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FASHION∞TEXTILE(ファッション・テキスタイル)
繊維産地への旅
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年7月
- 書店発売日
- 2017年7月15日
- 登録日
- 2017年4月18日
- 最終更新日
- 2024年5月27日
紹介
デザイナーと繊維産地のコラボレーションを照射し、ファッション産業が目指すべき姿を提案します。デザイナー・アパレルメーカーには「繊維産地・工場情報」、繊維メーカーには「デザイナーの意見・要望」、一般の方には「服づくりの背景」がわかる貴重な一冊。オールカラーでビジュアル豊富です。
目次
【PART1 これからの日本のファッション産業】
●巻頭インタビュー 大丸隆平/oomaru seisakusho2,inc・大丸製作所3代表
●CREATORS TOKYOの試み-産地コラボから見るファッション産業の未来
5-knot × カナーレ、LOKITHO×横貴繊維工業、meanswhile×ウエマツ、ユキヒーロープロレス×林キルティング、HELMAPH & RODITUS×カナーレ、MIDDLA×東播染工
●インタビュー 菅野将史/経済産業省 製造産業局、齋藤 統/神戸芸術工科大学・名古屋芸術大学・和洋女子大学
●ヴォイス・コラム ファッション産業の問題、目指すべき姿とは?
三原康裕/Maison MIHARA YASUHIRO、横山泰明/『WWDジャパン』、河野秀和/sitateru inc. 、リドヴィッジ・エデルコート/トレンドユニオン、鈴木淳/台東デザイナーズビレッジ、蘆田裕史/京都精華大学、奥田博伸/奥田染工場
【PART2 北陸の繊維産地をめぐる旅―10の糸商・工場探訪記】
福富、マイテックス、山崎麻織物工房、中嶋機業場、松井機業、白龍、ウーブンナック、二口製紐、小山カバーリング、太陽
【PART3 セコリギャラリー5年間の活動記録とこれから】
●TEXTILE JAPAN―メディアと問屋の融合
●産地の学校
●ODEN PROJECT-ファッション教育を考えよう!
●セコリギャラリー活動の軌跡 2012.06~2017.05
前書きなど
宮浦晋哉/糸編
この本は「ファッションデザイナーと繊維産地の協同」をテーマに、前半は「これからの日本のファッション産業」と題してプロジェクトやインタビュー、寄稿をまとめ、後半では北陸の繊維産地の工場を紹介しています。僕たちが携わる「糸編産業」の課題や可能性をまとめたものですが、この本を手にとっていただいた方への自己紹介も兼ねて、僕たちの活動について、そして、どうしていまの仕事を始めるようになったのかを簡単にご説明したいと思います。
僕は2012年にキュレーションプロジェクト「セコリギャラリー」を始め、同時に「ファッションキュレーター」を名乗り始めました。年間150~200社くらいの繊維の工場を訪問して、それぞれの工場や職人さんの特技や素材の特徴を理解して回り、それを自社のショールームに並べたりデザイナーに伝えたり、素材を一からつくるお手伝いもする仕事です。
もともと「全国の繊維工場を回りたい」という目的が先にあって、産地と東京を行き来して、貯金残高が尽きる前に自分の生業が少しずつ形成されて、いまに至っています。リサーチ、執筆、編集、出版、イベントや展示会の企画、媒体づくり、メディアの運営、場づくり、場の運営、素材・商品開発、プロジェクトマネージメントなど、さまざまなところに顔を出して旗を振りすぎて、“宮浦はいったい何をやっている人なのか? 何をしたいのか?”と怪しい存在になっているかもしれません。でも僕のなかでは目的はシンプルで、自分が感動した工場や職人さんの素材や技術とデザインをどんどん結びつけて、日本の素材で心が温かく踊る商品が生まれるサポートをしたい、というところです。さらに僕は、職人さんとデザイナーさんが協業してものをつくる「ゼロからイチ」が生まれるその瞬間を、一番近い距離で見つづけられるので、その情報を伝えることで、つくり手や使い手といった垣根を超えた、ある種の仲間が増えればいいなと思っています。
そもそもどうして繊維の工場に興味が湧いたかと遡ると、ひとつは大学時代に縫製工場で働かせてもらったこと。週2~3日で3年ほどお世話になり、職人さんの技術、工場に来る生地屋さんやパタンナーさんとの話にも興味を覚えました。もうひとつは、服飾大学に通っていた頃、ほとんど友達ができずにいつも図書館にいたのですが、当時読んでいた業界新聞では、一面を飾る華やかなファッションニュースの裏で、国内の繊維産地工場の廃業や倒産が日々報じられていました。工場の廃業のニュースに不思議な焦燥感を覚えながらも、一方工場が新しい技術開発の発表というニュースに胸が高鳴り、漠然と産地というワードにわくわくしていました。気がつくと、僕の図書館での毎日の注意はそこにいくようになっていました。
