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家で生まれて家で死ぬ
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年11月
- 書店発売日
- 2017年12月25日
- 登録日
- 2017年12月21日
- 最終更新日
- 2017年12月21日
紹介
ゆたかな生と死は取り戻せるのか? 日本を代表する在宅医療の専門医と開業助産師、がん患者家族らが問う、少子高齢化社会への処方箋。
目次
はじめに
Ⅰ 家で生まれる、ということ 矢島床子
産む環境が大きく変わりました/感じるお産=フィーリング・バース
絶対に一人にしない/正気で赤ちゃんは産めません
寄り添うお産との出合い/自分がいとおしくなるお産
妻がいちばん美しく見えた/子どもたちとお産/おじいさんたちの涙
帰りたい場所/姉がおしえてくれたこと
Ⅱ 家で死ぬ、ということ 新田國夫
感動する死がある/病院と出産/生かす医療だけを追求
「病院で死にたくない」/病院医療への疑問/見ているだけでいい
生死を忘れる時代/病院のあり方も変わる/看取りはプロセス
家ってなんだろう?/どんなふうに死にたいですか?
家族で話し合う/死ににくい世の中/最期まで前向きに
最期まで豊かに
Ⅲ 地域で育つ、ということ 佐藤有里
野外教育に出合う/五人の自宅出産/赤ちゃんの生命力
あたり前の暮らしの中で/助産師さんの知恵/我が家の子育て
地域で育つ/保育者も保護者も一緒に/おじいちゃんのこと
義父と過ごした豊かな時間
Ⅳ 家で看取る、ということ 三砂ちづる
夫の打ち明け話/心の準備があった/二〇一三年、春の朝
ステージⅣ/けんちん汁と生ジュース/高額医療はしない
明確な方針のおかげで/話し合いと納得感/妻が決めること
延命とは?/さまざまなオプション/毎月の医療費
医療の進歩に感動/自筆でサインする/まだ外出するつもりでいた
医師の言葉/家族の時間/夫の隣で眠る/死に励まされる
Ⅴ ディスカッション
助産院がない/魚は水が見えない/一歩先の発想
ドイツ医療だった日本/一パーセントの奇跡/女性自身が知らない
女性の口コミが大事/超高齢化時代の医療
生きていてよかったと言える看取り/「主体的」に生きる
死に方がわからない/未来へ残すために
おわりに
前書きなど
はじめに 三砂ちづる
本書は二〇一六年一二月一一日、津田塾大学小平キャンパスで開催したシンポジ
ウム「家で生まれて、家で死ぬ」の記録に加筆修正したものです。シンポジウムの
きっかけは、この小平キャンパスのある東京都多摩地区に「家で生まれて、家で死ぬ」
という古くて、かつ、先進的な取り組みを進めてこられた、お二人がいらっしゃるこ
とでした。
矢島助産院の矢島床子さんは、国分寺で開業されている助産婦さんです。矢島助産
院での研修を経て、多摩地区のあちこちで開業する助産師の方がたくさんいらっしゃ
いますので、ここ多摩地区は、日本で一番、開業助産師の選択肢が多い地区になって
います。
矢島さんの活動はテレビや週刊誌でも紹介され、日本全国で知られています。日本を代表する開業助産婦のお一人です。
日本にいると、開業助産院というのは、どこにでもあると思われるかもしれません。
しかし、日本の開業助産院のようなところは、世界中を探しても、なかなかありませ
ん。嘱託の医師が必要ですが、問題ないケースであれば医師のいないところで、助産
師が自然なお産を介助することができる。そのような場所は、世界中でもほとんど見
当たらないのです。
助産師は医療介入ができません。開業助産院では、近代医療の確立前から、人間
がずっと続けてきたお産の姿をうかがい知ることができます。日本の助産院には、ア
フリカやラテンアメリカ、東南アジアなど世界中から研修に来られます。医療設備の
ないところで、こんなに安全に幸せなお産が行われていることに、みなさん目からう
ろこ、という感じで、非常に感銘を受けて帰られます。日本の開業助産院は、世界文
化遺産にしてもらいたい、と思うくらい、素晴らしいところです。
国立市で開業されている新田クリニックの新田國夫さんは、日本の訪問診療のさきがけのお一人です。国立市をベースにたくさんの方を家で看取ってこられました。
私の夫も、新田先生のおかげで家で看取ることができました。
家で死ぬということに関しては、今は日本中で話題になっています。しかしながら、
現実的には、まだ、なかなか難しい。その理由は、在宅での看取りに協力してくれる
医師、スタッフ、あるいはそうした施設がないから、ということになっています。国
立市には新田先生がおられますので、望めば、家で死ぬことが可能です。
「家で生まれて家で死ぬ」ということは、今の医療のシステムでは、もちろんマジョ
リティーがやっていることではありません。けれども、新しい動きとして発信してい
く時期に来ている、と言えないでしょうか。
シンポジウムでは右にご紹介したお二人のほかに、家で五人のお子さんを出産さ
れ、義理のお父さまを家で看取られた佐藤有里さん、それから夫を家で看取った私が
登壇し、最後にパネルディスカッションを行いました。
たいへん小さな試みですが、みなさまと一緒に考えていければと思っております。
版元から一言
生まれる場所、死ぬ場所は、その人の人生にどんな影響を与えるでしょうか?
いま「病院で最期を迎える」というイメージが、変化してきています。東京都の調査では約7割の人が、人生の最終段階で「自分のやりたいこと、生活を優先したい」と答えています。家で最期を迎えたいというニーズは、少なくないのです。
日本の開業助産院は、近代医療の確立前から人が続けてきたお産の姿を残す、世界的にも注目される場です。助産院出産の体験談からは、「出産とはよろこびである」ことがわかります。そこでのお産をつよく望む人が一定数います。
今後、さらに深刻な状況になる少子高齢化社会をより「人間的に」生きるために、「生まれる場所」と「死ぬ場所」の選択について、真剣に考えてみるきっかけに本書がなれば、幸いです。
上記内容は本書刊行時のものです。