書店員向け情報 HELP
書店注文情報
在庫ステータス
取引情報
アーサー王伝説 - 19 世紀初期物語集成- 英文復刻版全7巻+別冊解説
The Morte Darthur: A Collection of Early-Nineteenth-Century Editions
完結
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年2月
- 書店発売日
- 2017年2月24日
- 登録日
- 2017年2月22日
- 最終更新日
- 2017年2月22日
紹介
■ 1816 年版と1817 年版の『アーサーの死』■ 不破有理
Sir Thomas Malory のテキスト刊行の歴史は改変の歴史といってよい。改変とは写本から活字への段階における読み違いを含めた誤り、William Caxton をその嚆矢として出版・編集人のテキストへの介在、また活字から活字への段階におけるミスプリントのレベルから、編集者の宗教上道徳上の理由から行う意図的な改変にいたるまで、種々諸々の差異がテキスト間には存在する。1816 年に二社から刊行されたWalker 版とR.Wilks 版および1817 年のSouthey 版は現在、ほとんど入手不可能な上、仮にまれに古書市場に登場しても法外な値段がつく。また当時の書籍に含まれていた口絵や広告文などは多くの所有者の手を経る過程で、装丁の際に喪失してしまう場合がほとんどである。今回の復刻シリーズでは原テキストに含まれていた資料を可能な限りすべて復刻するという、きわめて贅沢かつ資料性の高い企画である。出版当時の口絵、読者への広告文など、一般読者への出版事業が本格化する19 世紀の出版の歴史や読者論的な観点からもきわめて貴重な資料になることは疑いいれない。19 世紀の中世復興およびアーサー王伝説に復活の息吹を吹き込んだマロリーのテキスト3 種類をぜひ堪能していただきたいと願っている。
目次
Vol. 1-2:(c.1,010 pp.)[1816 年ポケット版①]*原本を約140%拡大 B6変形にて復刻。
THE HISTORY OF THE RENOWNED PRINCE ARTHUR, KING OF BRITAIN; WITH HIS LIFE AND DEATH, AND ALL HIS GLORIOUS BATTLES. Likewise, the NOBLE ACTS AND HEROIC DEEDS OF HIS VALIANT KNIGHTS OF THE ROUND TABLE. IN TWO VOLUMES.
LONDON: Printed for Walker and Edwards; J.Richardson; F.C. and J. Rivington; J. Nunn; Law and Whittaker; Newman and Co.; Lackington and Co.; Longman, Hurst, Rees,Orme,and Brown; Cadell and Davies; Black and Co.; Sherwood,Neely, and Jones; R.Scholey; Baldwin, Cradock, and Joy; Gale and Fenner; J. Asperne; J. Robinson; and B. Reynolds. 1816.
● 1634 年のWilliam Stansby 版以来、約200 年ぶりに出版されたMalory の2 巻本
Vol. 3-5(c.1,200 pp.)[1816 年ポケット版②] *原本を約140%拡大 B6変形判にて復刻。
LA MORT D’ARTHUR. The most ancient and famous History of the renowned Prince Arthur and the KNIGHTS of the ROUND TABLE. By Sir Thos Malory, Knt.
London. Printed & Published by R. Wilks, 89, Chancery Lane; Sold also by Simpkin & Marshall, Stationers Court, Ludgate Hill; and all other Booksellers: 1816.
●先の二巻本に一歩出版の遅れをとった三巻本。ライバル版を意識して急遽、挿入されたと思われる「比較広告文」も今回のシリーズでは復刻される。
Vol. 6-7:(c.995 pp.)[1817 年大型版](原寸 B5 判変形)
THE BYRTH, LYF, AND ACTES OF KYNG ARTHUR; OF HIS NOBLE KNYGHTES OF THE ROUNDE TABLE, THEYR MERVEYLLOUS ENQUESTES AND ADUENTURES, Thachyeuyng of the Sanc Greal; AND IN THE END LE MORTE DARTHUR, WITH THE DOLOUROUS DETH AND DEPARTYNG OUT OF THYS WORLDE OF THEM AL. WITH AN INTRODUCTION AND NOTES, BY ROBERT SOUTHEY, ESQ.
LONDON: Printed from Caxton’s Edition, 1485, FOR LONGMAN, HURST, REES, ORME, AND BROWN, PATERNOSTER-ROW. BY THOMAS DAVISON, WHITEFRIARS. 1817.
● 1816 年の両版が1634 年のStansby 版を底本としたのに対して、本版は1485 年のWilliam Caxton 版をテキストとした初めての版。
前書きなど
■監修者のことば■ 髙宮利行
『よみがえる中世』と題したこのシリーズは、18 世紀から19 世紀にかけてイギリスで出版された中世ロマンス/バラッド集の復刻を通じて、この時代に姿をあらわし発展した「中世主義」の諸相を示すことを目的としている。ロマン主義時代・ヴィクトリア朝期文化を学ぶ者には同時代の思想的文献として、中世イギリス文学の研究者にはその立脚点を考えるための歴史的文献としてお薦めしたい。この時代、中世の「発見」こそ新たな文学思潮のまさに動因であったことはよく知られているし、文人・知識人たちが中世文学とりわけロマンスとバラッドの題材・形式・概念からどれほどのものを借りたかなど、あらためて述べるまでもないだろう。
いっぽう、中世イギリス文学研究どころか、イギリス文学研究という学問分野すら存在していなかった時代に、その道を志した人々が研究対象と自らの実践とをいかにして社会に受け入れさせたか、これを詳細にたどることなしには、中世イギリス文学およびその研究の現代における意義を捉え、これからの行く先を見定めることはできない。だが、18 世紀の巨頭たるトマス・パーシーやトマス・ウォートンの諸作品こそ既にラウトリッジ/テムズ社などから復刻されているものの、他の、とくに次世代の重要文献の多くは、入手がまだまだ困難であるのが現状である。本シリーズではこうした作品を厳選して読者にお届けし、より十全な研究環境を提供したいと願っている。
版元から一言
*18世紀の啓蒙時代に忘れ去られていた中世主義が19世紀初頭に復興する契機ともなった、アーサー王伝説の再刊3書物のリプリント。
*19世紀ロマン主義からラファエル前派など19世紀末のの文学・思想家も実際に手にした、最も重要な3種の版をコレクション。
*英国・フランス中世文学だけでなく、キーツ、ワーズワース、テニソンなどのロマン派、ウィリアム・モリス、ロセッティ、バーン・ジョーンズからワイルドなど19世紀英文学研究にも必携。
*同時に、指輪物語からハリーポッターへと続く物語文学の起点として、アーサー王伝説は児童文学、ファンタジー文学研究にとっても重要なテーマ。
*100ページを超える詳細な書誌解題(不破有理著 英文・和文)付き。
上記内容は本書刊行時のものです。