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七福神、大集合!―江戸の信仰と文化
- 初版年月日
- 2025年7月7日
- 書店発売日
- 2025年7月7日
- 登録日
- 2025年7月4日
- 最終更新日
- 2025年7月4日
紹介
七福神をめぐる文化は現在の私たちにも届いている。七福神の魅力の一つは、各地に七福神があって、正月に巡拝する、テーマパーク(スタンプラリー)的な体験型の娯楽だという点によって説明できるであろう。隅田川七福神、谷中七福神といった具合に、場所と信仰は密接に結びついている。そのことは、伊勢参り、善行寺参りなどに敷衍しても証明できる。要するに、足を運んでそこに行くことで、根源的な何かに触れることができるのである。
そうして、「あそこ」に行けばあの神様がいらっしゃり、ご利益を授けて下さるという人々の思いによって、「あそこ」はどんどん神格化されていく。そうすると、「あそこ」には神秘と親愛がますますまとわりつくことになる。
これを第一の魅力とすれば、第二には、宝船の絵を枕の下に敷いて、めでたい初夢を見ようとするという年中行事となっていたことが挙げられる。じつに手軽に、現世利益への欲望が具現化されるのである。ご利益を求めることが好きな日本人の国民性に適った、大衆的で世俗化された神々なのだ。宝船以外にも、数多くの絵画が流布した。第三には、キャラクターが立っていて、福をもたらすという共通性と、女神や武闘派もいるという多様性によって、親しまれたことを指摘したい。そこには、滑稽性も存在していたからこそ、より一層の親しみが湧くのである。
すなわち、七福神の魅力を三つのキーワードで総括すれば、「場所と信仰の結びつき」、「絵画的な世界の浸透」、「キャラクター」ということにまとめられるのである。
目次
七福神の世界 鈴木健一
一 隅田川七福神/二 七福神の成立/三 宝船の絵と初夢/四 七福神それぞれ/
五 詩歌作品における享受/終わりに
Ⅰ 七福神の相貌
大黒天 田代一葉
はじめに/一 大黒天の成り立ち/二 武将たちと大黒天信仰/三 日本での信仰のかたち/
四 文学の中の大黒天/五 描かれた大黒天
恵比寿 菊池庸介
はじめに/一 恵比寿信仰/二 古典文学に現れる恵比寿/三 黄表紙に描かれる恵比寿/おわりに
弁才天 田中 仁
はじめに/一 説話文学に描かれた弁才天/二 軍記文学に描かれた弁才天/
三 黄表紙・滑稽本に描かれた弁才天/四 笑話に描かれた弁才天/五 川柳に描かれた弁才天/おわりに
毘沙門天 吉田慎一朗
はじめに/一 中世以前の日本における毘沙門天/二 近世における毘沙門天信仰/
三 江戸文芸に登場する毘沙門天/おわりに
福禄寿 壬生里巳
はじめに/一 福禄寿はどこから来たか?/二 大津絵に見る福禄寿の図像/
三 有卦絵に見る福禄寿の役割/おわりに
寿老人 久岡明穂
一 寿老人の由来/二 南極老人の化身(中国)/三 南極老人から寿老人へ(日本)/
四 江戸時代の文学作品での寿老人/五 現在にいたる寿老人の信仰
布袋 古庄るい
一 布袋様はどのような神か?/二 癒しの布袋図/三 草双紙に登場する布袋和尚/終わりに
Ⅱ 江戸文化の中の七福神
黄表紙 弁財天をめぐる恋の三角関係 関原 彩
はじめに/一 恋敵は大黒天/二 恋敵は毘沙門天/三 恋敵は福禄寿/
四 なぜ恵比寿と弁財天がカップルなのか?/おわりに
草双紙の七福神 津田眞弓
はじめに/一 赤本の七福神/二 黒本青本の七福神/三 黄表紙の七福神/四 合巻の七福神/
おわりに
浮世絵における七福神―福を招く表現 藤澤 茜
一 大黒と恵比寿/二 七福神の表現と神使/三 使いの動物を描く/四 宝船に乗る七福神/
五 百鬼夜行と七福神/六 様々な主題における七福神/七 開化絵における七福神
歌舞伎と七福神 赤井紀美
はじめに/一 脇狂言「七福神」/二 正月興行における曾我物と七福神/
三 七福神の見立てと役者絵/おわりに
江戸漢詩と七福神―風刺・教訓・諧謔 小財陽平
一 神々の寄せ集め/二 風刺・教訓・諧謔/三 布袋尊賛詩/四 布袋は無一物なのか?/
五 アンサーソング/六 社会批判としての布袋詠/おわりに
新七福神の成立 湯浅佳子
はじめに/一 『七福神伝記』の新七福神/二 日本の神々と七福神/まとめにかえて
江の島弁才天奇譚 門脇 大
はじめに/一 江戸時代の江の島参詣―浮世絵と十返舎一九『江の島土産』/
二 江の島弁才天の誕生―『江島縁起』より/三 江の島弁才天奇譚 一―『耳嚢』より/
四 江の島弁才天奇譚 二―魅惑の江の島弁才天/おわりに
◆コラム◆ おみくじと七福神 平野多恵
貨幣の七福神―大黒信仰と硬貨をめぐる意匠 鈴木堅弘
はじめに―貨幣と福神/一 富を授ける大黒信仰/二 慶長銀の大黒天と大黒常是/
三 「絵銭」の習俗と祀られる銭貨の七福神/おわりに―神宿る硬貨
◆コラム◆ 菊池寛「弁財天の使」 溝部優実子
あとがき
執筆者紹介
上記内容は本書刊行時のものです。