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タイ日大辞典改訂版
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2023年5月10日
- 書店発売日
- 2023年6月10日
- 登録日
- 2023年5月30日
- 最終更新日
- 2023年6月7日
書評掲載情報
2023-07-02 |
毎日新聞
朝刊 評者: 棚部秀行 文化蘭(文化の森) |
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紹介
日本語・タイ語辞典の最高峰『タイ日大辞典』を6年間かけて改訂、定評のある「冨田色」は大切にしつつ、より「読みやすく」、「引きやすい」辞書としました。
品詞・語源・例文・語誌などの表記を見やすく整理、発音記号は音節ごとに表記しました。
新しい表現、人名を追加、不要と思われる植物名などは削除しました。
類別詞一覧、王語、年表、県別人口、行政機構、教育制度、陸軍編成など、付録を充実させました。
目次
改訂版 序
Ⅰ タイ族
Ⅱ タイ諸語
1 シナ・タイ語派(漢泰語派)
A 中国諸方言
B タイ諸語
1) 北方系タイ諸語
2) 南方系タイ諸語
2 チベット・ビルマ語派(蔵緬語派)
A チベット語系
B ビルマ語系
3 ミャオ・ヤオ語派(苗瑤語派)
Ⅲ タイ語の発音と文字
1 音韻組織
1) 母音
2) 韻尾
3) 頭子音
2 文字
1) 子音文字のアルファベット
2) 子音文字の音価と三群分類、語源分類
3) 母音符号のアルファベット
4) その他の符号と数字
3 声調
4 特殊な発音
1) 派生語
2) 一字だけの語
3) 子音文字二つだけで一音節を作る場合
4) ฤの発音
5) รの発音
6) บ₋の発音
7) 一字再読
8) 黙音語尾の復活
9) 2通りの発音
10)綴字通りに発音されない例
Ⅳ タイ国語辞典略史
Ⅴ 第三版(再訂増補版)参考文献目録
凡例および注意事項
1. 見出し語の配列順序
2. 語釈の基本表記
3. 解説上の符号
4. 品詞
5. 語源
6. 語誌別略記
7. 分野別略記
8. 人名について
9. 類別詞について
10. 年号
【タイ語―日本語辞典】
ก ข ฃ ค ฅ ฆ ง จ ฉ ช ซ ฌ ญ ฎ ฏ ฐ ฑ ฒ ณ ด ต ถ ท ธ น บ ป ผ ฝ พ ฟ ภ ม ย ร ฤ ฤๅ ล ฦ ฦๅ ว ศ ษ ส ห ฬ อ ฮ
付録
1. 類別詞
2. 王語
3. 県別人口度量衡
4. タイ歴史年表
5. 歴代首相
6. 行政機構
7. 陸軍編成
8. 教育制度
9. 伝統的度量衡
前書きなど
改訂版 序
恩師冨田竹二郎先生(1919~2000)が生涯を賭けて編纂された『タイ日辞典』(初版、養徳社、1987年)、『タイ日辞典』(第二版、養徳社、1990年)および『タイ日大辞典』(第三版、日本タイクラブ発行、㈱めこん発売、1997年)のいずれをも微力ながらお手伝いさせていただいた私とはいえ、まさか改訂版を自らが手掛けるとは夢にも思っていなかった。
しかし、次の二つの理由が私をこの第四版の編纂に追いこんでしまった。一つは、第三版発行からすでに25年という年月が経ち数年前から在庫が無くなったため、タイ語学習者や研究者にとって入手がきわめて難しくなったことである。とりわけ、若い世代でタイに深い関心を持ち向学心に燃える方々から入手できないかという問い合わせが多く舞い込むようになった。彼らが少し広く深くタイ語文献を読むには、どうしても「冨田辞典」を必要とするという切実な声であった。長年タイ学の研究および教育に従事してきた私はこうした若い人たちの状況を放置してよいのかと悩むようになった。何とか再出版できないものかと真剣に考え始めた。
