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変身の形態学
マンテーニャからプッサンへ
原書: Exploratio Imaginum V SCIENTIA FORMAE METAMORPHOSIS Ex Mantegna ad Pussin
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2014年5月
- 書店発売日
- 2014年5月15日
- 登録日
- 2014年5月12日
- 最終更新日
- 2014年5月12日
紹介
本書は、「変身」というテーマについて、オウィディウス主題の「変身」の物語が最も頻繁に描かれた一六世紀から一七世紀という神話画の最盛期を中心に、主に四つの問題意識をもってとりくんでいる。第一に、オウィディウス主題の図像学である。本書では、『変身物語』の挿話や登場人物がどのように解釈され表象されたかを、いくつかの作例の具体的な検証を通して明らかにしていく。第二に、「変身」のイメージが導きだした美術理論上の諸テーマである。オウィディウスによって提示された変身のイメージは、単なる主題にとどまらず、変幻自在な自然とその生成原理のメタファーとして解釈されたり、絵画や彫刻の創作論・作家論として解釈されたりした。不定型なものに形を与え、無生物に生命を与える生成過程としての変身は、本書のタイトル「変身の形態学」の眼目である。第三に、オウィディウス以外の、ほかの文学的典拠の中の「変身」イメージと、その美術への影響である。中でもただちに想起されるのが、変身するのではなく、変身させる登場人物、すなわちアプレイウスの『黄金のろば』や『オデュッセイア』に起源をもち、アリオストやタッソらに受け継がれた魔女たちのイメージである。第四は、このシリーズに共通するアプローチ、「変身」というテーマ性を重視しつつ、同時にそれぞれ特定の時代や地域を代表する作品を具体的に設定し、作品論としても十全な内容と考察の深化を目指すことである。変身の主題は自然と結びつく。「自然」といっても、所産的自然というよりも、生成・成長の変転極まりない様相を生みだす能産的自然(造化)に、より変身の主題は馴染むと思われる。そしてそれは人工的に再現された自然である庭園にも導入しやすい。また変身の主題はきわめて物語的であり、典拠である文学、とりわけ詩と、それに基づく絵画や彫刻の間で競われる藝術比較論の問題意識とも結びつきやすい。そしてとくにオウィディウスを典拠とする場合、変身は人類や花々の創造など、神々による生命と生きものの創造神話でもある。それをなぞることは、芸術による創造の再現であり、かつまた芸術創作そのものに対する考察となり、ひいては芸術そのものについての芸術という、メタ・アート的性格をももたらすことになる。
目次
マンテーニャの《美徳の庭から悪徳を追放するミネルウァ》
──メタモルフォシスと自然の不定形性 喜多村明里
ドッソ・ドッシ《魔女図》──魔女による変身/画家による変身 京谷啓徳
パルミジャニーノの〈カメリーノ装飾〉、あるいは鏡としての愛の噴水 足達 薫
石の変身──ボーボリ庭園のグロッタ・グランデとミケランジェロの《囚人》 金山弘昌
フローラの庭園──ニコラ・プッサンの初期神話画における変身譚 望月典子
註
イタリア美術における〈変身〉という表象──解説にかえて 金山弘昌
人名索引
前書きなど
マンテーニャの《美徳の庭から悪徳を追放するミネルウァ》、ドッソ・ドッシの《魔女図》、パルミジャニーノのロッカ・サンヴィターレの《カメリーノ装飾》、ミケランジェロの《囚人》たちとグロッタ・グランデ、プッサンの《フローラの勝利》と《フローラの王国》、これらのイタリア・ルネサンス美術を舞台に自在無碍に変身するイメージ/表象の存在と意味を探り、それらの内部に生き続ける創造の秘跡を探検する!創造の秘跡を探検する!
版元から一言
シリーズ〈イメージの探検学〉の5冊目、シリーズの充実をご覧ください。
上記内容は本書刊行時のものです。