現れる。あなたはその誰かのためにまた料理をつくってあげたいと思う。そして気づくのです。かつて一皿の器に込められていたたくさんの愛情と、かけがえのないやさしさに。いただきます、ごちそうさま、そんなありふれた言葉を愛おしく感じながら。

 あなたの暮らす街で、あなたが活動を始めてみたいと思った動機も、同じような気づきからではないでしょうか。そんなあなたのために、公共空間という社会の器に盛り付けられる、とっておきのレシピをたくさん用意しました。地域で何かを始めてみたいと思っているあなたに向けて、この本はつくられています。こんにちは、ありがとう、そんな何げない会話のある街の風景を、子どもたちの世代につなげたいと思っているあなたに向けて。

この本で伝えたいこと
 公共空間とは、身近にある公園や駅前の広場、あるいは街なかの空地や河川の歩道など、地域の人々が日常生活のなかで何げなく使っている場所のことです。公共空間と聞くと行政の管理下にある場所だと思われがちですが、本書では民間企業や個人の所有地であっても、地域の人々に開かれている場所、地域と
の関わりが深い場所は公共的な空間だと捉えています。これら公共空間の多くは、高度経済成長期に整備されましたが、日本が成熟期に移行する今、地域社会が抱えるさまざまな課題の解決に貢献しているとは言い難い状況にあります。

 そうしたなかで、公共空間を活用しようという機運が全国規模で高まりつつあります。背景にはいくつかの社会的な要因が考えられます。まずは少子高齢化による社会構造の変化です。海外投資やインバウンドの外需に期待し、グローバルな都市間競争に負けないよう、魅力ある公共空間を都市経営の新たな基盤にしようという動き。また、人口流出や地域格差を是正するため、街なかの公共空間を活用してローカルな社会資本を再編しようという動きです。
 そして、2020年春に全世界を襲った新型コロナウィルス。長い外出制限で誰もが疲労困憊するなか、普段の生活では関心の薄かった身近な公園や自然の存在に親しみを感じた人も多かったのではないでしょうか。身近な公共空間に対する個々人の気づきは、コロナ後の社会にとって公共空間の更なる活用を後押しする動きにつながっていくことでしょう。

 公園や道路などを管轄する国土交通省も、2017年6月の都市公園法の改正や、2020年2月の道路法を改正する法律案の閣議決定を受け、官民の連携や地元の参加により公共空間を積極的に活用できる街づくりの推進に取り組み始めました。しかし、公共空間を使って地域社会のために何か活動を始めたいと考えている人が増える一方で、どのようにすれば活動をスタートできるのか、あるいは活動を軌道に乗せることができるのか、という多くの声が聞こえてくるようになります。私たちが公共空間を活用できる指南書をつくろうと考えたのには、このような経緯がありました。

 本書の著作に携わったメンバーは、公共空間を仕事の対象領域の1つにしていますが、それぞれが得意とするバックグランドはかなり異なっています。公共空間の目利きでもある個性的なメンバーが伝えたいと思うメッセージを、読者の方々に向けてどのようにアレンジすればわかりやすく届けられるか、随分と悩みました。辿り着いた答えが、「料理のレシピ本」のような「公共空間のレシピ本」でした。料理のさまざまなつくり方を伝えることで、地域独自の文化や風習が受け継がれてきたように、公共空間の多様な使い方そのものが、地域固有の誇りや記憶を受け継ぐきっかけになってほしいと思ったのです。そんな思いを込めた本には、3つの特徴があります。

 1つめは、66の「手法」で11 の「レシピ」を紹介していることです。初心者でも本格的な料理がつくれるようにさまざまな工夫が施された、レシピ本の伝達方法を参考にしました。活動するうえで重要な役割を担う人材や道具の選定基準を、料理の素材や器具に見立てています。目分量的な経験値を排除しながら、活動に必要な論理的手順や具体的数字を、調理の方法を伝えるようにまとめています。そして料理において一番大切な、たくさんの失敗や成功から学んだ「コツ」の伝授も忘れてはいません。

 2つめは、11の「レシピ」を6つの「型」に分類して紹介していることです。読者の方々は、自分たちが公共空間で行いたいと考えている活動のイメージが、「屋外劇場型」、「社会実験型」、「参加体験型」、「持続発展型」、「機能再編型」、「期間限定型」のどの「型」に当てはまるのかを事前に確認することができます。また、社会の価値観が多様化するなか、自分たちで合意形成を図りやすい活動手法に、どの「型」が向いているのかを考えるヒントにもなります。

 3つめは、公共空間での活動が地域の未来をより良くできることを、本書に携わったメンバーはもちろんのこと、取り上げたプロジェクトの関係者全員が信じていることです。どの取材先も、長い時間を掛けて独自につくり出したプロジェクト活動の成否を担う運営の仕組みや、プロジェクト工程の管理を司るガントチャートを、惜しみなく提供してくれました。彼ら彼女らがこの本に掛ける期待の大きさを感じながら、私たちも1つ1つのレシピをできるだけわかりやすく届けられるよう執筆や編集の作業にあたりました。

