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[意見書]フクシマ型PTSD “今やらねばならぬこと” 辻内 琢也(著/文) - 三和書籍
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[意見書]フクシマ型PTSD “今やらねばならぬこと” (イケンショ フクシマガタピーティーエスディー イマヤラネバナラヌコト)

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発行:三和書籍
A5判
価格 3,600円+税
ISBN
978-4-86251-561-2   COPY
ISBN 13
9784862515612   COPY
ISBN 10h
4-86251-561-4   COPY
ISBN 10
4862515614   COPY
出版者記号
86251   COPY
Cコード
C3036  
3:専門 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2024年8月
書店発売日
登録日
2024年5月30日
最終更新日
2024年8月16日
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紹介

本書は「福島原発事故責任追及訴訟埼玉弁護団」および「原発賠償 京都訴訟弁護団」の依頼を受け、埼玉地方裁判所(2019年12月16日)および大阪高等裁判所(2020年5月7日)に提出された意見書(甲D共231)『福島第一原子力発電所事故被害者に持続する甚大な精神的苦痛-精神的ストレスと社会・経済的要因に関する人間科学的実証研究から-』をもとに大幅に加筆されたものである。原発事故による被害者が、いかに甚大な精神的苦痛と過酷な生活・人生を強いられているか、筆者らが原発事故発生以降これまでに行ってきた人間科学に基づく大規模アンケート調査・インタビュー調査・フィールドワーク調査の結果をもとに明らかにしてきた。

