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華僑・華人を知るための52章
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2023年4月5日
- 書店発売日
- 2023年4月4日
- 登録日
- 2023年2月28日
- 最終更新日
- 2023年5月2日
紹介
在外中国人を指す“華僑”と、中国にルーツを持つが外国籍の“華人”。世界の華人は5000万人を超え、チャイナタウンは隆盛を誇っている。世界各国のチャイナタウンを自ら歩き続けて40余年、観察と研究を積み重ねてきた地理学者が、華僑・華人の歴史と今を縦横無尽に語り尽くす。
目次
はじめに
地図「世界の主な国の華人人口分布(2021年)」
地図「中国の省と本書に関連する主な都市」
Ⅰ 華僑・華人とチャイナタウン
第1章 華僑・華人とは――落葉帰根から落地生根へ
第2章 日本における「華僑」「華人」という用語――学校教育、新聞紙上では
【コラム1】「まだ私たちを『華僑』と呼ぶのか」
第3章 老華僑と新華僑――拡大、多様化する世界の華人社会
第4章 華人再移民――移住先からさらに第三の地域へ
【コラム2】パリにもチャイナタウンが
第5章 華人の人口と分布――世界に拡散する華人
第6章 チャイナタウン――観光地とは限らない
第7章 チャイナタウンの景観――中国式楼門、牌楼を中心に
第8章 オールドチャイナタウンとニューチャイナタウン――チャイナタウンの類型化
【コラム3】「池袋チャイナタウン」の名付け親として
Ⅱ 歴史
第9章 中国人の海外移住――西欧の植民地化以前
【コラム4】インドネシア語、マレー語になった中国語
第10章 東南アジアへの華人の進出――植民地化に伴って
第11章 苦力貿易――黒人奴隷に代わる労働力として
第12章 ゴールドラッシュと大陸横断鉄道の建設――「金山」を目指して
第13章 華人排斥――チャイナタウン襲撃、華人虐殺
【コラム5】「西のエリス島」、サンフランシスコ湾のエンジェル島
第14章 ニョニャ、ババ、プラナカン――土着化した華人
第15章 帰国華僑――「海外関係」、華僑農場、帰国華僑聯合会
第16章 植民地の独立と中華人民共和国の成立――華人とホスト社会の対立の中で
【コラム6】シドニー郊外のインドシナ系華人のチャイナタウン、カブラマッタ
第17章 中国の改革開放と新華僑――日本での中国人就学生の急増
Ⅲ 出身地と方言集団
第18章 僑郷――華僑の故郷
【コラム7】陳嘉庚の故郷、福建省厦門市の集美
第19章 方言集団――外国語のような中国語方言
第20章 広東人――存在感が際立つ集団
第21章 福建人(閩南人)、福州人、福清人、興化人――福建の多様な方言集団
第22章 潮州人――タイの多数派集団
第23章 客家――少数派ながら個性的な方言集団
第24章 海南人、温州人、三江人、山東人――固有の特色をもつ方言集団
Ⅳ 経済
第25章 華人経済の伝統的特色――苦力から華商へ
【コラム8】タイ北部の山地民族の村でみた華商の原点
第26章 華僑送金――信局から銀行へ
第27章 華人財閥――華人の伝統継承、進む世代交代
【コラム9】タイの華人財閥、CPグループ
第28章 華人企業の中国投資――改革開放後の華人企業の戦略変化
第29章 グローバル化する華人経済――世界華商大会の開催
第30章 シリコンバレーで活躍する華人――ヤフー、ユーチューブ、そしてZoomも
第31章 新華僑の海外進出――新たなチャンスを求めて新天地へ
【コラム10】南アフリカ、ヨハネスブルグのチャイナモール
Ⅴ 政治
第32章 海外の華人に支援を求めた孫文――「革命いまだ成らず」
第33章 中国と華人の政治的関係――僑務委員会と華人の抗日ゲリラ
第34章 インドネシアの華人政策の変遷――華人排斥から対中関係重視へ
