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面会交流と共同親権 熊上 崇(編著) - 明石書店
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面会交流と共同親権 (メンカイコウリュウトキョウドウシンケン) 当事者の声と海外の法制度 (トウジシャノコエトカイガイノホウセイド)

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発行:明石書店
A5判
208ページ
並製
価格 2,400円+税
ISBN
978-4-7503-5520-7   COPY
ISBN 13
9784750355207   COPY
ISBN 10h
4-7503-5520-8   COPY
ISBN 10
4750355208   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2023年1月31日
書店発売日
登録日
2022年12月21日
最終更新日
2023年1月30日
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書評掲載情報

2023-03-18 東京新聞/中日新聞  朝刊
評者: 森田ゆり(エンパワメント・センター主宰)
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紹介

離婚後の「共同親権」について、賛否が割れる中、2022年11月にようやく法制審議会の中間試案がまとめられた。今後パブリックコメントを経て議論に入る状況にある。
本書では、実際に面会交流の調停をしている当事者(同居親)や面会交流している子どもの「生の声」をはじめ、アメリカ、イギリス、オーストラリアの事例、さらには面会交流に直面する子どもたちの精神状態を踏まえて、元家庭裁判所調査官、弁護士、家族法学者、精神科医が考察・提言する。
子どもの意思が尊重され、子どもの安心が保障される「面会交流」と「親権」のあり方とは何かを問う一冊。

目次

 はじめに[熊上崇]

第1章 面会交流の諸問題ならびに関する国内外の研究動向[熊上崇]
 1 面会交流の諸問題
 2 映画『ジュリアン』『サンドラの小さい家』から見る面会交流
 3 近年の海外の法制度の変遷
 4 子どもにとって安心できる面会交流のために
 まとめ

第2章 国内および海外(イギリス、アメリカ、オーストラリア等)の実情と法制度
1 海外での面会交流の実情および共同監護に関する法制度の変遷[小川富之]
 はじめに――問題意識
 1 日本における共同親権制導入の議論
 2 欧米諸国の現状
 3 欧米諸国では「共同親権制」が採用されているか?
 4 日本の現行法制で共同養育は実現できる
 5 国連「児童の権利委員会」の勧告と日本の離婚後の子の養育法制の課題
 6 共同親権制の危険性
 おわりに――イギリス司法省の報告書について
2 オーストラリアの家族法、面会交流などの制度、実情[石堂典秀]
 はじめに
 1 オーストラリア家族法における親責任と子どもの養育概念
 2 DVと州法
 3 養育費改革
 4 オーストラリアにおける離婚後の監護の実態
 最後に

第3章 親権、面会交流に関する家裁実務からみえること[岡村晴美]
 はじめに
 1 離婚後の親権について
 2 面会交流について
 おわりに――吹き荒れた「面会交流原則実施論」に抗えなかった反省をこめて

第4章 家庭裁判所で面会交流の調停を利用した同居親へのアンケート調査結果[熊上崇]
 調査実施者について

第5章 家庭裁判所の面会交流調停を経験した同居親の体験談
 1 面会交流の当事者(同居親)の会の方々より
 2 9人の体験談

第6章 面会交流に関する子どもの声を聴く子どもへのアンケート調査結果と体験談[熊上崇]
 はじめに
 1 面会交流をしていた人の調査結果
 2 面会交流をしていなかった人への調査結果
 3 家庭裁判所に意見を述べた経験――20歳大学生女性の体験談

第7章 子どもたちの声を聴く面会交流にむけて[山田嘉則]
 1 子どもは差別されている
 2 子ども差別とトラウマ
 3 DV被害親子のケース
 4 離婚後面会交流の問題点
 5 ケース続き――面会交流
 6 聞かれない子どもの声
 7 子どもの声を聞く

終章 子どもを守る面会交流へ[熊上崇]

