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ランドスケープとモダニティ
トマス・ガーティンからウィンダム・ルイスへ
原書: Ars in Britannia IV, PICTURA PROSPECTUS ET MODERNITAS: Ex Thomas Girtin ad Wyndham Lewis
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 書店発売日
- 2019年5月15日
- 登録日
- 2019年5月8日
- 最終更新日
- 2019年5月27日
紹介
トマス・ガーティンのパノラマ/水彩風景画に、J・M・W・ターナーの奴隷船/海景画に、コンスタブルとラスキン、そしてラファエル前派に、J・M・ホイッスラーの腐食銅版画/都市表象に、ウィンダム・ルイスの琳派/戦争画に、これらの創造の軌跡と美的表象の深奥を探り、イギリス近代の都市景観と社会的表象を明らかにする!
目次
プロローグ 風景画とイギリス 小野寺
第1章 都市が生んだ風景画──トマス・ガーティンの《アイドメトロポリス》からの眺望 大石和欣
第2章 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《奴隷船》──テリトリーを超えた人道主義のアレゴリー 富岡進一
第3章 コンスタブル、ラスキン、ラファエル前派 クリスティアナ・ペイン
第4章 一八五九年のヴァーチャル・リアリティ──ホイッスラー初期のテムズ河風景 小野寺玲子
第5章 ウィンダム・ルイスの戦争画──波のイメージとエネルギー 要真理子
エピローグ 風景画と近代 小野寺玲子
註
人名索引
前書きなど
イギリスはジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーとジョン・コンスタブルを双璧とする、優れた風景画家を輩出した。一七世紀に風景画を発達させたオランダと同様、非カトリック国であったことや、産業革命期以降経済的余裕をもった新興の美術鑑賞者層が、予備知識なく鑑賞できる風景画を好んだことなどが理由として考えられる。本書は『イギリス美術叢書』の第Ⅳ巻として、風景画をテーマにとりあげる。英語ではランドスケープのほかシースケープやタウンスケープ(またはシティスケープ)という語があるように、対象は自然景とはかぎらず、都市の景観を描いたものも含む。第1章はまさに、一九世紀初頭のロンドンを描いた都市風景画を論じる。トマス・ガーティンという画家は早世したこともあってあまり知られていないが、個性的な水彩画を残している。続いてターナーの海、コンスタブルとラファエル前派の自然風景を経て、再び舞台はロンドンへ戻り、ジェイムズ・マクニール・ホイッスラーの版画を考察する。そして最後に第5章では、国家や国土といった枠組みを超えた、二〇世紀の前衛画家ウィンダム・ルイスによる戦地の描写を検討する。想像上の物語と異なり、通常目に見える自然や街の「風景」は、いかにして絵画芸術へと昇華されるのであろうか。そこに介在するのは、芸術家の非凡な眼か、自然への畏敬の念か、人の営みへの屈託か。単純なようで複雑な問が、風景画をとりまいていると言えるであろう。とはいえ、知らない場所の景観を見せてくれることも、風景画の楽しさのひとつではある。まずは本書のページを繰りながら、ロンドンへ、大西洋へ、緑なすイングランドの田園へと、旅にでていただければと思う。
上記内容は本書刊行時のものです。