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〈逆上がり〉ができない人々
発達性協調運動症(DCD)のディストピア
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2024年12月15日
- 書店発売日
- 2024年12月13日
- 登録日
- 2024年11月19日
- 最終更新日
- 2025年1月31日
紹介
二足歩行すらぎこちない――体を思い通りに使えない世界。極端な不器用が「発達性協調運動症(DCD)」であれば、日常のあらゆる場面が壁となる。本書は「知られざる発達障害」であるDCD当事者の生きづらさを共有し、「できて当然」という社会の圧力を問いなおす。
目次
プロローグ――そしてディストピアが始まる
第1章 発達性協調運動症に関する基本事項
第2章 私のオートエスノグラフィー――床でゴロゴロしながら人生の大半を過ごしてきた
コラム1 野比のび太とダニエル・ラドクリフ
第3章 当事者の親へのインタビュー
第1節 フジさんへのインタビュー――作業療法士として、わが子の発達障害に気づいた瞬間
第2節 エフくんのお母さんへのインタビュー――この子の特性を受け入れるまでの葛藤を超えて
第3節 サクラさんのお母さんへのインタビュー――まわりの子は気にせず、じぶんの子だけを見つめて
コラム2 感覚統合療法について
第4章 当事者へのインタビュー
第1節 柏淳先生へのインタビュー――知的レベルによって人間関係の問題を克服する
第2節 エモさんへのインタビュー――表情作りの苦手が引き起こした集合写真の悲劇
第3節 ちーさんへのインタビュー――二足歩行にずっと苦労する人生
第5章 問題をどう解決するか
エピローグ――もし発達性協調運動症の人が多数派だったら?
あとがき
前書きなど
プロローグ――そしてディストピアが始まる
(…前略…)
本書の書名は『〈逆上がり〉ができない人々――発達性協調運動症(DCD)のディストピア』と名づけることにした。本書を読んでいただければ理解していただけるように、鉄棒の「逆上がり」は、発達性協調運動症の当事者の多くがクリアできないままになるか、平均よりもかなり遅れてクリアすることになる体育の課題のひとつだ。私自身にとっては、どうやっても逆上がりができないということが、人生で経験した最初の挫折のひとつだった。その衝撃から始まった、さながら永遠の地獄であるかのように続いた「なぜかじぶんにだけできない」という諸体験の内側を、つまり理想郷(ユートピア)の反対の「ディストピア」を私は現在も生きている。
本書の第1章では発達性協調運動症についての基本的な理解を得ていただく。第2章では、私自身の発達性協調運動症がどのようなものかを記している。第3章では発達性協調運動症の子どもを育てる親たちへのインタビューを、第4章では発達性協調運動症と診断された、またはそう自認する成人当事者たちへのインタビューを掲載する。それぞれのインタビューには、私なりのコメントを追記した。第5章では発達性協調運動症に関する問題の解決について考察し、エピローグでは「もし発達性協調運動症の人が多数派だったら?」という思考実験を展開する。
読者のみなさんが、私たち発達性協調運動症の当事者が体験している世界を内側から共有し、この発達障害に対する理解を深めていただけるのなら幸いだ。
上記内容は本書刊行時のものです。