第35章 マレー人優先政策下のマレーシアの華人社会――5・13事件からブミプトラ政策へ
第36章 マレーの大海に浮かぶ華人国家、シンガポール――リー・クアンユーの政治手法
第37章 「莫談国事」から政治参加へ――アメリカ大統領予備選挙へも
第38章 中国の「一帯一路」の推進と華人――ミャンマー、スリランカ、インドネシアなど
Ⅵ 社会・教育
第39章 華人社会の伝統的組織――地縁・血縁・業縁から学縁へ
第40章 海外の華人社会における秘密結社――歴史と今日的問題
第41章 世界各地で発行される華字紙――華人社会の地域的特色を反映
【コラム11】日本の中国語フリーペーパー
第42章 華文教育と華文学校――華人社会の「三宝」の一つとして
第43章 南洋大学の設立と「閉校」――英語重視政策下の華文教育最高学府の命運
【コラム12】南洋大学学生会緊急会員大会
第44章 華人および中国人の海外留学――帰国するか、留学先に留まるか
Ⅶ 食文化と生活
第45章 生業としての食文化――屋台からフードコートへ
第46章 多様な食文化――東南アジアの華人社会を中心に
第47章 中国料理のグローバル化――世界における華人社会の拡大とともに
【コラム13】ヨーロッパの“wok”とアメリカの「パンダエクスプレス」
第48章 日本的中国料理としての「中華料理」――餃子、ラーメン、町中華、ガチ中華
【コラム14】韓国庶民の「中華料理」、チャジャンミョンとチャンポン
第49章 居住様式――ショップハウスからゲーテッド・コミュニティまで
【コラム15】チャイナドレス(旗袍)の歴史的背景
第50章 宗教――儒教・仏教・道教、三教の混交
第51章 華人文学――東南アジア、世界、そして日本
第52章 世界の華僑・華人博物館――華僑・華人をもっと知るために
華僑・華人をもっと知るための参考文献・資料
おわりに
前書きなど
はじめに
(…前略…)
本書は、華僑・華人に対して少しでも関心がある方、あるいはこれまではほとんど関心がなかった人たちにも、華僑・華人についてもっと知っておいてほしい、理解してほしいことを1冊にまとめ上げたものである。明石書店の「エリア・スタディーズ」は、各分野の複数の専門家による共著形式が多い。私自身も、多数の華人研究者、メディア関係者、一般の華人の協力を得て、山下清海編『華人社会がわかる本―中国から世界へ広がるネットワークの歴史、社会、文化』(明石書店、2005年)を出版したことがある。
しかし今回、本書は私の単著となった。これは、世界各地で華人研究のフィールドワークに40年以上取り組んできた、私の華人に対する強い思いがこもっていると解釈していただけたら幸いである。
本書の全体構成について若干説明しておこう。全52章は、「華僑・華人とチャイナタウン」「歴史」「出身地と方言集団」「経済」「政治」「社会・教育」「食文化と生活」の7つのセクションからなる。読者は目次をご覧になり、興味関心のある章から先にお読みいただいて結構である。ただ、「華僑」「華人」という用語の使い方についてはやや説明が必要であるため、まず第1章さらには第2章をお読みになる方がよいだろう。
本書では、多くのコラムも加えた。華人社会の臨場感のようなものが少しでも伝わってほしいとの私の願いからである。少々無理を言って、多くの写真も掲載してもらった。本書に掲載したすべての写真は、私のカメラで撮影したものである。厳密に言えば、第42章の写真1だけは、近くにいた人にシャッターを押してもらったもので、それ以外は私自身が撮影した写真である。
本書執筆に際しては、多数の著書、論文等を参考にさせてもらった。本書は学術専門書ではなく広く多くの読者を想定したものであるため、各所において文献の引用の明示は控えた。本書をお読みいただいて、華僑・華人についてさらに知りたい、情報がほしい方は、巻末に掲載した「華僑・華人をもっと知るための参考文献・資料」をご覧いただきたい。
上記内容は本書刊行時のものです。