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南アフリカの人種隔離政策と歴史の再構築 上林 朋広(著) - 明石書店
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南アフリカの人種隔離政策と歴史の再構築 (ミナミアフリカノジンシュカクリセイサクトレキシノサイコウチク) 創られた伝統、利用される過去 (ツクラレタデントウリヨウサレルカコ)

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発行:明石書店
A5判
368ページ
上製
価格 5,800円+税
ISBN
978-4-7503-5902-1   COPY
ISBN 13
9784750359021   COPY
ISBN 10h
4-7503-5902-5   COPY
ISBN 10
4750359025   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2025年2月25日
書店発売日
登録日
2025年2月4日
最終更新日
2025年3月11日
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紹介

少数派の白人入植者が多数派アフリカ人を抑圧する南アフリカの人種隔離体制。その背後には「伝統」と「過去」の巧妙な利用があった。本書は、日常生活の中でいかにその体制が維持され、正当化されてきたのかを具体的な事例で解き明かし、現代の人種差別問題に新たな視点を提供。

目次

序章
 はじめに
 第1節 問題設定
 第2節 先行研究と本書の視角
 第3節 本研究の方法論的視角
 第4節 本書の章構成
 第5節 史料、用語について

第1章 模倣すべき「過去」――南アフリカ・ナタール植民地における武装蜂起と人種隔離政策の形成
 はじめに
 第1節 リザーブの変容――バンバタの反乱とシェップストンの統治の再評価
 第2節 エヴァンズの領域的人種隔離論
 第3節 ブルックスと一九二七年原住民行政法――ナタールから連邦レベルの原住民政策へ
 第4節 ニコルズと一九三六年信託土地法・原住民代表法――信託統治としてのリザーブ
 おわりに

第2章 南アフリカにおけるアメリカ南部黒人教育の受容
 はじめに
 第1節 循環的なトランスナショナル・ヒストリーを目指して
 第2節 南部黒人教育への植民地アフリカからの注目
 第3節 白人側の受容
 第4節 アフリカ人によるタスキーギ的理念の受容
 第5節 タスキーギに透かし見る、隠された主張
 おわりに

第3章 キリー・キャンベルの収集活動から見る歴史意識の変容――南アフリカにおけるアーカイブズ構築の一事例
 はじめに
 第1節 集めることとアイデンティティ
 第2節 「故国への情熱的な愛着」――キリー・キャンベルの生涯と収集活動
 第3節 「メンデルスゾーンにも挙げられていない」――アフリカナとは何か
 第4節 過去が意味するものの変容
 おわりに

第4章 ズールー・ナショナリズムにおける「曖昧さ」の縮減――一九三〇年代・四〇年代のズールー語教科書出版における白人行政官と保守的ズールー知識人の協調
 はじめに
 第1節 ズールー語で書き・読むという経験
 第2節 学校教育におけるズールー語文学とズールー語による歴史叙述
 第3節 ズールー語文学・歴史科目における試験問題による読み方の規定
 おわりに

第5章 「部族」の歴史を書く――アフリカ人学生・教員の歴史エッセイと白人審査官
 はじめに
 第1節 「部族」の歴史を書くこと
 第2節 マルコムの「部族」に関する見解
 第3節 「部族」の歴史を書く――ズールー部族歴史エッセイ・コンテスト
 おわりに

第6章 時間を遡行する――ジョン・デュベの行儀作法書における「文明」と「伝統」
 はじめに
 第1節 ズールー語著述家としてのジョン・デュベ
 第2節 比較という方法――読者に及ぼす影響を想定して
 第3節 写真の利用
 第4節 『行儀作法』の読解――「現在」と「過去」を架橋する
 第5節 架橋するための選択
 おわりに

第7章 部族と普遍の間――Z・K・マシューズの原住民法研究から見る南アフリカ市民権要求の論理
 はじめに
 第1節 ミッション・エリートから人類学者へ
 第2節 南アフリカ市民権の拡充を求めて
 第3節 自由憲章の起草を目指して――アフリカ・ナショナリズムとの思想的対立
 おわりに

終章
 はじめに
 第1節 受苦の共同体
 第2節 歌う大統領ズマと排外主義
 第3節 人種隔離体制下の公共圏と主体形成
 おわりに

 あとがき――はじまりの本

 註
 史料文献一覧
 人名索引
 事項索引

前書きなど

序章 はじめに

 (…前略…)

