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アメリカ少年司法制度の生成と展開
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2023年3月24日
- 書店発売日
- 2023年3月30日
- 登録日
- 2023年3月10日
- 最終更新日
- 2023年3月27日
紹介
◆アメリカ少年裁判所法の歴史を草創期から検討し、その本質に迫るーパレンス・パトリエ少年法とは何か?◆
わが国少年法の“母法”ともされ,その理念たる保護主義の拠りどころともなっているアメリカ少年裁判所法の歴史はいかなるものであり,その創設期にはどのように凶悪・重大事件に向き合っていたのだろうか。このような問題関心の下,アメリカで最初に制定されたイリノイ州少年裁判所法の検討を通じて,そもそもパレンス・パトリエ少年法とはいかなるものだったのかを問う歴史研究の書。
目次
『アメリカ少年司法制度の生成と展開』
今出和利(兵庫教育大学大学院特任教授) 著
【目 次】
・まえがき
◆序 章 少年裁判所の合意性―ジェラルド・ゴールト判決が投げかけた波紋
1 ゴールト判決(In re Gault)とデュー・プロセス
2 ゴールト判決における少年司法の捉え方の相違
3 本書のねらい
◆第1章 少年裁判所創設前史
1 パレンス・パトリエとデュー・プロセス
2 少年救護院(House of Refuge)設立運動とクルーズ判決(Ex Parte Crouse)
3 シカゴ矯正学校(Chicago Reform School)とオコーネル判決(People ex rel. O'Connel v. Turner)
(1) 犯罪少年と刑罰
(2) シカゴにおける矯正学校制度
(3) オコーネル判決
(4) 判決が各州に与えた影響
4 南エヴァンストン職業訓練学校(South Evanston Industrial School)をめぐる二つの判決
(1) 要扶助少年対策のあらたな潮流―「ミシガン・プラン」(Michigan Plan)と「補助金制度」(subsidy system)
(2) 少女のための職業訓練学校(Industrial School for Girls)
(3) フェリア判決(In re Ferrier)
(4) ハンフリーズ判決(County of McLean v. Laura B. Humphreys)
(5) 両判決の共通性とその意味
◆第2章 少年裁判所の生成
1 シカゴ・ウーマンズ・クラブ(Chicago Women's Club)とハル・ハウス
(1) プログレッシヴと「婦人クラブ」
(2) CWCの誕生とルーシー・フラワー(Lucy Flower)
(3) ハル・ハウス(Hull House)とそのレジデント(resident)たち
2 CWCによる非行少年・要扶助少年への取り組み
(1) CWCとジェイル改革
(2) プロべーション・ワークの導入
3 少年裁判所法制定に向けた具体的な取り組み
(1) 要扶助少年対策のための「1891年法案」
(2) ルーシー・フラワーと「1895年法案」
(3) シカゴ法曹協会(Chicago Bar Association)と「少年裁判所法に関する委員会」の設立
(4) イリノイ州慈善・矯正会議(Illinois State Conference of Charities and Corrections)
4 少年裁判所法案とその成立
(1) シカゴ法曹協会(CBA)法案の作成
(2) イリノイ州議会の審議と少年裁判所法の成立
(3) 法案の削除・修正とその背景―各方面への配慮
◆第3章 少年裁判所制度の確立
1 本章の内容
2 少年裁判所法の概要
(1) 少年裁判所法の構造と理念
(2) 「要扶助少年」(dependent),「遺棄少年」(neglected),「非行少年」(delinquent)の定義
(3) 少年裁判所の組織と法的位置づけ
(4) 裁判所への申し立て(petition)
(5) 呼出状(summons)
(6) 調査・審理とプロべーション・オフィサーの任命
(7) ジェイルへの収容の制限と成人との混合収容の禁止
(8) 要扶助少年と遺棄少年への処遇
