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映画よさようなら
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 書店発売日
- 2022年12月24日
- 登録日
- 2022年11月4日
- 最終更新日
- 2023年4月4日
紹介
映画が映画にさようならを告げている――
ペドロ・コスタ、アピチャッポン・ウィーラセタクン、セルゲイ・ロズニツァ、濱口竜介、深田晃司……現代映画のトップランナーたちと並走してきた著者がつづるポストメディア時代の映画批評。
3つの問題系――「歴史」「受容」「倫理」――が浮き上がらせる「映画」の現在地。
教養主義の後退、動画配信サービスの台頭、当事者性の問題……現実の変化を受け、映画はかつてあったものとはまるきり異なる何ものかへと変貌しつつある。本書は、思考家として、ペドロ・コスタ、アピチャッポン・ウィーラセタクン、セルゲイ・ロズニツァ、濱口竜介、深田晃司といった現代映画のトップランナーたちと並走してきた著者が、2020年以降に執筆したテキストを集めたポストメディア時代の映画批評集だ。
「映画はもうほんとうはとっくに「映画」ではなくなっており、ただ私たちは「かつて映画であったもの」の記憶(?)をそこに見出(そうと)しているだけなのだ」と語る著者が、「歴史」「受容」「倫理」という3つの問題系から「映画なるもの」と向き合い、「目の前の「映画」に対峙し、そして先へと進」むための思考を深めていく。
第1部の「歴史/映画史」では、ペドロ・コスタやアピチャッポン・ウィーラセタクンという国際映画祭の常連作家たちの新作に眼だけでなく耳も持って対峙しているほか、タル・ベーラやヴィム・ヴェンダース、マルグリット・デュラスといった巨匠たちの歩みを振り返る。第2部の「受容/メディア」では、「アーカイブ映像」を編集することで「物語」を生み出すセルゲイ・ロズニツァや、特異な「ホームムービー」を生み出した原將人に向けたテクストだけでなく、小説家・円城塔が脚本を担当した『ゴジラ S.P』論も収録。第3部の「倫理/ポリティカル・コレクトネス」では、ともに新作でろう者を描いた濱口竜介と深田晃司を取り上げるほか、小森はるかや今泉力哉といった若き日本の映画作家たちに注目していく。
ほかに、本書のためにつづった映画を取り巻く状況を整理したプロローグ、濱口竜介が『ハッピーアワー』以前に制作した『親密さ』に対する書き下ろし論考を収録。さらに、その死を受けて大幅に加筆したジャン゠リュック・ゴダール論も収められており、「映画」の現在地を示す映画批評集となっている。
目次
プロローグ:さようなら、映画よ
第1部:歴史/映画史
部屋を流れる奇妙な音――ペドロ・コスタ論
科学と神秘――アピチャッポン・ウィーラセタクンの『MEMORIA メモリア』
リアリズムの内破――伝説前夜のタル・ベーラ
ヴィム・ヴェンダースの修行時代――ある映画監督のまわり道
ロマネスクの起動――劇映画作家としての伊藤高志
映画は存在しない――マルグリット・デュラスの映画論
第2部:受容/メディア
「観察」の条件――フレデリック・ワイズマンと香港ドキュメンタリー映画工作者を例に
「事実」の復元、「時間」の修復――セルゲイ・ロズニツァの「群衆」シリーズ
フェイク・ドキュメンタリーの擬態(フェイク)――セルゲイ・ロズニツァの「劇映画」
「事実」の「物語」化について――『バビ・ヤール』とセルゲイ・ロズニツァというフィルター
「手紙の時代」の映画――トーマス・ハイゼと百年の厚み
映画としての人生、人生としての映画――原將人と「ホームムービー」
鏡の中の闇、闇の中の鏡――奥原浩志小論
「本の未来」のための新たな寓話――吉田大八『騙し絵の牙』
時間の「背」を捉えるために――吉増剛造×空間現代×七里圭
ふりだしに戻る/ TIME AND AGAIN――『ゴジラ S.P』の円城塔論
第3部:倫理/ポリティカル・コレクトネス
親密さ、とは何か? あるいは距離について――濱口竜介の青春期
言語の習得と運転の習熟――『ドライブ・マイ・カー』論
神と人との間――『偶然と想像』論
スパイの妻と、その夫――黒沢清vs濱口竜介・野原位
第三の「非/当事者」性にむかって――『二重のまち/交代地のうたを編む』論
ありそうでなさそうな/なさそうでありそうな話――今泉力哉の「リアリティのライン」
ふたつの『星の子』、映画と小説――見える映画と見えない小説
ヒューマニズムについて――実験劇映画作家としての深田晃司
エピローグ:JLGRIP
上記内容は本書刊行時のものです。