もう一つの理由は、「冨田辞典」の価値である。出版以来各方面から様々な評価を得たが、総合すれば「日本初の本格的なタイ日辞典」ということに尽きるであろう。採録語彙数の多さに加え、豊富な用例はもちろんのこと、語源(他言語との関係)、方言、地名、歴史上の人物名、動植物名、慣用句、俗語や隠語など多岐にわたる情報が含まれており、少し深くタイを知ろうとする者にとっては、まさに必要とされる座右の辞典である。加えて、「冨田辞典」の特徴は見出し語の語釈にある。単なる解説ではなく、積年の知識と経験がほとばしっており、その部分だけを読んでも価値があると評した方がいるほどである。たしかに、関心のあることがらについての解説は長く、あちこちに飛んだりする傾向が強いが、私は大学時代に受けた先生の講義を髣髴することが多い。
つまり、「冨田辞典」は冨田先生の個性があふれた「講義録」である。それは、単なる辞典ではなく、戦争直前にタイに留学し、日本の敗戦により収容所生活を余儀なくされるものの、帰国後主として大学を場に日本におけるタイ語学の確立に精魂を傾けた者の「講義録」であり、「タイ論」である。今後、おそらくこのような個性豊かな辞典が生まれることはないにちがいない。だからこそ、電子流行りの時代ではあるが、もう一度出版して「文化遺産」として残しておかねばならないと考えるに至った。もちろん、それは私が受けた薫陶への恩返しでもある。
当初は第3版をそのまま復刊することを考えていた。しかし、この間、これまで多くの辞典利用者からいただいた貴重な意見を生かさなくていいのか、無視していいのかという問題が、当然のことながら、出てきた。実際、様々なミスも多く発見されていた。そして、一番多く寄せられていた声は、「読みにくい」、「探しにくい」という類であった。せっかくの機会であるから、訂正や改良の作業を行なわねばならないのではという考えが頭の中で回転し始めた。
ただ、そこで同時に悩みに悩んだのは、果たして私に訂正や改良を加える能力があるや否やということであった。私は60年近くほぼ毎日タイ語と接した生活を送ってきた。おそらく「冨田辞典」の利用者としては日本一だろうと自負している。しかし、言語学に正面から立ち向かったことはない。そんな私で果たして改訂ができるのだろうかと悩んだのである。そんな時、晩年の冨田先生を病床に見舞ったとき、「赤木君、第3版の後のことについてはあんたに任せるから」という先生の一言をふと思い出した。もはや、この悩みを捨て去る以外になかった。
「基本的には第3版の内容を残し、明らかなミスを訂正し、読みやすさという視点から可能な限り改良を加える」という方針をもとに、私は改訂版を出版する決心をした。その上で、「冨田辞典」の最大の理解者であり、常々相談していた桑原晨さん(㈱めこん)の賛同、承諾を得て、出版が最終的に決定したのであった。2017年の夏の終わりごろであったと思う。
本格的な改定作業に取り掛かったのであるが、考えていた通りには進まなかった。少しでも曖昧な語や説明があると、そのチェックに長い時間を費やさねばならなかった。タイ族やタイ語などに関する解説はほぼそのままにした。ただ、「冨田辞典」のユニークな特徴の一つである動植物名の取り扱いがきわめてむずかしいことが判明した。とりわけ、タイ名、和名、英語名、学術名との間の同定作業が素人である私には無理であるとわかり、タイ名や和名はできるだけ残すが学術名を削除することにした。このこととの関連で、巻末の「付録 動植物名彙」も割愛した。また、不必要と思われる語彙は削除する一方、新しい語彙を適宜吟味の上収録した。古い言葉や関西弁が混じる解説なども、可能な限り冨田色を消さないように心がけながら改めたほか、人種・宗教・性別などの違いによる偏見・差別的な意味合いを含む説明や例文の表現についても現代の社会状況を考慮のうえ一部を改めた。また、文字の見やすさなどにも配慮した。
天国の冨田先生がどのように見ておられるか気になるところであるが、この「冨田辞典第四版」がこれまで以上に広く利用され、日・タイ間の相互理解がより一層促進されることを望む次第である。
2022年深秋
三田市のโอซามุ บรรณนิธิ にて
赤木 攻
上記内容は本書刊行時のものです。