目次

目 次
第1章 はじめに:意見書の趣旨
1-1.持続可能な開発目標(SDGs)に向けて
1-2.筆者らの調査・支援・研究活動の経緯
1-3.「誰ひとりとして取り残さない」を目指して
第2章 調査研究の概要
2-1.調査研究の目的
2-2.調査研究の特徴
2-3.アンケート調査の対象と方法
1)  2012年SSN埼玉調査
2)  2013年NHK福島調査
3)  2013年SSN埼玉東京調査
4)  2014年SSN埼玉東京調査
5)  2015年NHK全国調査
6)  2016年SSN首都圏全国調査
7)  2017年SSN首都圏全国調査
8)  2018年SSN首都圏調査
9)2020年SSN首都圏調査
10)2022年SSN首都圏調査
2-4.本調査におけるストレス度の測定
1)  IES-R(改訂出来事インパクト尺度)
2)  K6(気分・不安障害調査票)
2-5.本調査で行った統計解析の概要
1)  統計解析の意味について
2)  平均値の差の検定
3) カイ二乗検定の読み方について
4) オッズ比の読み方について
5)  多重ロジスティック回帰分析について
第3章 精神的ストレス度の11年間の調査結果と
    先行研究との比較
3-1.11年間の精神的ストレス度の調査結果
3-2.世界における災害研究との比較
(Tsujiuchi T.:PlosOne,2016原著論文をもとに和訳・加筆)
3-3.東日本大震災後の研究との比較
3-4.交通事故災害との比較
第4章 PTSD症状に影響する身体・心理・社会・経済的要因
4-1.2012年SSN埼玉調査データから
(Tsujiuchi T.: PlosOne,2016原著論文をもとに和訳・加筆)
1)  基本属性および被災状況の結果
2)  IES-Rの結果
3) カイ二乗検定による生活経済・健康状態の検討
4)  多重ロジスティック回帰分析によるPTSD関連要因の検討
5)  近隣関係の希薄化
(増田・辻内ら:厚生の指標,2013掲載論文をもとに加筆)
6)  近隣関係の希薄化がおよぼす精神的影響
4-2.2013年NHK福島調査データから
(辻内ら:心身医学,2016原著論文をもとに加筆)
1)  基本属性および被災状況の結果
2) カイ二乗検定による生活経済・健康状態の検討
3)  多重ロジスティック回帰分析によるPTSD関連要因の検討
4) 自由記述の分析
5)  PTSD症状に影響する身体・心理・社会・経済的要因
6)  本研究の限界と展望
7)  結論
4-3.2015年NHK全国調査データから
1)  基本属性および被災状況の結果
2)  原発事故による急性トラウマ体験の解明
3) トラウマとなりうる「ふるさと喪失」体験の解明
4) カイ二乗検定による被災状況・生活経済状況・健康状態の検討
5)  多重ロジスティック回帰分析によるPTSD関連要因の検討
6)  PTSD症状に影響する身体・心理・社会・経済的要因
7)  避難区域別の自由記述の分析
8) 自由記述の代表的事例
9)  結論
第5章 原発避難者と地震津波避難者との被害の質の違い:
    2015年NHK全国調査データから
(Tsujiuchi T.: JapanForum,2021原著論文をもとに和訳・加筆)
5-1.年齢と性別の構成
5-2.心理的影響の違い
1)  心的外傷(トラウマ)体験
2)  ふるさと喪失体験
5-3.社会的影響の違い
5-4.経済的影響の違い
5-5.4つのグループのストレス度の比較
5-6.4グループ比較からみえる原発事故避難者の特徴
第6章 2016年以降の首都圏調査データにおけるK6の分析
6-1.2016年調査の結果
1)  K6の結果
2) カイ二乗検定の結果
6-2.2017年調査の結果
1)  K6の結果
2) カイ二乗検定の結果
6-3.2018年調査の結果
(岩垣・辻内・金ら:心身医学,2021原著論文をもとに加筆)
1)  K6の結果
2) カイ二乗検定の結果
3)  多重ロジスティック回帰分析の結果
4) 自由記述の内容分析の結果
5)  考察1:個々の心理・社会的問題に対処する
 災害ケースマネジメントの必要性
6)  考察2:避難先地域コミュニティや住民サービスに
 つなげることの重要性
6-4.K6の経年変化(2016年・2017年・2018年・2020年・2022年)
6-5.考察:原発事故被害者のストレスと社会・経済的要因
1)  K6が示す原発事故被害者の高いストレス度
2)  経済的な問題
3)  賠償・補償の問題
4)  住宅環境の問題
5) 身体と精神の問題
6)  近隣関係の問題
7)  家族関係の問題
6-6.まとめ
6-7.本研究の限界
第7章 原発避難いじめの実態調査
7-1.いじめ調査結果の概要
(辻内:岩波「科学」,2018a、明石書店,2018b 掲載論文をもとに加筆)
1)  回答者の属性
2)  子どものいじめの概況
3)  子どものいじめの内容
4)  学校の対応について
5)  大人社会に広がるいじめ
7-2.アンケート自由記述の分析
1)  原発いじめの具体的内容
2)  原発いじめは何故いま問題になったのか
7-3.原発避難いじめの事例
1)  中高6年間にわたる犯罪的暴力
2)  近隣の大人からのいじめ
3)  親子で受けてきた無視・誹謗中傷・暴力
4) テレビや新聞で取り上げられるたびに受けるいじめ
5)  転校せざるを得なかったいじめ
7-4.原発いじめに対する文部科学省調査の検証
7-5.原発避難いじめの構造
第8章 福島原発事故に認められる構造的暴力
8-1.構造的暴力によるPTSD仮説
1)  原発事故という構造的暴力
2)  社会的虐待によって繰り返されるトラウマ体験
3) 『子ども・被災者支援法』の改悪による社会的虐待
4) フクシマ型PTSD仮説
8-2.構造的暴力の上部構造
1)  不合理な避難・帰還区域の制定
2)  帰還するための条件
3)  帰還してもよい放射線量の基準
4)  賠償金による地域格差
5)  作られた安全・安心神話
6)  放射線の健康影響についての専門家間の見解の相違
7) 「安全説」科学リテラシーと「非安全説」科学リテラシー
8)  作られた安全・安心神話がもたらした地域の分断
9)  原発事故被害者の放射線に関する科学リテラシー
10) 「放射線恐怖症」という言説の問題性
11)  住民達の叫び:不合理な避難区域と安全・安心神話による苦悩
8-3.構造的暴力の下部構造
(辻内:ナラティブとケア,2019掲載論文をもとに加筆)
1)  法・制度によって作り出された新たな災害弱者
2)  核の平和利用という構造的暴力
3)  経済優先という構造的暴力
4) 自己責任論という構造的暴力
8-4.原発事故はまったく収束していない
1)  野田首相による原発事故収束宣言(2011年12月)
2)  安倍首相による原発事故収束宣言の撤回(2013年3月)
3) いまだに収束していない原発事故
第9章 事例分析:原発事故被害者10人の物語
  ー心理・社会・経済・身体的ストレスの解読ー
9-1.中間貯蔵施設建設による自宅・ふるさとの喪失と、娘たちの被ばく
新田さん(52歳・男性),6人世帯,帰還困難区域
9-2.生きがいの喪失、孤立、未来の喪失
飯盛さん(56歳・男性),2人世帯,帰還困難区域
9-3.長期にわたる避難所生活と賠償金をめぐる家族関係の悪化
真野さん(59歳・女性),4人世帯,帰還困難区域
9-4.ふるさと喪失・生きがいの喪失と、多数の持病を抱えた一人暮らしの苦難
高瀬さん(68歳・男性),1人世帯,帰還困難区域
9-5.乳幼児を抱えた母子避難と、知人友人関係の悪化
前田さん(33歳・女性),3人世帯,緊急時避難準備区域
9-6.コミュニティ・ふるさとの喪失による孤独と、胃がん・脳梗塞による身体不自由
吾妻さん(86歳・男性),1人世帯,計画的避難区域
9-7.家族分離による家族関係の悪化、子どものいじめと避難者への差別・偏見
三峰さん(40歳・女性),5人世帯,避難指示区域外
9-8.避難先での母親の事故死と、幼い子どもとの孤独な母子避難
中山さん(37歳・女性),3人世帯,避難指示区域外
9-9.妻の難病と事故後に生まれた四男の先天性心疾患、福島と首都圏との二重生活と家族分離の苦悩
笹森さん(48歳・男性),5人世帯,避難指示区域外
9-10.平穏な日常生活の破綻、原発事故後の離婚、母子避難の孤独と病気
神山さん(29歳・女性),4人世帯,避難指示区域外
9-11.おわりに
第10章 結論
10-1.本書で示した調査結果より明らかになったこと
1)  11年間の精神的ストレス度の調査結果から明らかになったこと
2)  PTSD症状に影響する身体・心理・社会・経済的要因の解析から明らかになったこと
3)  区域内避難者・区域外避難者・地震津波避難者の比較から明らかになったこと
4)  2016・2017・2018・2020・2022年首都圏調査データにおけるK6の分析から明らかになったこと
5)  原発避難いじめの実態調査から明らかになったこと
10-2.分断の解消に向けて
10-3.『居住コンセプト』という新しい避難・帰還政策の提言
10-4.「避難する権利」および「避難を継続する権利」
10-5.第37回人権理事会本会合(2018)指摘事項のフォローアップ
10-6.総括的提言付録資料 最新調査分析結果をもとにした政府に対する要望書
(2023年3月7日)
引き続く原発避難者の苦難を直視した継続的かつ
実行的支援を求める要望書
第1 要望の趣旨
第2 要望の理由
【研究助成】
【引用文献(ABC 順)】
【謝辞】
【執筆者紹介】

