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21世紀のアメリカ美術 チカーノ・アート 加藤 薫(著) - 明石書店
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21世紀のアメリカ美術 チカーノ・アート (ニジュウイッセイキノアメリカビジュツチカーノアート) 抹消された〈魂〉の復活【オンデマンド版】

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発行:明石書店
四六判
460ページ
並製
定価 4,600円+税
ISBN
978-4-7503-9031-4   COPY
ISBN 13
9784750390314   COPY
ISBN 10h
4-7503-9031-3   COPY
ISBN 10
4750390313   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2007年1月
書店発売日
登録日
2010年2月18日
最終更新日
2015年8月22日
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紹介

マイノリティとして受けた抑圧や差別への反発から自意識を確立し,対抗文化の創造者としての地位を確保してきたチカーノ。アメリカ美術業界において,新しいトレンドを生み出す重要なパワーとなっているチカーノ・アートの発生から現在までの流れをまとめた。

目次

はじめに
謝辞
第1部 チカーノ・アート
 第1章 チカーノとは
  1 美術におけるチカーノ研究の概略
  2 チカーノの定義
  3 コロニアからバリオへ
  4 パチューコからチカーノへ
 第2章 チカーノ・アートの誕生
  1 チカーノ前史
  (1)一九世紀のサウスウエスト
  (2)メキシコ革命から第一次大戦の時代
  (3)一九二〇年代の多様なメキシコ人像
  2 チカーノ・アートのルーツ
  (1)建築
  (2)ヒスパニック・アートのリバイバル運動
  (3)アメリカ合州国内で活躍したメキシコ人美術作家たち
  (4)メキシコ系アメリカ人の美術作家たち
  (5)パチューコ文化の創造
 第3章 チカーノ・アートの流れ
  1 現代美術としてのチカーノ・アート
  2 胎動期――主張するチカーノ・アート
  (1)マイノリティの公民権獲得運動
  (2)キューバ革命への憧れ
  (3)ベトナム戦争への不信
  (4)学生運動とチカーノの美術教育
  (5)チカーノ農業労働者抵抗運動のコミュニケーション
  (6)ネイティブ・アメリカン抵抗運動との連帯
  (7)ドラッグ・カルチャーの洗礼
  (8)フェミニズム運動とチカーナ作家の登場
  (9)刑務所環境とパニョー・アルテの創造
  (10)最適建築の模索
  3 発展期――体制への挑戦と新たな創造
  (1)チョロ/チョラの世界
  (2)フリーダ・カーロの再評価
  (3)越境するチカーノ・アート
  (4)チカーノ・アートの受け皿の拡大
  (5)ニューメキシコのヒスパニックの問題
  (6)パブリック・アートとギャラリー・アート
第2部 チカーノ・アート資料
 1 主要チカーノ・アーチスト・データ
   個人/アーチスト集団/支援組織/美術館など
 2 チカーノ用語解説
 3 チカーノ運動/チカーノ・アート関連年表
 4 参考文献
あとがき
索引

前書きなど

はじめに
 一九九〇年代のアメリカ合州国における美術業界の動向を見渡すと、ますます顕在化してくる多民族・多文化の共生する国家という社会の様相を反映して、それはダイナミックに変貌を遂げようとしています。本書は、この変化を促すひとつの要素として二一世紀に入っても機能し続けるチカーノ・アートについて、チカーノというマイノリティ集団の存在の歴史を絡めながら、その発生から現在までの流れをまとめたものです。
 アメリカ合州国に居住するラティーノ(ラテンアメリカ・カリブ圏出身者)の人口は確実に増えており、二〇世紀末には三五五〇万人を超えました。この数字は長らくマイノリティ最大の集団だったアフリカン・アメリカンの数と肩を並べ、人口比で言えば全人口の約一三%を占めるにいたったということです。おおよそ東京都二つ分の人口がアメリカ合州国中に散らばり、血縁、地縁や情報ネットワークで結ばれているわけですからその影響力は強大で、選挙や商品開発などでも無視できる存在ではなくなりました。当然、ラティーノの持つ価値観、嗜好、独自の文化伝統も注目されるわけです。
 このラティーノ集団全体の半分以上がいわゆるメキシコ系アメリカ人であり、チカーノなのです。メキシコ系アメリカ人は単に数が多いというだけでなく、昔からアメリカ合州国の歴史と密接な関係にある存在でした。日本人にはおなじみのロサンジェルスやサンタフェといった都市名はスペイン語の名称ですが、それはかつてカリフォルニア州やニューメキシコ州がスペイン語を公用語とするメキシコ領であり、もっと古くはスペイン領植民地だったことに由来するものです。つまりアングロサクソンの到来以前にすでにスペイン人の子孫たちによって都市や道路が建設されていたわけですが、その事実はいつの間にか歴史から抹消されてきました。
 チカーノとは、メキシコ系アメリカ人の中でも、メキシコ的な文化伝統により強いアイデンティティーを持つ人たちのことで、ヨーロッパ出身者たちから長年受けてきた抑圧や差別への反発から自意識を確立してきました。特に一九六〇年代以降は、対抗文化の創造者としての地位を確保してきました。チカーノはある日突然生まれてきたわけではありません。しかし日本にいる私たちにとってはチカーノが何を体験し、どのように生きてきたかほとんどわからない、というのが実情でしょう。チカーノのメッセージが込められたチカーノ・アートはそれらを解く鍵でもあるのです。そしてさらにチカーノ・アートは二一世紀のアメリカ合州国社会の動向を示す指針のひとつにもなっています。
 日本とアメリカ合州国との友好関係は、過去にそうだったように、これからも維持していかなければいけないものでしょう。この友好関係維持のためにはアメリカ社会そのものの変化、そしてそれに伴うアメリカ文化やアメリカ現代美術の変化について、従来にも増して真剣に見つめていかなければならないはずです。そのためには日本では権威のようにも機能する半世紀以上前から増殖してきたステレオタイプのアメリカ現代美術の見方や分析の方法では不十分なことを感じていただければ、それは筆者の意図するところでもあります。

著者プロフィール

加藤 薫  (カトウ カオル)  (

中南米・カリブ圏・ラティーノ美術史研究者。
1949年神奈川県鎌倉市生まれ。現在は静岡県御殿場市在住。
国際基督教大学卒。Bゼミ・スクール修了。ウニベルシダ・デ・ラス・アメリカス(メキシコ)大学大学院修了。
メキシコ国立美術研究所研究員などを経て現職は神奈川大学教授。
日本ラテンアメリカ学会会員、美術史学会会員、LASA会員、NALAC会員、スペイン・ラテンアメリカ美術史研究会会員、など。
主な著書
『メキシコ美術紀行』(新潮社)、『ラテンアメリカ美術史』(現代企画室)、『メキシコ壁画運動』(平凡社)、『ニューメキシコ 第四世界の多元文化』(新評論社)、『キューバ★現代美術の流れ』(スカイドア)、和英対峙『現代美術演習』vols.I~V(現代企画室)など。ほか共著、共訳書、論文など多数。

上記内容は本書刊行時のものです。