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わが友、シューベルト 堀 朋平(著) - アルテスパブリッシング
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わが友、シューベルト (ワガトモ シューベルト)

芸術
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A5変形判
縦210mm 横138mm
648ページ
上製
定価 6,000円+税
ISBN
978-4-86559-263-4   COPY
ISBN 13
9784865592634   COPY
ISBN 10h
4-86559-263-6   COPY
ISBN 10
4865592636   COPY
出版者記号
86559   COPY
Cコード
C1073  
1:教養 0:単行本 73:音楽・舞踊
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2023年2月25日
書店発売日
登録日
2023年1月19日
最終更新日
2023年3月9日
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書評掲載情報

2023-05-07 読売新聞  朝刊
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紹介

狂騒、神、愛(エロス)、成熟──
聴くものすべてを包みこむあの“親しさ”はどこから来るのか。

近年めざましい進展をみせるシューベルト研究。
その中心人物による記念碑的労作が誕生!

19世紀初頭──動乱の予感をはらむ凪(なぎ)の時代を、誰よりも疾(はや)く駈けぬけた作曲家の実像に肉迫する。

「幸薄い早世の作曲家」という従来のイメージを覆し、「自らの欲求に衝き動かされ、めまいのするような愛に満たされて生きた人」として、いまだかつてないシューベルト像を提示。

シューベルトの生きた時代を追体験し、その無意識の領域にまでせまるべく、手を伸ばした情報の幅広さと密度はまさに圧倒的。
数多くのカラー図版を掲げながら、従来にない解像度で描きだす作曲家の実像は、まさに「わが友」というべき親密さに到達している。

伊藤亜紗氏、河村尚子氏、山田和樹氏、推薦!

伊藤亜紗氏(美学者)
 喜劇的なのに厳密
 批評的なのに猥雑
 伝記的なのに哲学
 砂ぼこりも匂いも味もする
 圧巻の歴史音楽絵巻!

河村尚子氏(ピアニスト)
 推理小説のようにスラスラ読める──
 絵画・文学・哲学などから
 人物像と背景を次々に解き明かす。
 この一冊であなたの
 シューベルト解釈がきっと変わる!

山田和樹氏(指揮者)
 これほどまでにシューベルト愛に
 あふれた人がかつていただろうか。
 人間味たっぷりな作曲家の魅力に
 ぐっと近づける一冊!

目次

 はじめに──音楽のむこう

序章 宇宙

 第1節 19世紀ウィーンの遊戯
  変転する無限
  室内で世界を
  複数世界

 第2節 一幅の絵に宇宙を
  音楽の星団
  ナンセンスと狂気
  親友の画家

第Ⅰ章 狂騒

 第1節 サークル活動
  日常の顔
  シューベルトと四つのクラブ

 第2節 作曲家の痕跡をたどって
  際限なきフィクション
  船
  ツィンバロムの騎士、あらわる
  シューベルト・オペラの源泉
  「黒のわざ」のトリプル・ミーニング
  下世話なテーマと音楽研究

 第3節 クラブの音楽神
  ユーモアから音楽が生まれる
  音楽と神
  神=作曲家

第Ⅱ章 神

 第1節 宗教のアナーキー
  兄と父、そして弟
  愛多き友人たち
  自由と植物

 第2節 信仰の在りか
  源泉としての聖書
  大らかな宗教性
  信仰告白
  普遍的教会の拒絶
  圧縮から削除へ
  「全能なる父」の否定
  矛盾をそのままに
  神は自然のなかにいる

 第3節 正しく真なる祈り
  おのずと湧く祈り
  天地の断絶──グノーシス
  神なき世界
  獣性からの救済
  大地に生きる
  この命、そして来るべき生

第Ⅲ章 愛

 第1節 古代の知
  エロス
  アガペー、フィリア
  プラトン
  古代と神話──寄る辺なき時代に

 第2節 異教の愛
  親友と古代ギリシア
  ディアーナ──死をもたらす女
  アウロラ──天地の合一、性別の撤廃
  ウラニア──人類の救済

 第3節 ロマンティック・プラトン
  愛の本
  プラトンによる救い
  神話の終焉

第Ⅳ章 成熟

 第2節 ナイーヴな創造
  あきらめと成熟
  オペラ史のなかの《フィエラブラス》
  弛緩したオペラ?

