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人生にとってほんとうに大切なことを教えてくれた10のライフ・レッスン ケント・ナガノ(著) - アルテスパブリッシング
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人生にとってほんとうに大切なことを教えてくれた10のライフ・レッスン (ジンセイニトッテホントウニタイセツナコトヲオシエテクレタジュウノライフレッスン)
原書: 10 Lessons of my Life: Was wirklich zählt

芸術
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四六判
272ページ
並製
定価 2,800 円+税   3,080 円(税込)
ISBN
978-4-86559-330-3   COPY
ISBN 13
9784865593303   COPY
ISBN 10h
4-86559-330-6   COPY
ISBN 10
4865593306   COPY
出版者記号
86559   COPY
Cコード
C1073  
1:教養 0:単行本 73:音楽・舞踊
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2026年4月30日
書店発売日
登録日
2026年3月25日
最終更新日
2026年4月9日
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紹介

真の成功とは、他者の人生にシュプールを残すこと──
世界的マエストロが、10人との出会いを振り返り、
自己形成の歩みを語る初のエッセイ!

サラ・コールドウェル(指揮者)=謙虚さ
レナード・バーンスタイン(指揮者、作曲家)=疑問をもつこと
フランク・ザッパ(ロック・ミュージシャン)=真正性
ピエール・ブーレーズ(作曲家、指揮者)=作曲家はどう理解されたいのか
ビョーク(ミュージシャン)=偶然を真剣に受けとめること
アルフレート・ブレンデル(ピアニスト)=周囲に惑わされない波長の長さ

日系3世の世界的指揮者ケント・ナガノが半生を振り返り、自己確立や芸術的成長、キャリア形成を決定づけた10人の傑物との出会いと交流をつづる。

個性あふれる人物たちの素顔が生き生きと描かれ、芸術と人生との深遠なかかわりが浮かびあがる傑作エッセイ。

「バーンスタインの疑問は、具体的にどちらの音かということではない。疑問をもつのをやめるとか、状況について自問しなくなったとき──つまり、最終的な答えを得たと思い込み、現状に満足するときが来たら、演奏をやめるべきだということ。芸術には最終的、あるいは決定的な知識のための余地はない。音楽では、疑問点や謎についてあらたな解答を探しつづけるということ。あのときのレッスンの意味は、それに気づくことにあった。人生にもやはり、答えをなんどでもあらたに探すべき疑問がある。」(「lesson 2|レナード・バーンスタイン」より)

日本語版のための書き下ろし「ふたつの世界」を収録。

2027年5月、NHK交響楽団定期公演に来演決定!

目次

プロローグ
lesson 1 サラ・コールドウェル
lesson 2 レナード・バーンスタイン
lesson 3 フランク・ザッパ
lesson 4 イヴォンヌ・ロリオ
lesson 5 ピエール・ブーレーズ
lesson 6 ジャン゠ピエール・ブロスマン
lesson 7 ビョーク
lesson 8 リヒャルト・トリムボーン
lesson 9 アルフレート・ブレンデル
lesson 10 ドナルド・アーサー・グレイザー
ふたつの世界──エピローグ
訳者あとがき

