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パトグラフィーへの誘い
心の病と文学
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2025年1月20日
- 書店発売日
- 2025年1月24日
- 登録日
- 2025年1月7日
- 最終更新日
- 2025年1月22日
紹介
パトグラフィーは「病跡学」と呼ばれ、歴史的に傑出した人物を精神医学の観点から系統的に研究をしようとするものである。
東京大学でドイツ文学を修めた後、精神科医となった著者は、
内田百閒、ドストエフスキー、ゴッホ、そしてヘルマン・ヘッセらの足跡と作品をたどり、臨床における精神異常の実態を理解するうえで、この病跡学的アプローチを試みた。
本書は、これまで「日本病跡学会雑誌」などに発表してきた論文やエッセーをまとめたもの。
なお、著者は2021年に出版した『ヘルマン・ヘッセの精神史』で日本病跡学会賞(2022年)を受賞している。
目次
序文
言語遊戯と言語新作―モルゲンシュテルン、Ch. の ガルゲンリーダーから―
内田百閒と精神医学(上)―実践的幻聴体験の創出―
内田百閒と精神医学(下)―百閒の人間像―性格的分析
ヴァン・ゴッホ兄弟のカタストロフ――二人組精神障害の軌跡
ドストエフスキーのてんかん発作と病的賭博―妻アンナ指揮のポリフォニー―
ゴッホの診断ミステリー
フランツ・カフカと中島敦―「変身」をめぐる早世の同時代人―
意識変容の諸相―昏迷の創出―
田中正造の遺訓(上)―足尾鉱毒事件との対峙
田中正造の遺訓(下)―災害救済の道は為政者への“精神療法あるのみ”
文豪ヘルマン・ヘッセ自己治癒への道程
ヘルマン・ヘッセ『ガラス玉遊戯』への軌跡―その精神医学的考察―(1)自我同一性障害
ヘルマン・ヘッセ『ガラス玉遊戯』への軌跡―その精神医学的考察―(2)ヘッセ、精神分析に対峙
ヘルマン・ヘッセ『ガラス球遊戯』への軌跡―その精神医学的考察―(3)創作デミアンと精神分析
ヘルマン・ヘッセ『ガラス玉遊戯』への軌跡―その精神医学的考察―(4)「シッダールタ」中断の頃
「狂人日記」の迷走―大岡昇平『野火』への付言―
おわりに
前書きなど
現在においてもなお、この「病跡学」とは何かという命題は続いている。私の書いたものがこの病跡学に添うものであるかどうかも怪しい。自分は、精神医学の臨床にすこしでも役立つことを願い、また精神異常の実態を一般に敷衍したいの念から、文を起こしてきた。この会には、多くのすぐれた論客がなお頑張っていて、自分のこの書に自信がわいてこない。単なる解説書の綴りのような気がしてくる。私はこの書の論術を病跡学的と断じていない。従って、病跡学そのものを掲げず、“病跡学への誘い”とした。(本書「おわりに」より)
上記内容は本書刊行時のものです。