前書きなど

 原発事故被災者の心理・社会・経済的苦悩を救済していくためには、これまでに海外でのみ使用されてきたこの『国内強制移動に関する指導原則』に従い、日本国内の避難民全員に対して保護する責任を日本政府として全うすべきであろう。
 この原則を実践に移すためには、国連人権理事会に対応した管轄の外務省だけでは不可能である。外務省がこれまでに海外で行ってきた人道支援の経験を活かして、積極的に内閣府と復興庁といった「行政府」が一体になった活動をすべきだろう。そして何よりも、人権を守る砦としての「司法府」が、行政府から独立した機関として「誰ひとりとして取り残さない(leave no one behind)」状況を実現させていくことを切に願う。

著者プロフィール

辻内 琢也  (ツジウチ タクヤ)  (著/文

愛知県生まれ。幼少期を南アフリカ共和国で過ごす。浜松医科大学医学部卒業。東京大学大学院医学系研究科・内科学ストレス防御心身医学修了。博士(医学)。千葉大学大学社会文化科学研究科(文化人類学)単位取得退学。東京警察病院内科、東京大学医学部附属病院心療内科、健生会クリニック心療内科・神経科診療室長、早稲田大学人間科学部助教授、ハーバード大学難民トラウマ研究所(HPRT)・マサチューセッツ総合病院精神科リサーチフェローなどを経て、早稲田大学人間科学学術院教授、早稲田大学災害復興医療人類学研究所所長。
 1995年発災の阪神・淡路大震災において、被災地医療に従事。調査研究論文「阪神
淡路大震災における心身医学的諸問題(Ⅱ);身体的ストレス反応を中心に」にて第11回
(1997年度)日本心身医学会『石川記念賞』受賞。2011年発災の東日本大震災後は、福
島県から首都圏への避難者に対する医学・心理学・人類学的調査を行うとともに、震災支援ネットワーク埼玉(SSN)副代表として支援活動を行っている。「原発事故広域避難者のトラウマに対する社会的ケアの構築」にて、第16回(2014年度)『身体疾患と不安・抑うつ研究会賞』受賞。「福島原発事故首都圏被害者に持続する甚大な精神的被害-人間科学的実証研究から-」にて、第20回(2021年度)日本トラウマティック・ストレス学会・学会奨励賞『優秀演題賞』受賞。

上記内容は本書刊行時のものです。