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シンガポール戦跡ガイド
「昭南島」を知っていますか?
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2014年6月
- 書店発売日
- 2014年6月25日
- 登録日
- 2014年6月3日
- 最終更新日
- 2014年6月23日
紹介
280枚の写真とエッセイで描く「戦争の傷痕」!
大検証(粛清)下で、約5万人が殺害された日本軍占領下のシンガポール。その戦争と占領の傷痕を訪ねる。―アジア・太平洋戦争のもう一つの戦場、マレー・シンガポール、そこには今も、日本軍とイギリス軍・民衆との激しい戦争の跡が残る。戦争の足音が近づく中、今、改めて戦争を問うシリーズ。
目次
はじめに 2
■シンガポールの戦跡の歩き方 9
■地図 シンガポールの主要な戦跡地点 10
第1章 市街地中心部の戦争の傷痕を歩く 11
―――「昭南島」と呼ばれた時代を知っていますか?
●都市国家シンガポール――その歴史と現在 12
●英軍司令部バトル・ボックス 16
●抗日の英雄・林謀盛記念碑 21
●復活したインド国民軍記念碑 22
●第1次・第2次大戦の戦死者を記念するセノタフ 23
●憲兵隊東支部記念碑と日本軍宣伝工作本部記念碑 24
●占領と大検証を伝える国立博物館・口述歴史センター 27
●日本軍が降伏文書を受理したシティ・ホール 28
●日本軍戦犯裁判が開かれたヴィクトリア・メモリアル・ホール 29
●戦争記念公園に聳え立つ日本占領時期死難人民記念碑 30
●チャイナタウンの大検証(粛正)検問所記念碑 34
■地図 シンガポール市街地の主な戦跡 36
第2章 ジョホール・バル―シンガポール上陸戦の戦跡 37
●シンガポール上陸の攻撃拠点・ジョホール・バル 38
●サリンブン海岸上陸記念碑 42
●クランジ海岸の戦いの記念碑 45
●英軍の航空拠点テンガー・センバワン基地 47
第3章 激戦地ブキ・ティマに残る兵どもが夢の跡 49
●シンガポールの最も髙い山・ブキ・ティマ攻防戦の記念碑 50
●激戦地に残されたトーチカ――サイムロード・ピルボックス 53
●住宅街にひっそり佇むチャンセリー・レーンのトーチカ 56
●「昭南神社」が建てられていたブキ・バト記念碑 58
●英軍降伏の地・旧フォード工場記念館 60
第4章 日英軍の最後の激戦地パシル・パンジャン 65
●もう一つの激戦地、パシル・パンジャンの巨大トーチカ 66
●ブキ・チャンドゥ回想館 70
●日本軍を悩ませた堅固な要塞・ラブラドル砲台 73
●アレクサンドラ病院記念碑 84
第5章 無用の砦になってしまったセントーサ砲台 85
●シンガポール最大の要塞・シロソ砦 86
●砦の上で迎える巨大砲3門 90
●砲撃指揮塔と戦闘シーン 94
●日本軍艦艇を撃沈した6インチ砲 98
●展示室「シロソ砦の歴史の足跡」 102
●占領の間の展示 105
●「降伏の間」・将軍たちの蝋人形 106
●シロソ砦の地下トンネルと各種砲 110
●セントーサ島のビーチに佇むトーチカ 116
第6章 英軍最後の航空基地となったカラン・エアポート 123
●民間空港だったカラン飛行場 124
●空軍力を強化するシンガポール軍 130
第7章 捕虜たちが収容された英軍の要塞・チャンギ 133
●日本軍を悩ませたもう一つの要塞・チャンギ砲台群 134
●英軍の捕虜たちが収容されたチャンギ博物館 136
●美しい海岸の墓標――チャンギ・ビーチ記念碑 139
第8章 戦争で斃れた兵士たちの眠る記念碑 143
●英軍のクランジ戦争共同墓地1939―1945 144
●処刑された日本軍将兵たちを埋葬する日本人墓地公園 148
●からゆきさんたちの小さな墓標 152
第9章 解説 日本軍のマレー・シンガポール侵攻と占領 155
●アジア・太平洋戦争の開戦 156
●日本軍のマレー半島上陸作戦 158
●日本軍の奇襲成功と英軍の作戦 162
●英東方艦隊の壊滅と日本軍の制海権・制空権確保 164
●ジットラ攻防戦と銀輪部隊 166
●英軍のシンガポール防御態勢 170
●日本軍のシンガポール攻撃態勢 173
●英軍の降伏の結果 178
●シンガポール占領と軍政 180
●華人大検証(大虐殺)とは? 183
●シンガポール軍事法廷での処刑 192
前書きなど
ここ数年、いや十数年と言ってもいいが、韓国・中国政府と日本政府との間には、アジア・太平洋戦争についての歴史認識をめぐって鋭い対立が続いている。この対立は、「靖国参拝」などの問題だけでなく、日本政府が「従軍慰安婦」や強制連行などの被害者への戦後補償について、完全に放置した結果、繰り返し生じているものだ。
この韓中との間の歴史認識の対立については、厳しい外交問題になっているので日常的に報道されているが、シンガポールとのそれや戦後補償については、日本での報道はまったくないに等しい。
しかし、本書で述べるように、アジア・太平洋戦争下において日本軍の侵攻・占領下に置かれ、南京大虐殺に匹敵する住民虐殺(大検証・粛清)に遭ったシンガポールでは、この日本政府との「歴史認識問題」も厳として存在している。
シンガポール政府は、戦後50年にあたる1995年、国内の11カ所に、日本軍の戦争と占領の記念碑を構築、あるいは、この戦争の傷跡を残すために、戦跡を同国の文化遺産として登録している。そしていま、この戦跡の保存が一段と進められている。
こういう状況の中で不幸なのは、毎年100万人に近い日本の青年たちがシンガポールを訪れ、また、シンガポール在住の日本人も、およそ2万6千人を超えるほどの経済的繋がりがありながら、この国を訪れる(あるいは在住の)日本人たちが、かつて日本軍がこのシンガポールで何を行ったかをまったく知らないことだ。これでは、本当の意味での経済的・文化的交流が存在しないばかりか、真の友人にはなれないだろう。
本書は、このシンガポールに残されているアジア・太平洋戦争の戦跡について、同国の戦争記念碑を参考にしながら、筆者の調査・認識をも加えて整理・紹介したものである。
今までにも、シンガポールの戦跡については、いくつかのすぐれた書籍が刊行されている。しかし、同国での戦争記念碑は、たえず再発掘・再発見されるばかりか、現在もなお政府によって新しく建てられつつある。戦争の記憶を更新し、その礎の上に強固な平和を構築するという決意を感じる。
ところで、現在の日本では、戦後69年という長い歳月が経つにつれ、体験として戦争を知る世代が次第に失われつつある。それに伴って、戦争を賛美する「戦争を知らない政治家たち」が、国会を中心に増殖しつつある。
こういう時代状況の中で、シンガポールに残る数多くの戦跡―戦争の傷痕を訪ねることは、若い人々にとって貴重な体験となると思う。ぜひ、一度訪れていただきたい。
2014年6月1日
筆者
版元から一言
『サイパン&テニアン戦跡完全ガイド』『グアム戦跡完全ガイド』『本土決戦 戦跡ガイド(part1)―写真で見る戦争の真実』に続く、小社の戦跡ガイドシリーズ。戦争の足音が近づく中、今、改めて戦争を問うシリーズです。
上記内容は本書刊行時のものです。