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心理臨床的支援の方法 菅 佐和子 (編) - 新曜社
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心理臨床的支援の方法 (シンリリンショウテキシエンノホウホウ) カウンセリングのすすめ (カウンセリングノススメ)

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発行:新曜社
A5判
216ページ
定価 1,900円+税
ISBN
978-4-7885-1197-2   COPY
ISBN 13
9784788511972   COPY
ISBN 10h
4-7885-1197-5   COPY
ISBN 10
4788511975   COPY
出版者記号
7885   COPY
Cコード
C1011  
1:教養 0:単行本 11:心理(学)
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2010年4月
書店発売日
登録日
2010年4月5日
最終更新日
2010年5月27日
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紹介

本書は、病者・高齢者や家族、子どもの心理を理解し、的確に支援するために必要な臨床心理の知識と方法を解説しました。ヒューマン・ケアの現場では、とかく「人柄」「経験」が重要とされますが、カウンセリングの知見と応用のポイントを学ぶことによって、感情交流の質を上げるためのよりたしかな方法を身に付けることができます。編者は、京都大学医学研究科看護科学コース教授。

目次

心理臨床的支援の方法 目次
[看護・介護・保育の心理学シリーズ]刊行にあたって
まえがき 
 
第1章 対人援助に必要なカウンセリングの「こころ」
1 人間のこころが求めるもの
(1)共感とは何か
(2)共感を示す応答のコツ
2 共感を示す応答はどれだろう? ― レッツ エクササイズ!
(1)大学1年生・B君の事例
(2)治療の見通しに不安をもつ患者・Cさんの事例
(3)認知症の実母を施設に入居させた家族・Dさんの事例
3 相手にとって役に立つ応答とは
【レポート課題】
【参考書】
 
第2章 さまざまなカウンセリングの理論・技法
1 はじめに
2 人間主義的心理学に基づくカウンセリング
(1)来談者中心療法
(2)フォーカシング
(3)トランスパーソナル・セラピー
3 無意識を重視するカウンセリング
(1)精神分析
(2)分析心理学(ユング派)
4 行動療法
(1)新行動S-R理論
(2)応用行動分析モデル
(3)社会学習理論
(4)認知(行動)療法
【レポート課題】
【参考書】
 
第3章 発達障害の理解とカウンセリング
1 はじめに
2 発達障害とは
(1)軽度発達障害について
(2)発達障害はどれくらいあるのか?
(3)発達障害かどうかを、どう判断するか?
3 発達障害のカウンセリングのポイント
(1)「肯定的体験」としてのカウンセリング
(2)内的世界の推測と共感的理解
(3)実行可能性の高い具体的な提案
4 保護者へのカウンセリング
(1)障害児をもつ親が抱えるストレス
(2)障害受容について
5 おわりに
【レポート課題】
【参考書】
 
第4章 精神科看護とカウンセリング
1 はじめに
2 精神科におけるチーム医療 ― 看護師の役割
3 病理水準別のこころの構造
4 病理水準に合わせたかかわり方
(1)精神病水準の患者へのかかわり方
(2)人格障害水準の患者へのかかわり方
(3)神経症水準の患者へのかかわり方
5 おわりに
【レポート課題】
【参考書】
 
第5章 児童・思春期心身症の看護とカウンセリング
1 はじめに
2 Aさんの事例
3 事例の理解
(1)子どもの心身症
(2)過敏性腸症候群について
(3)心理社会的要因の関与の見極め
4 対応のポイント
(1)初回面接の重要性
(2)面接のすすめかた
(3)環境調整
(4)思春期心性への配慮
5 Aさんのその後と、カウンセリングで目標にしてきたこと
【レポート課題】
【参考書】
 
第6章 慢性疾患(糖尿病)看護とカウンセリング
1 はじめに
2 医療モデルと成長モデル
(1)医療モデルに従ったアプローチ
(2)成長モデルに従ったアプローチ
3 エンパワーメント・アプローチ
(1)エンパワーメント・アプローチの実際
(2)エンパワーメント・アプローチによるカウンセリング
4 おわりに
【レポート課題】
【参考書】
 
