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季節を脱いで ふたりは潜る
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 書店発売日
- 2021年7月1日
- 登録日
- 2021年5月27日
- 最終更新日
- 2021年8月13日
紹介
幾重にも着込んできた 季節をすべて脱ぎ捨てて、
今では遠く無くしたものに、水の中で手を伸ばす――。
『かのひと 超訳 世界恋愛詩集』以来、3年ぶりとなる菅原敏の新詩集は、
移ろいゆく暮らしを、やさしく抱き寄せ、綴った季節の詩。
〔読者特典:電話朗読付〕
燃やすとレモンの香る詩集や、毎夜一編の詩を街に注ぐラジオ番組など
数々の試みをおこなってきた菅原敏が、
今作では、遠い日々の断片を拾い集めてぺージに挟みこむように、
季節の情緒を12ヶ月の詩に写しました。
カバーを“脱ぐ”とあらわれる肌のような表紙や、
帯につくられた“小さな海” など、こだわり抜いた造本。
さらに朗読などの公演が叶わない今、一篇の詩を電話でお届けする
読者特典〔電話朗読室〕の電話番号を本書の中に隠しました。
雑誌『BRUTUS』での連載を中心に、
近年の代表作含む、12ヶ月×4編〔全48編〕を収録。
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>4月
暮らし
アスファルト上の片手袋を拾い上げると爆発する冬が終わって、動物たちが巣穴で目覚めるころ。やさしい光のなかでも私たちは少しだけ狂ってる必要があった。ほぼ毎日彼女は家にいるので、通帳なのか未来の姿なのか、私は何かを見ないようにと驚くほどに毎日眠る。オムレツリンゴヨーグルト、朝飯を食べ終わると午後三時。彼女の肌も荒れてきた。幸せな暮らしと正しい暮らし。睡眠薬とビタミン剤。それぞれの違いを交換したら洗濯機、私は彼女の下着を洗う。
>7月
冷たい水
肌と肌の輪郭が
あいまいに消えされば
国境を越えて
なめらかな山の稜線
カーテンの隙間から
初夏の日差しが
背中を打ち抜いて
ちいさな午後の死
ラジオのニュース
遭難者2名
同じコップで水を飲み
眠りに落ちる前に聞いた
ひとつのからだで
いきるための理由
目次
<四月>
浴室の音楽
暮らし
春のしわざ 風のしわざ
接続詩
<五月>
微笑み隠して 僕らは歩く
パキラ
封筒の中の街
背中に気をつけろ
<六月>
午前四時
午後四時
ざあざあ雨
いま
<七月>
冷たい水
鏡の詩
かもめ
恋は水色
<八月>
半袖を着ない理由
一秒
髪を切る意味
白と黒
<九月>
おまえは知らない
青が争う夜のしずか
裏窓
日曜日
<十月>
机に海
危険な読書
眠り傘
世界でいちばん大きな詩集
<十一月>
古いホテル
海の底から鐘の音は
おお おんなたち
日生 座
<十二月>
街のあかり
まばたき
彼女の指は誕生日
嘘ついて星ふえる
<一月>
家
必要な家具
玄関
キッチン
<二月>
過去を束ねて川をゆく
Scented Poems For Burning
わたしはりんご
若さの馬鹿野郎たち
<三月>
きれいな暮らし
五線譜の日々
街
はるなんてこい
あとがき
電話朗読室
上記内容は本書刊行時のものです。