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日本の南進と大東亜共栄圏 後藤乾一(著) - めこん
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日本の南進と大東亜共栄圏 (ニホンノナンシントダイトウアキョウエイケン)

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発行:めこん
A5
縦215mm 横152mm 厚さ22mm
重さ 547g
330ページ
上製
定価 2,500円+税
ISBN
978-4-8396-0329-8   COPY
ISBN 13
9784839603298   COPY
ISBN 10h
4-8396-0329-4   COPY
ISBN 10
4839603294   COPY
出版者記号
8396   COPY
Cコード
C0330  
0:一般 3:全集・双書 30:社会科学総記
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2022年5月30日
書店発売日
登録日
2022年5月6日
最終更新日
2022年6月9日
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書評掲載情報

2022-07-16 東京新聞/中日新聞  朝刊
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紹介

アジアを学ぶとき日本人として必ず整理しておかなければないテーマ―――。
日本人はいつごろから、どのようなかたちで、東南アジアに進出していったのか?
アジア太平洋戦争の時代、日本軍は東南アジアで何をしたのか? 
日本が戦争遂行の大義として掲げた「大東亜共栄圏」とは何だったのか? 
その大義は果たされたのか? 東南アジアの人たちはどのように受け止めたのか?
その記憶は、東南アジアでは、どのように受け継がれているのか?
日本では?
大量の文献と先行研究の分析を基に、包括的かつ客観的にまとめた「アジアの基礎知識」。

目次

第1部 戦前期日本は東南アジアとどう関わったのか

1二〇世紀転換期の日本と東南アジア
 国際関係の中のアジア
 日本・東南アジア相互認識の形成
 初期日本人社会の相貌 
  1「からゆきさん」再論
  2東南アジア関心の高まり
  3在留富邦人の二重構造
 「中継地域」と東南アジア
  1小笠原諸島領有と南洋群島
  2台湾=「図南の飛石」
 東南アジアから見た日本
  1日本人社会へのまなざし
  2日露戦争のインパクト 

2一九三〇年代の日本の「南進」と国際環境

 第一次世界大戦後の国際秩序と日本
 東南アジアへの経済進出
  1貿易摩擦と対日警戒感
  2漁業問題の発生・展開・帰結
 東南アジアの華僑ナショナリズムと日中関係
 「一九三六年危機」論をめぐって
  1国際連盟脱退から「無条約時代」へ
  2「非常時日本」と太平洋世界
  3「躍進台湾」と南進論
 「国策ノ基準」と「南進」政策
  1海軍と「国策ノ基準」
  2新南群島の台湾編入
  3豪亜地中海・ポルトガル領ティモール問題
 アジア主義者の東南アジア関心
  1大亜細亜協会と南方問題
  2『大亜細亜主義』に見る在日東南アジア民族主義者の発言
東南アジアのナショナリズムと日本
  1日本の東南アジア観の引照枠
  2一九三〇年代東南アジア民族主義者の日本観
   ⑴インドネシア民族主義者と日本
    ■Ⅿ・ハッタの訪日記録
    ■スバルジョの滞日一年
    ■スカルノの「太平洋戦争」予見論
   ⑵フィリピン――M・ケソン大統領訪日と日比米関係
   ⑶ビルマ――ウー・ソオ著『日本案内』

第2部 東南アジアにとって「大東亜共栄圏」とは何であったのか

3東亜新秩序論から開戦へ
 日中関係と台湾
 政策決定過程における「南進」問題
  1陸軍の南方関心
  2日蘭会商と仏印進駐
 東南アジア占領構想の基本方針
  1「重圧」受忍論
  2海軍省調査課作成の「大東亜共栄圏論」
 「大東亜戦争」開戦と戦争目的


4東南アジアと「大東亜戦争」
 基本的諸問題の鳥瞰
  1帰属問題  
  2資源問題
  3インフレ問題
  4抗日抵抗運動の諸類型
 統治形態別に見た各地域の状況
  1同盟国タイ
   ⑴強いられた同盟関係
   ⑵バーンポーン事件と泰緬鉄道
   ⑶ピブーン首相と大東亜会議
   ⑷戦局悪化とプリーディー派政権の登場
  2二重支配地域――仏印三国とポルトガル領ティモール
   ⑴ベトナム
    ■日本軍の南部仏印進駐
    ■ベトナム復国同盟会とクオン・デ候
    ■開戦後の仏印
    ■仏印処理とベトナム民族主義運動
   ⑵ラオス
    ■日仏二重氏支配期のラオス
    ■仏印武力処理後の地方都市
    ■プーミー・ヴォンヴィチット回想録 
   ⑶カンボジア
    ■日仏二重支配期と「傘のデモ」
    ■仏印武力処理とカンボジア
   ⑷ポルトガル領ティモール
    ■日本のポルトガル領ティモール関心
    ■横浜=ディリ航空路開設と総領事館設置
    ■日本軍支配とティモール人
  3軍政施行地域
   ⑴ビルマ
    ■東条首相議会演説と対ビルマ方針
    ■バ・モオ首相と対日協力
    ■抗日蜂起へ
   ⑵フィリピン
    ■開戦前後のケソン大統領メッセージ
    ■日本軍のフィリピン認識と「独立問題」
    ■「独立」後の日比関係と大東亜会議
    ■激化する抗日ゲリラ活動
   ⑶マラヤ・シンガポール
    ■「帝国領土」への編入対象
    ■マレー人社会の指導層
    ■華僑ナショナリズムと日本
    ■抗日運動
   ⑷インドネシア
    ■政治・軍事面
    ■社会・経済面
    ■文化面
    ■「独立問題」をめぐって

