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第一次世界大戦を考える
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2016年4月
- 書店発売日
- 2016年5月13日
- 登録日
- 2016年4月18日
- 最終更新日
- 2016年5月13日
紹介
「平和のための戦争」を大義名分にかかげ、毒ガス、戦闘機、戦車などの近代兵器とともに、足かけ4年におよぶ「総力戦」を繰りひろげた第一次世界大戦(1914-18)は、まさに「人類の終末」としての「現代のはじまり」を告げるものでした。
本書は48名の第一線の研究者による、第一次世界大戦を多面的に考えるためのアンソロジーにして、コンパクトな小百科です。付・略年表。
目次
はじめに(藤原辰史)
第1部:大戦を考えるための12のキーワード
[音楽]新世界の潮流(岡田暁生)
[食]人間の生存条件を攻撃する「糧食戦」(藤原辰史)
[徴兵制]人間の質より量を問題に(小関隆)
[書く]経験から発する言葉が「証言」に(久保昭博)
[ロシア革命]世界を変革した社会主義の「実験」(王寺賢太)
[技術]電信と電波で一つになる世界(瀬戸口明久)
[文明]非暴力で不服従を貫くガンディー(田辺明生)
[中国]国際社会に賭けた期待と失望(小野寺史郎)
[ナショナリズム]民族自決のうねりと新たな火種(野村真理)
[帝国主義]植民地再分割へ戦火拡大(平野千果子)
[アメリカ]「民主主義の戦争」の矛盾(中野耕太郎)
[民主主義]正解のない永続的追求課題(山室信一)
第2部:大戦の波紋
世界性・総体性・持続性(山室信一)
[美の振動]
大戦末期ウィーンの「歴史的演奏会」(伊東信宏)
二つのレクイエム(小関隆)
恤兵美術展覧会(高階絵里加)
人と馬(石田美紀)
映画史と第一次大戦 (小川佐和子)
カモフラージュとモダン・アート(河本真理)
古典主義と出会う前衛(久保昭博)
西洋音楽史の大きな切れ目(岡田暁生)
[刻まれた傷跡]
南仏の観光地フレジュス(平野千果子)
フランダースの赤いポピー(津田博司)
ソンムと英仏海峡のあいだ(堀内隆行)
ジャン・ノルトン・クリュ『証言者たち』(小黒昌文)
アルザスの傷(中本真生子)
戦争記念碑(北村陽子)
イスタンブールの英軍墓地(伊藤順二)
『銀の杯』(小関隆)
反戦の女(立木康介)
アメリカの総力戦と反戦(中野耕太郎)
戦間期を生きた哲学者の問い(田中祐理子)
私的な戦争体験と歴史の断絶(酒井朋子)
[地球規模の戦争]
オーストリア=ハンガリーの天津租界(大津留厚)
日本の文化財保護(高木博志)
東南アジアから(早瀬晋三)
日中の大戦認識の相違点と共通点(小野寺史郎)
異郷のインド人(石井美保)
紙の嵐(ヤン・シュミット)
日本人抑留者の手記(奈良岡聰智)
朝鮮の独立運動家、成楽馨(小野容照)
[欧州の深淵で]
国債と公共精神(坂本優一郎)
女が大戦を語るとき (林田敏子)
ナイチンゲールの天使イメージ(荒木映子)
社会的アウトサイダーとしてのドイツ自然療法運動(服部伸)
「西洋の没落」から「西洋の救済」へ(板橋拓己)
チェコスロヴァキア軍団(林忠行)
幻のウィルソン・シティー(福田宏)
二つの帝国崩壊と国籍問題(野村真理)
[遺産の重み]
セーブ・ザ・チルドレンの誕生(金澤周作)
アメリカ海軍の未来構想(布施将夫)
アトラントローパ!(遠藤乾)
ロシア十月革命の衝撃(王寺賢太)
国家イスラエルは「ユダヤ人国家」を名乗りうるか(向井直己)
グローカルなインド民族運動(田辺明生)
第3部:いま、大戦をどうとらえるか
開戦百周年の夏に(小関隆)
ベルギーの国際シンポジウムに参加して (藤原辰史)
誰が歴史を描くのか (鈴木健雄)
反時代的・同時代的考察(上尾真道)
経験の断絶(藤井俊之)
カピトリーノの丘で第一次大戦を想う(岡田暁生)
見えるものと見えないもの(森本淳生)
空腹と言葉 あとがきにかえて(藤原辰史)
第一次世界大戦 略年表
前書きなど
「ここに収められた文章群は、〔……〕史料で裏付けをとることが難しい点にまであえて踏み込んだもの、現代世界の自分の立ち位置を問い返すもの、芸術作品の細部から時代を逆照射しようとするもの、エッセイというスタイルを生かしつつ、それぞれが共同研究の議論を踏まえながらも各自の責任で自由な議論を試みている。その成否の判断はもちろん読者に委ねられている。
ただ、確認しておかなければならないのは、第一次世界大戦に関する考察は、決して一過性のものであってはならない、ということである。破壊能力を桁違いに増強した新兵器、子どもや女性など非戦闘員の殺戮、膨大な戦費を賄った金融システム、世界中にほぼ同時に戦争の情報を流したメディアのネットワーク……第一次世界大戦が産み落としたものはいまも健在で、しぶとく、長命で、しかも、増殖しつづけている。つぎに新しい研究が生まれてこなければ、私たちのプロジェクトの意味はほとんどなかったに等しい。執筆者の各々の文章に刻まれた格闘の痕跡から読者が新しい課題を拾っていただけるのであれば、本書の目的は達成されたといえるだろう。」――「はじめに」より
上記内容は本書刊行時のものです。