(9) 非行少年に対する処分―プロべーション・オフィサー制度
(10) 要扶助少年・非行少年の委託団体の設立と監督
(11) その他の規定
3 初期の少年裁判所の光景
(1) 初代少年裁判所判事―リチャード・タトヒル(Richard S. Tuthill)
(2) 法廷の様子―公開された審理
(3) 少年裁判所法と陪審規定
(4) 新しい少年裁判所庁舎とディテンション・ホームの完成
(5) 少年裁判所法の運用と処遇―統計をもとに
(6) プロべーションの実際
(7) 女性による判事補(Assistant Judge)の登場―メアリー・バーテルメ(Mary M. Bartelme)
(8) 非公開審理とバーテルメへの批判
(9) 「福祉裁判所」としての機能―「母親への補助金」(mothers' pensions)制度の導入
4 プロべーション・オフィサー制度をめぐって
(1) プロべーション・オフィサー制度と少年裁判所委員会(Juvenile Court Committee)の設立
(2) 最初のプロべーション・オフィサー―アルジナ・スティーヴンス(Alzina P. Stevens)
(3) カウンティ・プロべーション・オフィサーの誕生―プロべーション・オフィサーの有給化をめぐる議論
(4) プロべーション・オフィサーの採用試験
(5) もう一つのプロべーション・オフィサー―ポリス・プロべーション・オフィサーとその役割
(6) ポリス・プロべーション・オフィサーによる事件の非公式的処理と批判
◆第4章 少年裁判所への批判と擁護
1 要扶助少年(dependent)の扱いに関する批判
(1) 要扶助少年と「里親斡旋団体」(home-finding society)
(2) ウィリアム・ダン(William H. Dunn)の少年裁判所批判とその背景
2 少年裁判所への調査―「ホチキス委員会」(Hotchkiss Committee)報告書
(1) 政治的介入
(2) 「ホチキス委員会」の発足と「人事委員会」による介入
(3) ウィッターの解任と三権分立
(4) プロべーション・オフィサーの人事権をめぐって―ウィッター判決(Witter v. The Board of Commissioners)
(5) 「ホチキス委員会」報告書
3 少年裁判所の合憲性をめぐる判例
(1) 少年裁判所法とフィッシャー判決(Commonwealth v. Fisher)
(2) リンゼー対リンゼー判決(Lindsay v. Lindsay)
4 少年裁判所法の統一基準をめぐって
(1) 各州の少年裁判所法の実情
(2) 1923年「少年裁判所基準」
◆第5章 重大犯罪事件の管轄権問題
1 黎明期少年司法における重大犯罪事件の扱いについて
(1) 少年裁判所法と重大犯罪
(2) 法制定時における保護主義理解―少年司法と刑事司法の「完全分離説」
(3) 検察官から大陪審・刑事裁判所への送致
(4) 少年裁判所から大陪審・刑事裁判所への送致
2 少年裁判所と刑事裁判所の競合管轄をめぐって
(1) フィッツジェラルド判決(People v. Fitzgerald)・ブルーノ判決(People v. Bruno)と競合管轄の確認
(2) 「少年裁判所法改正案」とラティモア判決(People v. Lattimore)
3 検屍陪審(Coroner’s Jury)から大陪審・刑事裁判所への送致
(1) 検屍陪審制度と「シカゴの殺人事件に関する歴史研究プロジェクト」(Chicago Historical Homicide Project)について
(2) 大陪審への送致
(3) 少年裁判所への送致
(4) 放 免
(5) 検屍陪審制度の意味
◇むすび
1 回 顧
2 二元的思考の問題
3 日本法への示唆
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・引用・参考文献
・資料編
資料1 1899年イリノイ州少年裁判所法
資料2 クック・カウンティ最初の少年裁判所専用庁舎(1907年)の間取図
資料3 非行少年(男子)の行為と処遇(63例/1910年初頭)
資料4 非行少年・要扶助少年の人数及びその処遇(1905―1915)
・あとがき
・索 引
上記内容は本書刊行時のものです。