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反中絶の極右たち シャン・ノリス(著) - 明石書店
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反中絶の極右たち (ハンチュウゼツノキョクウタチ) なぜ女性の自由に恐怖するのか (ナゼジョセイノジユウニキョウフスルノカ)
原書: Bodies Under Siege: How the Far-Right Attack on Reproductive Rights Went Global

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発行:明石書店
四六判
328ページ
上製
価格 2,700円+税
ISBN
978-4-7503-5862-8   COPY
ISBN 13
9784750358628   COPY
ISBN 10h
4-7503-5862-2   COPY
ISBN 10
4750358622   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2025年1月31日
書店発売日
登録日
2024年11月27日
最終更新日
2025年1月20日
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紹介

極右の中で白人の滅亡への恐怖は、女性の中絶を阻む意志へと直結している。超富裕層の資金を得てアメリカ政治で主流化し、欧州でも覇権を握りつつあるファシズムの最深部を、気鋭のフェミニスト・ジャーナリストが追う。

目次

 用語について

 序文
 はじめに

第1章 イデオロギー――ファシストが考える女の居場所
 概念1――自然の秩序
 概念2――常時戦争状態
 概念3――神話的過去
 自由への恐怖
第2章 過激論者――反中絶の極右たち
第3章 潜入――極右の政治を主流に運ぶネットワーク
第4章 同盟者――極右陣営に付く(一部の)女たち、伝統的な妻から反トランス活動へ
第5章 金――反中絶右派の資金源は誰なのか
第6章 政治家たち――極右はいかにして世界の政府を動かすのか
第7章 転換点――どちらの未来を私たちは選ぶのか

 訳者あとがき[牟礼晶子]
 解説[菊地夏野]

 註
 索引

前書きなど

序文

 本書二回目の編集作業が終盤に入った頃、中絶の権利を全米に保障した一九七三年ロー対ウェイド判決が覆されたというニュースを聞いた。私は、中絶支持の活動家一〇人に話を聞く夢のように充実した一〇日間を過ごしたケニアの取材旅行から戻ったばかりだった。帰国したその日、夜の飛行機のせいでぼやけた目で見たこのニュースに、私は打ちのめされた。
 意外だったわけではない。何年も前から私は、ローの終わりはいずれ来ると、ことあるごとに言ってきた。大惨事が来ると忠告しては疑いの目を向けられて話も聞いてもらえないカサンドラの悲哀を味わってきたのだ。全米で認められている中絶の権利は、いずれ必ず終わる。本書の調査の過程、本書で結実に至った数年の調査報道の仕事を通じて、私はこの恐怖と闘ってきた。トランプ政権下で勢いを得た白人キリスト教ナショナリズムは、女性の人権が壊滅するまで引く気はないようだ。この状況下、中絶の権利のために闘う者として、私たちは諦めるわけにはいかない。
 私の職業はジャーナリストだが、本書はニュース記事ではない。おわかりのように最終編集でローの終わりを反映する手を入れているけれど、覆された事情や判決以降、女性と少女の身体に刃を剥いた恐怖を特定して、こと細かに記すことはしていない。
 本書はグローバルノースで進む中絶への攻撃を強固に下支えしているミソジニーと、白人至上主義のパターンを読者に示すために書いた本だからだ。
 同様に、本書の大部分はボリス・ジョンソンが首相だった当時、そして「イタリアの同胞」が同国の調査で支持率を急激に上げはじめる前に書いており、刊行までのリードタイムの制約下、できる限り最新状況に合わせて手を入れはしたけれども、ニュースサイクルを詳細に追うことはあまり意味がない。それよりも、女性の権利が変えられていく裏にあるパターンに着目してもらいたいと思う。
 やがて、それを出版企画書にまとめて本書を執筆することになったのだが、中絶に対する極右の攻撃を報道しはじめた当時、私は反中絶運動の原動力はミソジニーと白人至上主義だと説明しては、ぽかんとした顔をされていた。中絶への攻撃が白人種抹殺にまつわる陰謀論とつながった極右の計略だと言っても、伝わらなかったのだ。
 今はそれも変わってきた。変わった理由のひとつは、私が本書で追及している極右が女性の身体に抱く発想が、普通にそこここで聞かれるようになったことだ。インターネットの暗い一角に潜んでいた極端なネオファシストの中絶観、人種と性に関する見かたが、パイプラインを通じて政治の主流に流れ込んだのだ〔第1章参照〕。極右は中絶禁止を、人種大交替を巻き返す手段と見ている〔同上〕。このことをどうしても伝えたい。テレグラムチャンネルに生息するだけの気色の悪い出生主義者だと嗤っていられる状況ではもうない。中絶に反対する政治の指導者が、それを大声で口にするようになったのだ。

 (…後略…)

著者プロフィール

シャン・ノリス  (シャン ノリス)  (

作家兼、調査報道ジャーナリスト。英国のByline TimesやopenDemocracyなど、さまざまな媒体で極右運動とその主流派への移行を取材。2012年にはブリストル女性文学フェスティバルを立ち上げ、8年間運営した。英国のフェミニズム運動の第一人者であり、男性による女性への暴力から移民の権利、貧困と不平等に至るまで、多岐に及ぶ執筆活動がThe Guardian、New Statesman、The iなど多くの新聞・雑誌に掲載されている。

牟礼 晶子  (ムレ アキコ)  (

独立行政法人内部翻訳・編集者を経て現在フリーランス翻訳者。女の空間NPO理事。共訳書に『THE GIRLS』(大月書店、2022年)、『オリンピックという名の虚構』(晃洋書房、2021年)、翻訳協力に『女性・スポーツ大事典』(西村書店、2019年)、英訳記事に“From an earthquake-hit town that wants to forget, not tell, and not prepare for another one,” Voices from Japan No.36 (March 2022), Asia Japan Women’s Resource Center (AJWRC), pp.38-44ほか。

菊地 夏野  (キクチ ナツノ)  (解説

名古屋市立大学人間文化研究科准教授。専攻は社会学、ジェンダー/セクシュアリティ研究。単著に『日本のポストフェミニズム』(大月書店)、『ポストコロニアリズムとジェンダー』(青弓社)など、編著に『クィア・スタディーズをひらく』(1~3巻、晃洋書房)、共著に『戦争社会学』(明石書店)など、訳書解説にシンジア・アルッザほか『99%のためのフェミニズム宣言』(人文書院)ほか。

上記内容は本書刊行時のものです。