前書きなど

プロローグ

 いまから少し前、ベルリンにあるアメリカン・アカデミー主催の夜のイヴェントにゲストとして招待された。オーケストラとの共演があってベルリンに滞在していたときのことだ。アメリカ人の私がトークイヴェントのゲストとしてヴァン湖畔に招かれるのは光栄なことだ。アメリカン・アカデミーは、当時の在ベルリン米国大使、故リチャード・ホルブルックの提唱で一九九四年に設立された。米独間の科学・文化交流を目的とする、ベルリン西端のヴァンゼー地区にある民間機関だ。
 この日、アメリカン・アカデミーの白いヴィラでなにが待っているのか──司会者の質問に答えるということ以外、私はよく知らなかった。会場は満席。チケットは発売後いくらもしないうちに売り切れたという。つまり、イヴェントの娯楽性への期待がひじょうに高いのだろう。ひとつだけ前もっていわれたのは、音楽について話してはいけないという明白な指示だ。音楽の世界は私にとってもっとも安心感があるので、できるなら音楽について語りたかったけれども。
 テーマは、私の指揮者としてのキャリア。過去にあったいくつかの状況を描写しながら、その期間が私の人生にどんな意味をもったかという微妙な質問に答えてほしいという。私のキャリアのファーストステップは、オペラ・カンパニー・オヴ・ボストンにおけるアシスタント。その後、ロサンゼルス・オペラ、リヨン国立オペラ、バイエルン国立歌劇場(ミュンヘン)、ベルリン・ドイツ交響楽団首席指揮者時代、さらにモントリオールやハンブルク時代について。それぞれの状況で、今後のステップのためになにを得たか、というのがインタヴューの趣旨だ。つまり、経験からなにを学んだか、ということらしい。
 このようなイヴェントで困難なのは、何年にもわたる経験を数分間に要約しなければならないこと。ミュージシャンとしての人生や、音楽と隣り合わせの生活は、さまざまなできごとの影響を受けてきた。そうしたことを語りながら、本題からそれて詳細を描写することもある。深刻な話あり、楽しい話あり、だ。さいわいなことにお客さんは好意的で、意図したとおり楽しんでもらえたようだ。じっさい、とてもいい雰囲気だった。
 イヴェントは滞りなくスムーズに進行した。それでも、長いこと余韻として胸中に残り、ホテルに向かいながら早くもそのことを考えていた。インタヴューではうまく話せたと思う。人生の各段階における大小さまざまな冒険よりはるかに大きな意味をおびたエピソードたち。これらを描写するのにあたえられたのはほんの数分だが、じっさいには、こうした出会いは私の人生にもっと深い影響をおよぼした。
 その後数日から数週間にわたって、これまでの人生における出会い、強い印象を受けた人々のことをなんどとなく思い出した。彼らの行動、言葉、質問、議論、模範的な態度は、私の人生に重要な意味をあたえた。おそらく彼ら自身も気づかずに──私の考え方を変えた。共通点は、学習がメインテーマだったこと。学校の授業やセミナー、大学の講義を超越した、学習。
 だが、人生への教訓をあたえてくれる人物との出会いには、偶然が大きく作用するのではないだろうか。また、自分がメッセージを受け入れる状態にあるまさにその瞬間に相手と出会うには、幸運も必要かもしれない。意識的に受け入れるにしても、無意識に受け取るにしても。もとになるできごとから、その意味を認識するまでに時差があるかもしれないし、ある出会いやイヴェントの重要性が、何年もたってからやっと意識に反映されるケースもある。こうしたことがよくあるのは、私だけではあるまい。つまり、個人的な出会いが人生の教訓へと成熟する──しかも、プラスに作用するには、いくつかの偶然性が必要となる。
 われわれは、社会的背景のなかでものごとを学ぶ。もちろん私も同じで、最初は両親やきょうだいから、次に、子どもたちにとって絶大な影響力をもつ学校の先生から。クラスメイトやスクールメイト、大学では教授や講師から。親になれば、子どもたちから学ぶ。子ども自身や最新テクノロジーの動向にかんすることだけではない。子どもたちとの会話や衝突をとおして自分自身について知ることだってある。仕事仲間であるオーケストラのメンバー、エネルギーと意気込みに満ちた若いミュージシャンたち、自分の考えを伝えたいという彼らの熱意から、いまもなお得るものがかぎりなくたくさんある。
 なにかを学ぶために、人々との出会いがいかに重要か──というあたりまえのような認識に、いまでも驚かされることがある。若いころは、指揮者として生活していくための知識を身につけなければ、と考えていた。あの年齢にありがちな自己過大評価のためだ。現在の私はこう考える。たんに知識を獲得するためなら指導者はいらないとしても、人々との出会いがなければ、そうした知識から判断力や人生への姿勢が形成されることはない。そして、両方の思考が合わさることで、個人の価値観のベースとなる。
 統合性や真実性は、どのようにして学べるか? もちろん本やインターネットからではない。また、謙虚さの意味を深く理解するにはどうしたらいい? 必要最小限の率直さをいつももちつづけるには? 自制心をどう把握したらいい? 偶然を受け入れるのがだいじだと知るには? あきらめることは成功のカギのひとつだと、どうすれば信じられる?──“ネヴァー・ギブ・アップ”の教えに完全に反するというのに。こうしたことは、人々との出会いが伝えてくれる。
 ヴァンゼー地区でのイヴェントが終わってしばらくしてから、回想のなかで“ライフ・レッスン”と名づけた一〇の出会いについて執筆することに決めた。今回は、両親や小学校の音楽教師の影響を大きく受けた子ども時代・少年時代についてではない。これについては、私の最初の著書♥[訳注:インゲ・クレプファーとの共著になる自伝的著作Erwarten Sie Wunder!―Expect the Unexpected(Berlin Verlag, 2014)のこと]で取り上げている。また、日常的なシーンのなかの重大な経験についてでもない。本書でテーマとなるのは人々だ。私を驚かせ、感嘆させ、いまもなお感嘆させつづける人々。なにかしらの教訓をもたらしてくれた人々。それはいまもなお──ミュージシャンという職業を超えたところでも──役立っている。
 サラ・コールドウェルからは謙虚さを、レナード・バーンスタインからは疑問を抱くこと、フランク・ザッパからは真正性を学んだ。イヴォンヌ・ロリオ゠メシアンからは絶対的な精密さが可能にする美と自由、リヒャルト・トリムボーンからは真実の探索。ピエール・ブーレーズは、作曲家が理解されたいと願い、どのようにしてアイディアを伝えるかを示してくれた。ドナルド・グレイザーはあきらめ方のコツを。彼らはもはやこの世の人ではないが、言葉によってもういちどよみがえらせたい。私の記憶のなかでずっと生きつづけてきたように。
 アイスランド人ミュージシャンのビョークとのプロジェクトをとおして、偶然性を真剣に受け止めるのは有用だと理解し、それいらいそうしている。彼女はそのことを知らないけれども。ピアニストのアルフレート・ブレンデルもだ。私は彼の波長の長さから、いらだちを抑制することを学んだほか、音楽は自発性や感情や情熱をはるかに超えるものだと知った。ジャン゠ピエール・ブロスマンからは数多くの認識を得たが、きわめて相反する価値をもつ芸術とお金の関係が、彼のおかげで明らかになり、多くのことを政治的に解決できるとはじめて理解した。
 お金と名声にかんする成功は表面的にしか定義できない。真の成功とは、生存中に周囲の人々にシュプールを残すことではないだろうか。この観点からいえば、本書のために選んだのはほんの一部の人々にすぎない。