第3部 「大東亜共栄圏」をめぐる嚙み合わない歴史認識
 
5東南アジア諸国の対日歴史認識の比較
 東南アジアの日本占領期認識の比較
  1歴史教科書の比校
  2二人の「建国の父」の日本軍政観
   ⑴インドネシア・スカルノ大統領の独立記念日演説から
   ⑵シンガポール・リー・クアンユー首相回顧録から
  3世論に見る東南アジアの日本観
 日本の東南アジア占領認識
  1一九九三年細川首相発言と「歴史認識問題」
  2教科書記述に見る東南アジア占領


6「殺身成仁」史観を超えて―――真の「未来志向」の関係とは

あとがき
関連略年表
主要参考文献
索引

前書きなど

はじめに

 「昭は照らすことであり、永い間の暗雲を除き、すべての物に何ら差別なく太陽の光りと恵みをあまねく及ぼしたい。昭南の土地こそ必ずその名の示すようにこの方面[東南アジア]における光明の一大軸心、基点となる島(港)となろう。」
 一九四二(昭和一七)年二月一五日、「難攻不落」と謳われた大英帝国のアジア支配の象徴シンガポールを陥落させた二日後、大本営政府連絡会議は、右のような「心からの願い」からシンガポールを昭南(島)と改称したのだった(防衛庁防衛研修所戦史室編 一九七〇:五一九・五二〇)。
 今日東南アジアを構成する一一ヵ国(含東ティモール)の内、もっとも遅く歴史に登場するシンガポールが、イギリス東インド会社のアジア進出の拠点となったのは一八一九年のことである。それ以降東西をつなぐもっとも重要な中継港として急発展をとげたシンガポールは、貿易港としてのみならず東南アジアをめぐる国際関係において軍事的にも政治的にも枢要な地位を占めるに至った。一九世紀後半に始まる日本と東南アジア世界との関係においても、後述するようにシンガポールは扇の要ともいうべきもっとも中心的な位置を占めることになる。
 かつて南洋とも外南洋とも呼ばれた東南アジアは、日本と同じ東アジア文化圏の朝鮮半島・中国大陸を除くと日本人が最初に足を踏み入れた異国、異文化圏であった。歴史教科書で必ず紹介されるように一六・一七世紀には数多くの朱印船がこの海域に行きかい、域内全体で七ヵ所に「南洋日本人町」が形成され、虚実相交じえて語られてきた山田長政のような謎多き伝説的人物も登場する。  
これらの近世初期の日本人と東南アジアの関係については一九三〇年代以降、史料に裏打ちされた精緻な歴史研究で実証される一方、「大東亜戦争」勃発前後になると日本人の「南洋進出の先駆」と喧伝され、日本と東南アジアの不可分かつ宿命的な結びつきの象徴として利用されるようにもなる。いわば政策的な「歴史の動員」の対象となったことも今なおわれわれの記憶に新しい。
 冒頭に紹介した「昭南」の由来が示唆するように、本書の主要な関心は、アジア太平洋戦争(当時は「大東亜戦争」と呼称)の時代とは東南アジアにとって、また日本にとってどのような時代であったのか、ということにある。端的に言えば、本当に「すべての物に何ら差別なく太陽の光と恵みをあまねく及ぼす」世が実現したのであろうか、という素朴な問いかけである。そしてこの基本的な設問を、三つの観点から検討し、時代を追う形で読者とともに考えてみたいと願うものである。
その第一は、明治期以降の日本と東南アジアの関係について具体的な事例を通して跡付けることである。
第二は、「大東亜共栄圏」の実現を掲げて東南アジア全域を支配してアジア太平洋戦争期の日本統治の特質と実態、そして東南アジア側の対応の諸相、さらにはこの時代が東南アジアに与えた衝撃とその遺産についての考察である。
そして第三は、戦後四分の三世紀を経た今日、戦時期の両者の関係は、双方の側においてどのように記憶され、歴史化されているのか、という歴史認識に関わる問題の検討である。
              
 ・・・・・・

著者プロフィール

後藤乾一  (ゴトウケンイチ)  (

1943年生まれ。早稲田大学名誉教授、法政大学沖縄文化研究所国内研究員。本書関連の近著として、『東南アジアから見た近現代日本』(岩波書店、2012年)、『近代日本の「南進」と沖縄』(岩波書店、2015年)、『「南進」する人びとの近現代史-―小笠原諸島・沖縄・インドネシア』(龍溪書舎、2019年)。

上記内容は本書刊行時のものです。