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エネルギー正義
公正な脱炭素へ
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2026年3月26日
- 書店発売日
- 2026年3月26日
- 登録日
- 2026年1月30日
- 最終更新日
- 2026年6月4日
書評掲載情報
| 2026-05-23 | 日本経済新聞 朝刊 |
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紹介
エネルギー転換の陰で取り残されているのは誰? 電気・ガス料金の高止まりで冷暖房をガマンする貧困家庭、メガソーラーや原発をめぐる地域住民の分断…エネルギーをとりまく格差を明らかにし、その現実を動かす! 欧米発の新概念「エネルギー正義」、日本初の入門書。
目次
はしがき[宇佐美誠]
第1章 現実のただなかでエネルギー正義を考える[宇佐美誠]
1 エネルギーをめぐる現実
2 エネルギー正義という視点
3 この本は何を語るのか
第1部 エネルギーの社会正義
第2章 エネルギー貧困からエネルギー充足へ[奥島真一郎]
1 エネルギー貧困
2 エネルギー充足とエネルギー過多
3 エネルギー充足を実現するための政策
4 「誰一人取り残さない」エネルギー充足の実現のために
第3章 エネルギーシステムの不正義性[マヌエラ・ゲルトルート・ハルトヴィッヒ]
1 ネットゼロの達成の難しさ
2 エネルギーシステムの不正義の前提条件と日本のエネルギーの状況
3 エネルギーシステムの再検討
4 再生可能エネルギーの不正義の課題
5 化石燃料の正義の課題
6 原子力の正義の課題
7 不正義のシステムを変革できるか
第2部 声を上げ始めた人たち
第4章 高レベル放射性廃棄物の不正義[寺本剛]
1 文献調査に翻弄される人々
2 原子力発電の不正義
3 地層処分政策の諸問題
4 議論を取り戻す
第5章 気候変動訴訟の原告とその支援者[一原雅子]
1 エネルギーシフトと気候変動訴訟
2 震災後のエネルギー政策を問う訴訟
3 原告とその支援者が抱くエネルギーへの希望と現状
4 将来にわたるエネルギー正義のために
第6章 若者の気候変動運動[内藤光里・宇佐美誠]
1 立ち上がった若者たち
2 エネルギー正義を求めて
3 社会からのさまざまな反応
4 活動家の想い
第7章 エネルギー正義の希望を紡ぐ[宇佐美誠]
1 エネルギー正義論を解きほぐす
2 合流点としてのエネルギー正義論
3 公正な移行を広げて深める
参考文献一覧
索引
編者・執筆者紹介
前書きなど
はしがき
エネルギーは私たちの生活の土台である。最近の調査によれば、家庭の電力消費のうち、エアコンで15%、冷蔵庫で15%が使われている。電気をもし使えなければ、寒い冬に暖をとることも、夏の暑さをしのぐことも、食中毒を心配せずに食べることもできないのだ。また、ガス器具で調理している家庭は全国的に多く、北日本では暖房をガスや灯油に頼っている家庭も少なくない。「エネルギー」という言葉を聞くと、気候変動対策としてのエネルギー転換や、ロシアのウクライナ侵攻後に見られた原油価格の高騰など、世界のマクロな情勢のなかで日本がおかれている立場を思い浮かべる人は、きっと少なくないだろう。だが、エネルギーなしに私たちの生活は成り立たないのだから、この社会で日々の暮らしに生じているミクロな事柄にも目を向ける必要がある。
電気・ガスの料金が高止まりするなか、冷暖房や給湯などの基本的なニーズさえも十分に満たせない人たちが、増えている。また、メガソーラーなどの設置をめぐって、住民の反対運動が各地で相ついで生じてきた。原子力発電から出る放射性廃棄物の処分場候補地では、賛否をめぐって住民に亀裂が生じている。さらに、石炭火力発電を止めさせようと訴訟が起こされ、気候変動対策の強化を求める若者たちの運動も勢いを増している。
このように多種多様な問題を統一的な仕方で把握できる言葉がある。「エネルギー正義」である。日本では、ほとんど見かけない言葉だが、欧米では、これを用いて数多くの実証研究や理論研究が積み重ねられてきた。本書は、日本で初めてエネルギー正義という角度から、この国のエネルギーをとりまく厳しい現実を明らかにするとともに、その現実を動かしてゆく可能性を探る一冊である。さまざまな学問知を縒りあわせるため、経済学・政策学・倫理学・法学などから執筆者が集まっている。
まず、エネルギーをめぐるさまざまな問題を見た後、エネルギー正義について解説と検討を行っている(第1章)。第1部では、エネルギー利用の過少と過剰や(第2章)、供給にまつわる分配や手続きの正義の問題が(第3章)、それぞれ浮き彫りにされ、その改善策が論じられる。第2部では、わが町や日本の現状を変えようと苦闘する人たちについて、困難な状況や複雑な想いが描き出されてゆく。高レベル放射性廃棄物処分場の候補地住民(第4章)、石炭火力発電を止めるための訴訟の原告団と支援者(第5章)、そして気候変動対策の強化を求める若者の活動家(第6章)である。最後に、エネルギー正義論の背景にある環境正義論と気候正義論を見た上で、日本社会の現実を変えてゆく理念として公正な移行について考える(第7章)。
本書の内容は、エネルギーに関する最新データや、執筆者による独自の調査、そして国際的な研究成果にもとづく。同時に、エネルギー全般や再生可能エネルギー・原子力発電に、あるいは気候変動に関心のある多くの人が、無理なく読み進められるようにと、平明に書かれている。また、図表や写真によって、視覚的にも理解しやすくしてある。他方、巻末には多数の最新文献をあげており、研究者・大学院生にとっても有用な一冊となっている。そして、すべての章の論述が平易で精確となるために、査読制をとった。読者がこれから目にするのは、査読コメントをふまえて慎重に仕上げられた文章である。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。