 第2節 成長する主人公
  愛の昇華
  共作のたまもの
  「あこがれ」と「自制」

 第3節 悩める主人公
  わきたつ「復讐」
  「怒り」の連鎖と変奏
  友情による解決
  媒介者としての主人公
  愛の亡霊
  神なき世界

第Ⅴ章 心

 第1節 無言の視線劇
  シャレード絵の謎
  頬づえの男
  第三のハルトマン
  心を病んだ男

 第2節 副次主題
  ふくらむ音楽
  心の音楽史
  ドラマと抒情のパラドクス

 第3節 争点としての「心」
  音楽がよって来る場所
  アレゴリー

第Ⅵ章 他者

 第1節 18世紀──2つの源泉
  異質な話題──修辞学
  無意識──ライプニッツ
  狂気のとば口

 第2節 19世紀──他者としての副次主題
  構造と生成
  音楽──民族を育むもの
  正しいものを育む
  衝動=動機を育む
  終わりなき自由
  他者のパラドクス
  他者の馴致
  流動化と包摂

 第3節 精神分析と音楽理論

第Ⅶ章 後期

 第1節 飛躍とその蔭
  至高のもの
  死の衝動
  自作コンサート

 第2節 奇跡と死  
  後期ということ
  奇跡の年
  破綻 
  精神病理学から 
   
 第3節 反復
  反復の作曲家
  同音(型)の反復(Lv.1)
  副次主題の変奏反復(Lv.2)
  広範な主題回帰(Lv.3)
  同一語法への固着──愛と痛み(Lv.4)
  反復される欲望
  倒錯の歴史的条件
  マゾヒズム

第Ⅷ章 狂気と至福

 第1節 狂気と至福
  「謎」としてのカルテット
  変奏曲としてのソナタ形式
  切断の享楽
  主なき想念の不気味
  荒野のオアシス
  享楽の反復 
   
 第2節 無時間へ
  詩人の恋と妄想
  妄想に寄り添う
  揺動とためらい
  現在から過去へ(第1・2詩節)
  幸福な現在(第3・4詩節)
  悲惨、願望──そして諦念・反復へ(第5・6詩節)

第Ⅸ章 生と死

 第1節 異界の浸潤
  移行としての音楽
  溶解と切断
  揺動する主題
  世界の亀裂
  閾の往還
  はてなき旅

 第2節 亡霊Ⅰ
  偉人の墓標にて
  告別の旋律学
  亡霊の召喚、そして……
  後日談

 第3節 亡霊Ⅱ
  つつましい邂逅
  痛みのツィクルス
  反復強迫
  反復と差異
  亡霊との和解

第Ⅹ章 悲劇と愛

  愛の多声歌曲
  親密なぬくもりを
  人気ジャンル
  王道
  「新しい形式」
  ほっそりと、燃えさかる
  ためらいがちに、寄り添う
  悲劇による救済
  ウィーンの激震
  救済の在りか
  哲学者シューベルト
  不在で、あなたを見守りたい

 おわりに──もぐること、寄り添うこと  

column
  外宇宙と内宇宙──メディアが拡げた音楽聴
  音楽学と伝記
  伝記の「闇」
  「傷」から聴く音楽
  思想史と音楽理論
  悲劇と喜劇
  音楽と障害学
  ピリオド楽器の愉悦
  永遠の秋
  浸透する告別主題  
  
 参考文献
 索引
  シューベルトの作品
  固有名
  映像作品
  事項

前書きなど

はじめに──音楽のむこう

 ひとりの作曲家について考える道は、なんと果てしないことだろう。
 過去に残された音符が音楽になったものを、私たちは聴いている。時代ならではの空気、その空気に対するやり場のない怒り、笑い、よろこび、そのなかで醸成される死生観……たくさんのリアルがつまった音楽だ。それらのリアルを知りたくて、人は想像力をフルにはたらかせ、作曲家が生きた時空へと飛ぶのである。
 アンテナはさらに遠く長く伸びる。その時代の感性は、もっと前の時代に感じられていたことの反復でもあり、さらには今という時代にも反射してくるからだ。ひとりの作曲家について思索する道は、だから果てしのないものとなるのである。残された音楽の、そのむこうを見ようとするとき、人はどんなことを考えうるのか? これはもはや終点のない冒険の旅である。
 そんな冒険のために、「私」のもてる全アンテナをはたらかせて物語をつむぐことにしよう。