第7章 失語・失行・失認(脳器質性疾患)の看護・介護とカウンセリング
1 はじめに
2 ブローカ失語と口腔顔面失行・観念失行・構成失行の患者
3 カウンセリングの経過
【レポート課題】
【参考書】

第8章 妊娠・出産とカウンセリング
1 はじめに
2 母親の心理
(1)母親の心理の特殊性
(2)産後の心理
3 産後に注意すべき精神症状(不眠・うつ・強迫症状)
4 さまざまな心理的危機
(1)赤ちゃんの入院
(2)赤ちゃんが早く・小さく生まれた場合
(3)赤ちゃんの障害
(4)赤ちゃんの死をどう受け止めるか
(5)赤ちゃんの死をどうこころにおさめるか
5 妊娠・出産とカウンセリング
【レポート課題】
【参考書】
 
第9章 HIV看護とカウンセリング
1 はじめに
2 HIV感染症/エイズ患者の事例
3 援助的な質問とは
(1)セクシュアリティの多様さ
(2)開かれた質問
(3)援助的なコミュニケーション・スキルのチェック
(4)自分の価値観・感に気づく
4 HIV感染症の苦悩
(1)HIV感染症は「関係」に生じる苦悩である
(2)HIV感染症は「ライフ(life:生命・生活・人生)」のあらゆる
  側面に影響を与える 
5 想定しうる難問発生状況
(1)伝える/伝えない
(2)服薬アドヒアランス
(3)保健行動
(4)物質関連障害(物質乱用など)
(5)人間関係や性行為
(6)心理状態
6 臨床心理士との連携
(1)臨床心理士やカウンセラーに相談を持ちかけるときに
(2)相談を持ちかけたあとで
7 おわりに
【レポート課題】
【参考書】
 
第10章 高齢者看護・介護とカウンセリング ― 認知症を中心に
1 はじめに
2 ある認知症の事例
3 カウンセリングの経過
4 おわりに
【レポート課題】
【参考書】
 
第11章 ターミナルケアの場での看護・介護とカウンセリング
1 はじめに
2 患者さんのこころを聴く
(1)必ず来る終わり
(2)死への意識 
(3)Aさんの場合 
3 家族のこころを聴く
4 おわりに ― こころを聴く側に問われるもの
【レポート課題】 
【参考書】 
 
第12章 家族を支える看護カウンセリング ― 共倒れ・虐待を防ぐために

1 はじめに
2 義母の介護に疲れた主婦
(1)Kさんの事例
(2)解説
3 病弱な子どもを抱える若い母親
(1)Rさんの事例
(2)解説
【レポート課題】
【参考書】
 
第13章 福祉に生かすカウンセリング
1 一般的なイメージのカウンセリングと、福祉現場における
  カウンセリング
2 施設生活に適応できない障害者支援施設入所者への
  カウンセリング
(1)A子さんの事例
(2)A子さんのカウンセリングのポイント
3 退院後の不安をもつ患者へのカウンセリング
(1)Sさんの事例
(2)Sさんのカウンセリングのポイント
4 おわりに
【レポート課題】
【参考書】
 
第14章 現場のテーマを研究へつなぐ
1 実践から研究へ ― 心理学研究とは何か
(1)知識の源
(2)実践研究のすすめ
2 探求への出発点 ― 研究スタイルの違い
(1)量的研究と質的研究
(2)統計的研究と事例研究
(3)仮説検証的研究と探索的研究
(4)縦断的研究と横断的研究
3 いかに探求するか ― 研究方法の違い 
(1)観察法
(2)面接法 
(3)調査法 
(4)実験法 
4 心理測定の基礎 ― 信頼性と妥当性 
(1)信頼性 
(2)妥当性 
【レポート課題】 
【参考書】 
 