ハンブルクにて 二〇二一年八月

著者プロフィール

ケント・ナガノ  (ケント ナガノ)  (

ケント・ナガノ:
1951年米カリフォルニア州バークリーに生まれ、モロ・ベイに育つ。カリフォルニア大学サンタクルーズ校、サンフランシスコ州立大学で社会学・法学を専攻するかたわら作曲を学ぶ。
オペラ・カンパニー・オブ・ボストンでサラ・コールドウェルの助手をつとめたのち、1978年バークリー交響楽団の音楽監督(2006年より首席客演指揮者)に就任し28年にわたり率いるかたわら、ハレ管弦楽団、リヨン国立オペラ、ベルリン・ドイツ交響楽団の首席指揮者や音楽監督、芸術監督をつとめる。1983年メシアンのオペラ《アッシジの聖フランチェスコ》初演にあたり、作曲者本人の指名で小澤征爾のアシスタントをつとめ、後任の指揮者に抜擢。2006年よりモントリオール交響楽団およびバイエルン国立歌劇場の音楽監督、2013年エーテボリ交響楽団首席客演指揮者兼芸術顧問。2015年からはハンブルク州立歌劇場とハンブルク・フィルハーモニカーの音楽総監督を歴任。2026 年9月よりスペイン国立管弦楽団の主席指揮者兼音楽監督に就任する。日本政府より2008年に旭日小綬章、2025年には旭日中綬章を受章。
著書にErwarten Sie Wunder!: Expect the Unexpected(インゲ・クレプファーとの共著、Berlin Verlag, 2014)がある。
妻はピアニストの児玉麻里、娘はピアニスト、建築士のカリン・ケイ・ナガノ。

インゲ・クレプファー  (インゲ クレプファー)  (

インゲ・クレプファー:
1964年生まれ。ボン大学で日本学・中国学を学び、国立台湾師範大学留学をへて、ミュンヘンで経済学を修了。1992年に『フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング』紙経済部に入り、金融政策や金融市場、大手銀行を取材したのち、同紙日曜版のベルリン特派員として活動。現在はフリーのジャーナリスト・作家として執筆を続ける。フリーデ・シュプリンガーの評伝で「年間最優秀経済ジャーナリスト賞」を受賞。ケント・ナガノとは本書のほか彼の自伝Erwarten Sie Wunder!(Berlin Verlag, 2014)を共同執筆。その他モーツァルト関連書など著書多数。近年は映画監督としても活動し、ケント・ナガノのドキュメンタリー映画のほか経済・原発問題を扱った作品で評価されている。

シドラ房子  (シドラ フサコ)  (

シドラ房子:
新潟県生まれ。武蔵野音楽大学器楽科卒業。翻訳技術をフェロー・アカデミーで習得。
翻訳家・音楽家。
レオ・マルティン著『心に入り込む技術』『心を見透かす技術』、クリスティアン・ガンシュ著『オーケストラ・モデル』(以上阪急コミュニケーションズ刊)、ベルトラン・ピカール著『空の軌跡』(小学館刊)、マデレーン・ベーメ著『ドナウ川の類人猿』(青土社)など訳書多数。
アルプホルン奏者リザ・シュトルと定期的にコンサートをおこなうほか、フルーティスト、パンフルーティストとして教会行事や各種イヴェントで民俗音楽を中心に演奏活動をしている。

上記内容は本書刊行時のものです。