第4節 本書の章構成

 本書は、全7章からなり、ナタール州及び連邦全体でのアフリカ人の「伝統」を用いた人種隔離統治の形成と、その統治にアフリカ人エリートが組み込まれていく過程、及び抵抗運動においてその協力関係が放棄されるに至るまでの過程を描く。第1章と第7章はナタール州と連邦レベルでの議論をつなぐ形で、人種隔離政策におけるシェップストン・システムの利用と、アフリカ人エリートの一部が彼らを統治体制に組み入れようとする政府の試みを拒否したことを説明する。この二つの章は本書の大枠を設定する。それに対して、間に挟まる第2章から6章は、白人入植者とアフリカ人を法的・空間的に分離し、統治する体制において、いかにしてアフリカ人の「伝統」が規範的なものとして教えられ浸透していったのかを跡付けることを目的としている。
 第1章では、ナタール植民地における領域的人種隔離論を検討する。同植民地では、人頭税への反対から生じた一九〇六年のアフリカ人首長バンバタの反乱以後、「原住民」政策見直しの機運が生じた。本章は、ナタール議会議員モーリス・エヴァンズを起点とする領域的人種隔離論の系譜をたどる。(……)
 第2章は、南アフリカにおけるアメリカ南部黒人教育の受容を、白人側・黒人側に分けて論じた上で、タスキーギ学院を中心とした職業訓練を重視する教育理念の受容に向けた活動が、南アにおいては、白人と黒人が緊張感を持ちながらも関わりあう場になっていたことを明らかにする。すなわち、白人教育者にとってタスキーギ学院のモデルは、そのパターナリスティックな意匠を損なうことなく、アフリカ人を従順な労働者として居留地に押し込めるための教育改革を推進する際に役に立った一方で、アフリカ人教員・政治家にとっては白人支配体制から譲歩を引き出し、黒人の自立性と機会を拡大するための手段であったのだ。(……)
 第3章は、南アフリカ・ナタール州ダーバンの郷土史家キリー・キャンベルに注目し、彼女の史料収集活動を詳述することで、彼女のアーカイブ形成の試みが、一方で入植者社会の発展と他方でアフリカ人の伝統保持を目的とする特定の歴史像を提示することにつながっていたことを明らかにする。(……)
 第4章は、一九三〇年代から五〇年代にかけてのナタール州のアフリカ人教育におけるズールー文学・歴史教育を分析することで、ズールー・ナショナリズムの内容とその広がりを明らかにする。(……)
 第5章は、キリー・キャンベルが主催し、マルコムが審査官を務めたズールー部族歴史エッセイ・コンテストを対象とする。本章は、コンテストに応募されたズールー人学生の歴史エッセイを分析することで、「創られた伝統」としての「部族」がいかに学校教育という回路を通じて浸透していったかを論じる。本章は、ズールー人の学生や教師が書き送り、そしてマルコムが読むという一連のプロセスを植民地支配という制約を受けながら成立した白人行政官と教育を受けたアフリカ人との間の交渉の場としてみる。(……)
 第6章では、南アフリカ・ナタール州においてズールー語教科書で記述された現在と過去の行儀作法を比較分析し、ミッション教育を受けたアフリカ人エリートの人種隔離政策への対応の一端を明らかにする。具体的には、宣教団アメリカン・ボードの下で生まれ育ち、オーバリン大学に留学した、アフリカ人教育家ジョン・デュベがズールー語で執筆した行儀作法書Ukuziphatha kahle(英語タイトルGood manners 一九二八年初版、著者が入手できたのは、一九三五年の第二版のみ)を検討する。(……)
 第7章では、アフリカ人人類学者マシューズ(Z. K. Matthews)を対象として、彼の政治思想の変遷をたどることで、人種間の協調という幻想が崩れ、暴力を伴う解放運動が黒人運動家たちに肯定されていく過程を明らかにする。本章は、マシューズが人種隔離政策を支持した「原住民」問題の専門家と、人類学への関心を共有しながらも、政治姿勢としては大きく異なる立場をとった理由を明らかにする。(……)

著者プロフィール

上林 朋広  (カンバヤシ トモヒロ)  (

一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。
一橋大学大学院社会学研究科特任講師、日本学術振興会特別研究員CPDを経て、現在甲南大学文学部講師。
専門は、南アフリカ近現代史。
主要著作:『ズールー語が開く世界:南アフリカのことばと社会』(風響社、2022年)、「方向性の喪失?:民主化後三〇年、南アフリカ歴史学の現在」『歴史評論』891号(2024年):93-102頁

上記内容は本書刊行時のものです。