 誰かを楽しませたいと思う気持ちがあれば、公共空間を楽しむためのレシピやコツはおのずから伝播して広がっていきます。楽しかった!と言ってもらえるととても嬉しいし、次はもっと楽しませてあげたいと思う。料理のレシピ本をめくると、繰り返し眺めたページには、きまって出し汁やトマトソースの染みが付いている。この公共空間のレシピ本も、汗や涙にまみれたあなたの活動をともに支えてくれる本になってほしい。

 まずあなたができることから活動を始めてみることです。そうすれば、住み慣れた街にも関わらず、今までとは違った風景がきっと見えてくるはずです。この本を手に取ったことがきっかけとなって、あなたの身近にある場所で、何かを始めてみたい、活動に参加してみたいと思ってくれたなら、私たちはとても嬉しい。そこで生まれる小さなつながりが、やがては社会を動かす大きな変化につながっていく。そんな未来の可能性を信じて、私たちも日々の活動を続けていきたいと思います。

 最後になりましたが、本書の製作にご協力いただいた関係者の皆さま、駅伝のように原稿という襷をつなぎながら長距離を走り続けてきたタフなメンバーたち、スタートからゴールまで大きなメガホンを片手に私たちに寄り添い続けてくれた愛ある編集者・矢野優美子氏に、心より感謝いたします。公共空間と付き合い続けるためには、仲間を信じて走り続けられる体力と、分け隔てのない無償の愛が必要なんだと知ることができました。

 さぁ、あなたも走り出してみませんか。公共空間のもつ可能性を信じて。

著者プロフィール

平賀 達也  (ヒラガ タツヤ)  (編著

1969年徳島県生まれ。高校卒業後に単身アメリカへ留学。1993年ウェストヴァージニア大学 ランドスケープアーキテクチュア学科卒業後、(株)日建設計入社。2008年(株)ランドスケープ・プラス設立。現在、同事務所代表、ランドスケープアーキテクト連盟副会長。
東京を拠点に、都市の中で自然とのつながりを感じられる空間づくりや仕組みづくりを実践している。

山崎 亮  (ヤマザキ リョウ)  (編著

1973年愛知県生まれ。1995年メルボルン工科大学(環境デザイン学部ランドスケープアーキテクチュア専攻)留学。1997年大阪府立大学(農学部緑地計画工学)卒業。1999年同大学大学院(地域生態工学専攻)修了後、同年(株)SEN環境計画室入社。2005年studio-L設立。2013年東京大学大学院(工学系研究科都市工学専攻)博士課程修了。現在、(株)studio-L代表、慶應義塾大学特別招聘教授(総合政策学部)。
地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わる。

泉山 塁威  (イズミヤマ ルイ)  (編著

1984年北海道札幌市生まれ。2007年日本大学(理工学部建築学科)卒業。2009年同大学大学院(理工学研究科不動産科学専攻)博士前期課程修了、2015年明治大学大学院(理工学研究科建築学専攻)博士後期課程修了。博士(工学)。(株)アルキメディア設計研究所、明治大学助手、助教、東京大学先端科学技術研究センター助教などを経て、2020年より日本大学(理工学部建築学科)助教。現在、(一社)ソトノバ共同代表理事・編集長、PlacemakingX 日本 Regional Network Leader、東京大学工学部都市工学科非常勤講師。
専門は、都市経営、エリアマネジメント、パブリックスペース。「プレイスが豊かになれば、地域や都市は豊かになる(The Better Place, Better Area, City)」をモットーに、タクティカル・アーバニズムやプレイスメイキングなど、パブリックスペース活用の制度、社会実験、アクティビティ調査、プロセス、仕組みの研究・実践・人材育成・情報発信に携わる。

樋口 トモユキ  (ヒグチ トモユキ)  (編著

1972年愛知県生まれ。1997年早稲田大学大学院(理工学研究科建設工学専攻)修了。同年(株)日経BP入社、2004年より建築専門誌『日経アーキテクチュア』記者。2010年東大まちづくり大学院(工学系研究科都市工学専攻)修了。2015年~16年まちづくり会社ドラマチックにてディレクター。2017年ローカルメディア設立。
現在、同代表編集者、ソトノバ副編集長。地域を主体としたイベントの企画や盛り上げ、制作・編集に携わる。

西田 司  (ニシダ オサム)  (編著

1976年神奈川県生まれ。1999 年横浜国立大学(工学部建築学科)卒業後、同年スピードスタジオ設立。2002~07年東京都立大学大学院助手。2004年(株)オンデザインパートナーズ設立。現在、同事務所代表、東京大学、東京工業大学、東京理科大学、日本大学非常勤講師。
住宅・各種施設の建築設計や家具デザイン、まちづくりなどにて幅広く活動を展開。

上記内容は本書刊行時のものです。