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シスター景山 謝罪と感謝、そして共働
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年2月27日
- 書店発売日
- 2021年3月12日
- 登録日
- 2021年2月22日
- 最終更新日
- 2021年3月15日
紹介
〝皆さま、ごきげんいかがですか〟
異国の地で祈り働き続ける90歳の日本人シスター、景山ひろさんが、戦争の記憶や女性の生き方、そして隣人愛について語る。
空襲を体験し、死線をさまよった少女時代。
女性リーダーの先駆けとなった学友たち(緒方貞子さんら)と過ごした青春時代。
長崎県佐世保市の聖和女子学院では校長や理事長として、信仰の道を生徒たちと共に歩んだ。そして今、フィリピンで飢餓と貧困に向き合う。
本書は、西日本新聞朝刊に連載された聞き書き「謝罪と感謝、そして共働」(2020年10月6日~12月5日)に加筆、修正したものです。景山さんは「先の大戦で日米が激突したフィリピンでは女性や子どもを含む多くの市民が殺りくされました。それでも日本を許してくれたこの国の寛大な精神に感動し、汗を流しています」と語ります。その思想の根幹にあるのは、新約聖書にある「善きサマリア人のたとえ」。イエスが人種や国籍、宗教の垣根を越え、苦しむ人に寄り添う「隣人愛」を示したと言います。
戦争の記憶が薄れる今、景山さんの戦争体験は後世に伝えるべき貴重なくだり。
90歳の淑女の生き方が、女性蔑視が根強く残る現代社会に光ります。
景山ひろさんについて
1930 年2 月10 日、東京生まれ。カトリック系の聖心女子大大学院を修了。1955 年、「善きサマリア人修道会」へ入会。長崎県佐世保市の聖和女子学院に通算30 年近く勤め、教師から校長、理事長などを歴任した。2021 年現在、フィリピン・バコロドの貧民街で宣教中。活動の柱は貧しい子どものための幼稚園運営や奨学金付与、女性自立支援など。
目次
4P プロローグ 南国で人々とともに
13P Ⅰ「涙の町」と信仰について
若く活気あるフィリピン
苦い砂糖の島
「善きサマリア人」について
恩讐を超えた隣人愛
教派の違いを超えて
ベストセラー、聖書
27P Ⅱ 生い立ちと戦争
弘法大師空海にちなんで
父の言葉「子どもが財産」
にぎやかな大家族
東京大空襲、そして疎開
ひそかに受けた英語レッスン
悲惨な空襲、衝撃の体験
死線を越えて
玉音放送
反戦への思い
65P Ⅲ 復学と受洗、そしてシスターへ
第2の誕生日
女性の自立説く学長
緒方貞子さん
置かれた場所で咲く
決心
長崎への旅
白亜の校舎
オーストラリアへ
ミカンの林を眺めて
87P Ⅳ 教育者の道
祈り、かつ働く
生徒の「たまもの」を大切に
「体で覚えなさい」
女優になった生徒との再会
規律と優しさの人、初代校長
アイデア豊富な2代目校長
生徒は宝、同窓生は魂
学校の危機、理事長に
多大な助けを受けて
107P Ⅴ 共に働く
フィリピンでの宣教
「飢餓の島」で
給食プログラム
子どもに学ぶ機会を
大作家の援助も
佐世保発・草の根支援
幼稚園の設立
異なる習慣。大切なのは思いやり
頼りがいのある長姉
「心の密」を大事に
「第3の誕生日」まで
132P 刊行に寄せて
出会いに感謝 聖和女子学院同窓会 聖苑会会長 川添麗子
前書きなど
プロローグ 南国で人々とともに
皆さま、初めまして。景山ひろと申します。いかがお過ごしですか。
2020(令和2)年は〝超〟想定外の年になりました。新型コロナウイルスの影響で、世界中で多くの犠牲者が出ました。悲しいことです。NHKの海外向け衛星放送によると、日本でもなお感染が続いているようですね。映像でマスク姿の皆さんを拝見しています。ただ、わたくしの住んでいる町はもっと厳しいのですよ。徹底したロックダウン(都市封鎖)が続き、外出したら職務質問を受けることもあります。こんな話をしていると、「どこにいるの」と思われるでしょう。
申し遅れました。わたくし、フィリピンのバコロドで生活しております。九州から南南西におよそ3千キロ。7千以上の島で構成されるこの国で、カトリック「善きサマリア人修道会」のシスターとして宣教活動に携わり、地域の支援を行っております。支援と言ったら口幅ったいですね。一緒に働いていこうという感じでしょうか。微力ですが、90歳になっても仕事があるのはありがたいことです。
皆さんはフィリピンが暑い南国とのイメージをお持ちでしょうね。その通り、人々は年中汗をかいていますよ。日差しはとても厳しいです。日本のような四季はありません。衣替えと言っても通じません。ただ雨期の夕方のスコールは、貧しい人たちにとって体を洗える恵みのシャワーです。衣類の洗濯もできますしね。南国の木々をつややかにし、ほこりっぽい道路を瞬く間に洗ってくれます。特にお伝えしたいのが人々の気性の良さ。フィリピン人は温かく陽気です。
さて、このコロナ禍のような難事はおいそれと経験できるものではありません。わたくしにとっては、そう、太平洋戦争以来の体験でしょうか。
ウイルスのせいで世界は一変しました。でもこれを事実として受け止め、皆で新たな生活を模索したいですね。
出身は東京ですが、長崎県佐世保市の聖和女子学院で長い間奉職しておりました。九州にはご縁があります。恩人や友人もたくさんいて、第二の故郷です。そして今生活している場所が、第三の故郷です。
これからわたくしの話にしばらくお付き合いいただければと思います。よろしくお願い申し上げます。
上記内容は本書刊行時のものです。