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現代アジア華文微型小説の世界
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2023年7月28日
- 書店発売日
- 2023年7月31日
- 登録日
- 2023年7月11日
- 最終更新日
- 2023年8月21日
紹介
世界華文文学が伝えるアジアの諸相
変貌し続けるアジア─そこに暮らす人々の日々の哀感から社会問題までを生き生きと映し出す142篇。華文微型小説(ショート・ショート)を初めて紹介。
中国本土,台湾,香港,シンガポール,マレーシア,インドネシア……アジア各地で広く親しまれる華文微型小説。そこには華人及び華人移民社会の底層に潜む現実が活写されている。作品から人間心理や社会問題を読み解く著者の講義は大きな反響を呼んだ。地域ごとに作品群を紹介しその特徴を解説する。
目次
はじめに
第1部 概 論
中国現代文学における「微型小説」への視角
『世界華文女作家微型小説選集』に見る華人アイデンティティの表現
『世界中学生華文微型小説コンクール優秀作品選集』の編集目的と意義
第2部 地域別作品集についての研究[境内篇]
■大陸地区
中国現代微型小説の表現芸術と社会的意義についての研究:作品集『亮嫂』を中心として
作品集『廉政小小説』:その編集理念と作品表現の特徴
「幽黙(ユーモア)微型小説作品集」におけるユーモア芸術表現の特徴
作品集『小小説十五家』の作品における表現の時代的特徴
■台湾地区
『世界華文微型小説名家名作叢編』に見る台湾「極短篇」小説の時代と創作意識の特徴
■香港地区
『香港微型小説選』における創作の地域特性
第3部 地域別作品集についての研究[境外篇:東南アジア地域]【作品52篇】
■シンガポール
シンガポール現代華文微型小説創作への視角
現代華文微型小説に見るシンガポール社会問題の諸相
シンガポール現代華文微型小説の日本描写について
■マレーシア
現代マレーシア華文文学への視角
現代華文微型小説から見るマレーシア社会問題の諸相
■インドネシア
インドネシアにおける現代華文文学への視角
現代華文微型小説に見るインドネシア社会問題の諸相
第4部 関連研究【作品8篇】
「現代文学大系」の編纂から見る台湾社会の時代意識の変化
台湾社会における「探親文学」の創作意義と位置づけ
初出一覧/あとがき/収録作品目次
前書きなど
「はじめに」より
本書は、これまで筆者が続けてきた中国現代文学「微型小説」についての研究成果である。その対象は中国国内の作品に限らず、アジア地域の「華文微型小説」の作品を取り上げている。現在、華文微型小説の最大の市場といわれるアジア地域の作品を通して、現代華文微型小説の世界を周知することを願い、このタイトルを書名にとったのである。ここではまず「微型小説」が中国現代文学史上において、新しい創作ジャンルの一つとして認定された時代的意義について説明し、かつアジア地域の作品集を取り上げた理由と研究の特徴について述べよう。(略)
本書で取り上げた各微型小説の作品集は、それぞれの編集目的に合わせた集大成のものである。その地域は中国本土を始め、台湾、香港など主に中国語圏の地域のほか、東南アジアのシンガポール、マレーシア、インドネシアなど華人居住者が多いところまで広く展開されている。
作品集の作者には有名な作家たちも多く占めているが、多くは一般の兼業作家である。特に東南アジア地域に関して、このような傾向が濃厚である。その背景により、作品内容において、時にはある地域の巷の物語が目前に再現され、大都会の真中にあったストーリー、教育の現場、企業の職場、恋の悩み、普通の家庭と家族、多民族間の文化摩擦と葛藤などなど、社会の深層に様々な政治、歴史、宗教などの背景要素が見え隠れしている現実もあれば、庶民理念と習慣から実生活にもたらされた問題も含め、作者たちは多様な舞台で人生ドラマを描くのである。
微型小説の文体は精巧短小であるが、作者は自分たちの日常生活の視点と経験から、作品の構想や創作に励み、社会に対して問題提起をしているのである。また、ここから読者は作品を通して、その社会の実像と現地の人々の生活実態が理解できるのである。作品は、市井市民の日常生活の喜怒哀楽から、社会、国家に関わる問題まで、生き生きと描写されている。観光産業が発達している現代、旅行ツアーで見える限定された社会の虚飾性、包装された表面的印象が氾濫する中、作者たちが描写した走馬灯のような原画的風景の作品から、アジア各地の人びとの生活と心を理解していただき、汲みとっていただける手掛かりになればと考えている。
上記内容は本書刊行時のものです。