第15章 研究方法の基礎を学ぶ
1 心理測定の実際 ― 性格検査を通して
(1)質問紙法 
(2)作業検査法
(3)投映法 
2 心理統計の基礎 ― 測定の尺度水準 
(1)比例尺度 
(2)間隔尺度 
(3)順序尺度 
(4)名義尺度 
3 心理統計の実際1 ― 似たものを探す 
(1)相関 
(2)相関係数 
4 心理統計の実際2 ― 違いを見つける 
(1)検定の原理 
(2)検定の方法 
【レポート課題】 
【参考書】 

前書きなど

心理臨床的支援の方法 まえがき 

 看護・介護・保育などヒューマン・ケアの仕事は、人間に深く関わる仕事です。そこでは、確かな知識・技術とともに、豊かな感情交流の能力が求められます。従来は、そのような対人交流の能力はその人の「人柄」や「経験」によって自然に磨かれるものと考えられがちでした。そのため、知識・技術の習得に比べて、今ひとつ方法論がはっきりしない面があったようです。

 もちろん、「人柄」や「経験」がきわめて大切であることは、言うまでもありません。しかし、それだけに頼るのではなく、心理臨床が積み上げてきたカウンセリングの知見を取り入れることで、感情交流の質を上げるためのポイントをつかんでいただければ、これに勝る幸いはないといえましょう。

 カウンセリングとは、言葉による感情の交流を通して、相手の心に望ましい変化が生じるのを促進する仕事です。言葉による交流が難しいケースでは、言葉以外のさまざまな媒体(遊び、描画、造形、音楽など)が用いられますが、感情の交流が重視されることは同じです。

 また、看護・介護・保育の分野では、身体へのケアが大きな比重を占めています。身体のケアを通して相手の心に深く働きかけることができるのも、これらの分野の大きな特徴です。そのような身体的ケアの効果をさらに高めるためにも、相手のニーズを汲み取り、その人に適した対応ができることが望まれます。

 従来、カウンセリングというと、どうしても精神科領域などに限定したイメージでとらえられてきました。しかし近年、心と身体との深い関連性が解明されるにつれて、もっと幅広く、あらゆるヒューマン・ケアの現場で、カウンセリングの必要性が痛感されるようになりました。カウンセリングは、あるがままの相手の感情表現に耳を傾けることから始まります。感情表現には、喜びや感謝などポジティブなものだけではなく、怒りや悲しみ、非難・攻撃など、いわゆるネガティブなものが含まれることも多いのです。それらに耳を傾け、理解し、受け容れることは、大変な忍耐と努力を必要とします。ひたすら自分の感情を押し殺して相手の感情を受け容れようとするだけでは、いずれ我慢の限界に達して、関係は行き詰ってしまいます。相手の感情を受け容れ、尊重することが、専門家としての自分にとって喜びとなり、確かな心の糧になるには、何が大切でしょうか。これは、簡単に答えの出る問いではなく、ヒューマン・ケアの仕事に通底する重要な課題であるといえましょう。

 本書は、ヒューマン・ケアの仕事を志す方々に、心理的援助の重要な方法としてのカウンセリングへの理解を深めていただく目的で編集いたしました。概論の後に、看護場面を中心に、さまざまなケアの現場でなじみ深い例を取り上げ、カウンセリングをどのように進めていくか、具体的に分かりやすく解説するよう試みました。

 例として取り上げたケースは、いうまでもなく、実在の個人をそのまま描写したものではなく、多くのケースの共通点を抜き出し、ひとつの架空事例としてフィクション化したものです。そのため、読者の周囲によく似た個人がおられたとしても、それは、偶然の一致に過ぎないことを、あらかじめ明記しておきたいと思います。

 また、臨床現場で見出されたテーマを研究につなぎ、考察を深めることも忘れてはならないことです。そのための方法論の基礎も、本書の中に組み込みました。臨床研究を通して得られた知見を、再び現場に役立てる一助となればと願っております。

 末尾ながら、長年に亘るヒューマン・ケア心理学の指導者であり、本シリーズを企画された岡堂哲雄先生と、御懇切なお世話をいただいた新曜社社長・塩浦ム様に、深甚の謝意を捧げます。
  
2010年2月 立春の頃に 編者・菅 佐和子

上記内容は本書刊行時のものです。