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現代の貧困と最低生活の岩盤を求めて
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2019年9月1日
- 書店発売日
- 2019年10月15日
- 登録日
- 2019年12月2日
- 最終更新日
- 2020年1月20日
紹介
貧困の基準としての「最低生活」とは何か、最低生活保障はなぜ必要なのか、戦後の社会保障制度の確立とその後の変質を示すこと、これらの課題に応え更には、現代の私たちの国民生活にどのような影響を与えているのかを明らかにする。
そして家計調査などを用いて分析した「生活崩壊の連鎖の構造」を断ち切るために、「最低生活の岩盤」を形成することが必要であり、そのための戦後の最低生活費の算定に関する考え方を時代を追って分析する。
目次
はじめに
第1章 貧困概念の拡大とナショナル・ミニマム論の展開
第1節 貧困概念の拡大と「潜在能力」アプローチ
第2節 最低生活保障(ナショナル・ミニマム)論の展開
第2章 社会保障制度の成立とその変質
第1節 貧困の客観的原因の発見
第2節 『ベヴァリッジ報告』と社会保障の体系化
第3節 戦後、社会保障制度の変質
第3章 現代の貧困の特徴とその現れ方
第1節 現代の貧困の特徴と国民の「生活崩壊」の連鎖の構造
第2節 現代の貧困の現れ方
第4章 現代の国民生活の特徴―国民の「生活崩壊」の連鎖の構造
第1節 世帯属性の変化
第2節 勤労者家計=生活の「現代的・資本主義的社会化」の進展
まとめにかえて―国民の「生活崩壊」の連鎖の構造
第5章 最低生活の岩盤を求めて―戦後、最低生活費の算定方法の研究
はじめに
第1節 第Ⅰ期―戦後混乱期の貧困からの脱却を求めて
第2節 第Ⅱ期―オイルショック後の狂乱物価による混乱期からの脱却を求めて
第3節 第Ⅲ期―1995年以降の新自由主義=「構造改革」の下での格差・貧困の広がりからの脱却を求めて
前書きなど
この本を核に当たり、いくつかの課題があった。その第1の課題は、貧困の基準である「最低生活」とは何かということである。それは、ラウントリーの「絶対的貧困論」からタウンゼントの相対的略奪として展開される「相対的貧困論」、そしてアマルティア・センの「潜在能力アプローチ」に至る議論の分析である。
第2の課題は、最低生活保障はなぜ必要なのかということである。言うまでもなく、それは、貧困を撲滅するためであるが、それは社会の基礎構造(憲法・法制度、経済制度)の中にどのように位置づけるべきものであるかという問題である。それは、貧困の対極にある「自由の原理」(後述のロールズは次のような自由を挙げている。すなわち、それは言論及び集会の自由、良心の自由、思想信条の自由、人身の自由―心身の抑制及び身体への暴力・損傷からの自由―、個人的財産を保有する自由、恣意的な逮捕や押収からの自由、政治的自由―投票権や公職就任権である。)を保障するための条件ではないかという点が、本書では強調されている。その自由というのは、貧困から解放されるという「消極的な自由」だけでなく、それによって、個々人の価値観に基づいた長期的人生設計という将来の見通し・予期が達成できるという「積極的な自由」であるだろうと考えている。こうした多様な価値観を達成できるために、最低限の生活保障は欠かせないということである。
版元から一言
長年の研究成果を書籍にしていただきました。貧困といってもさまざまにとらえることができるものを、最低生活費の算定方法を示すことで、明らかな貧困のラインが見えます。そのことにより、最低生活の岩盤が何かを示すこともできます。どうぞ手に取ってご覧ください。
上記内容は本書刊行時のものです。