ファッションへの漠然とした憧れが自分のなかで少しずつ噛み砕かれていき、ファッションをつくる現場に興味が向いていきました。徐々に、入学当初に漠然と描いていた、「デザイナーとして服をつくりたい」とか「ファッションブランドで働きたい」という憧れはまったくなくなり、ファッションがもつ機能と人との接点を考えたり、産地を含めた、糸編産業全体にコミットすることに興味が湧いていたように思います。大学卒業後、幸いにも留学するチャンスをいただいて、日本を離れて考えを整える時期をもつことができました。
留学ではロンドンに渡りました。そこで、日本で生産されるテキスタイルが世界的に高い評価を受けていることを目の当たりにしました。ヨーロッパにいるファッション関係者にとって「日本といえばテキスタイルがすごい」という評価がスタンダードだったことに驚きました。日本の職人は高い技術をもっていて、良い素材をつくり、世界各国で支持されているのに、日本の産地は衰退している。これは大きな疑問であり、自分のなかで最大のテーマにもなりました。そして、八王子の「みやしん」さんの廃業のニュースが飛び込んできました。たくさんの方々がこの課題についてブログやSNSを更新していて、溢れる議論や情報を追い掛けたのを覚えています。いてもたってもいられずに、直接お話を聞いてみたいと元・みやしん(株)社長の宮本さんを訪ねました。「産地のことを知りたくて、将来何かしたいならその目で現場を見て回らないとね」との宮本さんの言葉に衝動を掻き立てられ、産地の工場を訪ね回り、職人さんたちに話を聞いていきました。そして自分が五感で感じた内容を自費出版で1冊目の本『Secori Book』にまとめることにしました。
本を書きながら、徐々に先に説明したような代行の仕事も頼まれるようになり、デザイナーと職人をつなぐことが、僕にできること、求められていることだという思いが強くなっていきました。各地で出会った素材を並べ、さらに地方で知り合った工場の職人さんたちが上京する際に、ふと寄っていただき、話を聞けるような場をつくることができれば、東京のデザイナーとも直接つなぐことができるかもしれない。そんな思いでつくったのが「セコリ荘」です。ファッション業界以外の方にも、日本のテキスタイルの魅力を伝えたくなって、もっと気軽にいろんな人に集まってもらえるよう、週末には「おでん屋」を開業することになりました。テキスタイルのショールームもアポイントなしで見てもらえるようになりました。僕にとっては「セコリ荘」というのは週刊誌のようなもので、週の前半に産地で出会った感動や物体を集めて共有する場となっています。テキスタイルを並べ、商品は販売して、僕自身がおでん屋のマスターとなり、週ごとに新しい情報を出して、そして人が人に出会えるオープンな場です。
前回の『Secori Book』の発行からずっと繊維工場のアーカイブをつくりたいと考えていて、記事の制作をつづけてきました。2015年に北陸産地のものづくりの窓口を目指す「セコリ荘金沢」がオープンしてから、北陸での取材記事が温まってきたのをきっかけに、4年越しに書籍としてまとめることになりました。書籍名は『FASHION∞TEXTILE(ファッション・テキスタイル)』です。日本の産地はもっとファッションとリンクしてほしいし、ファッションももっと日本の素材と共にクリエーションしてほしいという想いから、このタイトルとなりました。この書籍の出版の折、コミュニティスペース「セコリ荘」は一次閉幕となります。産地とデザイナーをつなぎ、日本の繊維・ファッション産業に貢献するために、僕たちは次に何をできるか、すべきか。この本をつくりながらも、いろいろな方にお話を聞きながら、今までの活動の先に僕たちがいまやるべきことがいっそう具体的に見えてきました。今後は、セコリギャラリーは「糸編」と名称を変え、より実践的な活動にこれから挑戦していきます。
いろいろな思いが詰まった本書をメンバー一同、情熱を込めて制作したので、是非受け取っていただけたら幸いです。
版元から一言
編著者の宮浦晋哉氏は、国内の繊維産地を回りながら、執筆、編集、出版、展示会企画、メディア運営、スペース運営、企画、素材・商品開発、産地の学校などに携わり、あだ名の「セコリ」からセコリギャラリー・セコリブック・セコリ荘・セコリチャンネル・座セコリ... など多数のプロジェクトを展開、多くのファンを獲得しています。
「日本の繊維産地を元気にする」という宮浦氏のライフワークの一環として本書は作成されました。デザイナー・アパレルメーカーには、なかなか共有されない「産地や工場の情報」が、工場職人にはデザイナーの意見・要望が、一般の方には服づくりの背景がわかる、貴重な一冊となっています。
上記内容は本書刊行時のものです。