* * *

 物語は、フランツ・シューベルト(一七九七-一八二八)が二〇歳をむかえるころに始まる。
 当時ウィーンを生きた人々のあこがれは「宇宙」にも届いていた。この街で青年は、「狂騒」のごときジョークを友と分かちあいながら自立をはたす(第Ⅰ章)。あの寄る辺なき時代だからこそ、独自の「神」観をとぎすませ(第Ⅱ章)、「 愛(エロス)」にこがれるロマン的作曲家が生まれたのだ(第Ⅲ章)。やがて愛の情念を乗りこえ、青年は曇りない音楽を書くようになるだろう。はれやかな「成熟」(第Ⅳ章)への到達をもって、本書はいったん閉じられる。
 成熟のかげに葬られ、亡霊のごとく憑きまとうなにか──このモティーフに駆り立てられて、「心」の奥をめぐる旅に出よう(第Ⅴ章)。
 導きの糸は副次主題である。おそろしきものを招来するなにか、近代の大人たちが抑圧してきたなにか。ときに狂気の源泉となり、楽曲を支配する主人にとっての「他者」であるもの(第Ⅵ章)。主要なロジックを脅かす副次性こそが、作曲家の「後期」を読み解く鍵となる(第Ⅶ章)。
 しかし後期になしとげられたものとは、つまるところ何だったのか? 人々の聴き方に、そして楽譜に答えをたずねよう。すこぶる平穏な日常を生きたこの人のばあい、死生観と悲劇観、至福と狂気のゆれは、音楽そのものに宿っているのだから。シューベルトは、幸薄い早世の人ではない。自らの欲望を追いもとめ、めまいのするような享楽を味わいつづけた作曲家だったのだ(第Ⅷ-Ⅸ章)。その享楽は“愛と痛み”の永遠の反復からなる。逃れられぬ悲劇を生きながらも、かぎりない愛に満たされてあれ──そんなメッセージで、物語は閉じられる(第Ⅹ章)。

* * *

 こうして後期を見すえる本書は、青春にフォーカスした前著『〈フランツ・シューベルト〉の誕生──喪失と再生のオデュッセイ』(法政大学出版局、二〇一六)の続編である。そこでは語られなかったジャンル──宗教音楽(第Ⅱ章)、オペラ(第Ⅳ章)、室内楽(Ⅶ-Ⅸ章)、パートソング(第Ⅹ章)──に光があたる。なかでも室内楽は特権的といえる。みずから予告した「大交響曲」の威容からはずれ、いりくんだ世界に沈んでいったのが、とくに最後の三作(トリオ、カルテット、クインテット)にほかならないからだ。本書の後半は、これらの作品を読み解くガイドでもある。
 旅の途上で、私たちはたくさんの先人の思想に出会うだろう。心にじかに灯る宗教観をうちだした同時代の風変わりな神学者に、青年は共感したにちがいない。われらの魂はかつて天にあった……その思いを熱く語る古代哲学者の言葉も、若い作曲家を奮い立たせただろう。人の心に避けがたく巣食うなにかをめぐる現代の教説さえも、きっと我がものとして聴いたはずだ。そう。時代と分野を超え、研究史に登録すらされていない人名やトピックが、ここにはたくさん登場する。正答のない思索は、とかく正答のない学問領域──神学と精神分析──におのずと引き寄せられるからである。これらの知見を、もし私たちの作曲家と分かちあうことができるとしたら、きっとつぶらな瞳をかがやかせ、緩慢なからだをずいと乗りだして、この物語を聞いてくれるのではないだろうか。
 終わらぬ旅のすべてのページをつらぬいて、数しれぬ友たちが舞台に登場してくる。主人公を動かし、また動かされながら、ともに踊りつづける仲間たち。音楽に惹かれるあなた、本書を手にとってくださったあなたもまた、友の輪にもういるのだと思う。
 わが友、シューベルト。

著者プロフィール

堀 朋平  (ホリ トモヘイ)  (

1979年生まれ。2002年、国立音楽大学音楽学学科卒業。2004年、同大学院修士課程音楽研究科修了。2013年、東京大学大学院人文社会系研究科後期博士課程修了(文学博士)。日本学術振興会特別研究員PDをへて現在、国立音楽大学非常勤講師。住友生命いずみホール音楽アドバイザー。
著書に『〈フランツ・シューベルト〉の誕生―喪失と再生のオデュッセイ』(法政大学出版局、2016)、共著に『バッハ キーワード事典』(春秋社、2012)、訳書に『フランツ・シューベルト──あるリアリストの音楽的肖像』(アルテスパブリッシング、2017)、共訳書にマーク・エヴァン・ボンズ『ベートーヴェン症候群──音楽を自伝として聴く』(春秋社、2022)など。
演奏家との対話や、他分野の知と交わる音楽研究をこころざしている。

上記内容は本書刊行時のものです。