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マルグリット・ロン
近代フランス音楽を創ったピアニスト
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2023年1月31日
- 書店発売日
- 2023年1月25日
- 登録日
- 2022年12月18日
- 最終更新日
- 2023年1月30日
紹介
フォーレ、ドビュッシー、ラヴェル。
「伝説」が「歴史」へと変容するとき、そこにはいつも彼女がいた──
演奏家が音楽史の形成に積極的役割を演ずる姿を描きだす!
フォーレ、ドビュッシー、ラヴェルはいつから「近代フランス音楽の三大巨匠」とよばれるようになったのか──。
彼らの名声の背景にはひとりの女性ピアニストがいた。マルグリット・ロン(1874–1966)である。
ロン゠ティボー国際コンクールの創設者のひとりとしても名を残すロンは、三大巨匠の伝承の語り部を任じ、「作曲家への忠実」をモットーに、著書・講演・演奏活動をとおして、彼らの音楽が「フランス音楽の正典(カノン)」としての地位を確立することに貢献した。
演奏家が音楽史の形成に果たす積極的役割をあざやかに剔出した画期的研究!
目次
はしがき(読者の皆さまへ)
序
本書の目的と研究対象/先行研究と資料・研究方法/本書の構成
第一部 カノンとしての〈フォーレ・ドビュッシー・ラヴェル〉
第一章 近代フランス音楽と「三大巨匠」
1.黄金期としての「近代」
2.三位一体のカノン
第二章 マルグリット・ロンと「三大巨匠」
1.「選ばれた」演奏家
2.『……とピアノのもとで』
3.疑惑
第二部 演奏家と作曲家
第三章 フォーレ「以前」
1.マルグリット・ロンと「良い指」
2.「現代」音楽との出会い
第四章 ガブリエル・フォーレとともに
1.発端
2.パリ音楽院にて ①斡旋と就職
3.「フォーレのピアニスト」として
4.パリ音楽院にて ②破局と妨害
第五章 クロード・ドビュッシーとともに
1.短くて「長い」勉強
2.「フォーレのピアニスト」から「ドビュッシーのピアニスト」へ
3.二人の未亡人
4.《ピアノと管弦楽のための幻想曲》
第六章 モーリス・ラヴェルとともに
1.《協奏曲》以前
2.ヴィルトゥオーゾの夢──《ピアノ協奏曲ト長調》
3.外交と宣伝活動
4.「商品」としての自作自演
5.「私の」《協奏曲》
第三部 「三大巨匠」の成立
第七章 パリ音楽院ピアノ科におけるフォーレ、ドビュッシー、ラヴェル
1.ピアノ予備科教員時代(一九〇六-一九一九)のロン
2.ピアノ高等科教授就任(一九二〇)
3.学内試験演奏曲目に見るフォーレ、ドビュッシー、ラヴェル
第八章 パリ音楽院外におけるロンの教育文化活動
1.エコール・ロンと公開演奏講座
2.エコール・ノルマル音楽院での演奏講座(一九二一)
3.「ヴィルトゥオジテと解釈の講座」(一九二五-一九三一)
4.フランス音楽大使マルグリット・ロン
5.「三大巨匠」表象の完成
6.「三大巨匠」の展示計画
7.回想の言説
8.「三大巨匠」とフランス的なるもの
第四部 伝統と忠実
第九章 「忠実さ」の論理
第一〇章 様式とテクニック
第一一章 「フォーレの伝統」
1.フォーレの息子による「伝統」批判
2.《即興曲第二番》の楽曲構成
3.「急がずに」
4.作曲者による抵抗?
5.演奏テンポの変化
6.「アレグレット」の美学
第一二章 「伝統」とマニエリスム
結び
あとがき
マルグリット・ロン関連文献ガイド
参考文献表
註
資料
索引
前書きなど
はしがき(読者の皆さまへ)
「フランス音楽」といったときに真っ先に思い浮かぶのは、どのような音楽家の名前だろうか。サン=サーンス、フォーレ、ドビュッシー、ラヴェル、サティ、ミヨー、プーランク……綺羅星のような作曲家たちの生きた「近代」と呼ばれる時代は、フランス音楽の長い歴史の中でも特別な輝きを帯びているように思われる。
本書の主人公は、この近代フランス音楽に「人生を捧げた」と語ったマルグリット・ロンというピアニストである。フランス・ピアノ界の重鎮として、またパリのロン= ティボー国際音楽コンクールの設立者としてその名を知られたロンは、ラヴェルの《クープランの墓》や《ピアノ協奏曲ト長調》をはじめとする同時代のフランス音楽の初演や普及にも大いに尽力した人物であった。
本書は一見ロンの伝記のような体裁をとっている部分があるが、記述の焦点は彼女が特に重要性を見出していた〈フォーレ・ドビュッシー・ラヴェル〉という三作曲家との関係性に置かれており、四つの部はそれを異なる角度から照らし出すものとなっている。本書の根底にある問題意識と学問的な背景、資料、研究方法等については序で述べておいた。研究に携わる方や演奏の問題に関心のある方にはぜひ序からお読みいただきたいが、取り急ぎフランス音楽に関する具体的な話にのみ目を通したいという方は第一部から読み始めていただいてもかまわない。
著者
上記内容は本書刊行時のものです。