 おわりに[岡村晴美]
 執筆者紹介

前書きなど

はじめに

 本書は、離婚・別居後の、子どもと別居親の面会交流について、「裁判所決定(court order)の面会交流は、子どもの心身にとって有益か」という視点に対する、当事者(同居親、子ども)の声およびこれらのケースに精通する弁護士、家族法法学者、精神科医の解説から成るものです。
 面会交流を論じる際に、留意すべき点があります。それは「自主的に行われる面会交流」と、子どもへの強制力を伴う「裁判所決定による面会交流」を区別することです。
 別居・離婚後も子どもと別居親が、子どものペースや意思を尊重し連絡を取り合う自主的な面会交流ができれば、子どもにとって、両親から関心を持たれ、愛されている、という感情を抱くことができるでしょう。
 しかし、裁判所の決定による面会交流は、調停や審判には判決と同じ効力があり、履行しないと、強制執行や間接執行が行われることもあり、子どもが行きたくない時や心身の不調の時でも、面会交流を履行しなければ、同居親に間接強制金の支払いなどが課されることがあります。
 この「裁判所決定による面会交流」は、一般の市民の方々はもとより、家族法や臨床心理学の研究者にも想像しづらいようです。確かに、離婚訴訟を除き、離婚や面会交流に関する家庭裁判所の調停や審判は非公開です。そのため、「裁判所決定による面会交流」も「自主的に行われる面会交流」の延長で、子どもの成長のために必要だと思われるのかもしれません。
 しかしながら、家庭裁判所で面会交流が話し合われるのは、当事者間で協議ができなかったケースです(民法766条2項)。
 最高裁判所の「司法統計年報 3家事編」(2021)によると、家庭裁判所の面会交流調停の新受件数は14,127件でありここ数年増加傾向にあります。
 「司法統計年報 3家事編」(2021)によると、婚姻関係事件60,542件(うち妻からの申立ては44,040件)の、妻側の申立て理由(複数回答可)のうち、精神的DVは25.1%、身体的DVは20.5%と、DVが主張される事件が一定割合見られます。
 家庭裁判所の調停に至るケースは、当事者間で顔を合わせて話し合ったりメールや電話でのコミュニケーションを一方が拒否したりして、双方の言い分が大きく隔たることが多くお互いに不信感が大きく、協議が困難な状態です。
 そして、面会交流についてはDVの有無での争いや、子どもが別居親に会いたくないと面会交流を拒否する事例では、双方の主張の隔たりが大きく、家庭裁判所では、解決に非常に苦労しています。こうした事例で、調停や審判により家庭裁判所の決定がなされると、それは判決と同じ効力を持ち、子どもへの強制力が生じてきます。強制力を伴う面会交流が子どもにとってプラスなのか、マイナスなのかを考えることが重要です。
 面会交流は子どもにとって有益であるとする研究者は、米国のウォーラースタイン博士の離婚家庭の子どもを25年間追跡した研究(Wallerstein,Lewis,& Blakeslee 2000,邦訳:早野,2001)を引用しています。確かに、ウォーラースタイン博士は、子どもに別居親(多くは父親)が面会交流に来ないことで、子どもが別居親から見捨てられた、愛されていないと感じ、自暴自棄になって非行など思春期の逸脱に至る例を描いています。このような事例から、面会交流は子どもにとって必要だとの引用がしばしばなされますが、ウォーラースタイン博士は、「裁判所命令による面会交流」については、「裁判所の命令の下、厳密なスケジュールに従って親を訪ねていた子どもたちは、大人になってから親のことを嫌い、彼らは成長後に、無理矢理訪ねさせられていた親を拒絶する」と論じています(Wallerstein,Lewis,& Blakeslee 2000,邦訳:早野,2001、p.282)。
 このように、面会交流を裁判所命令によって強制される子どもについて、大人になってからかえって別居親との関係が疎遠になることや、第1章に詳述するように、子ども時代や思春期に、面会交流の強制によって、友人関係をあきらめたり、つらい思いをしたりする姿が描かれているのです。
 このウォーラースタインらの指摘を、家庭裁判所関係者はどのように受けとめるべきでしょうか。
 この面会交流の問題については、子どもの意思を尊重する、子どもの心身の状況に配慮する、子どもの安全を確保する、という、子ども中心の視点が何より必要です。
 近年発行されたイギリス司法省報告(UK Ministry of Justice,2020a)およびイギリス司法省文献レビュー(UK Ministry of Justice,2020b)においても、裁判所命令による面会交流を経験した子どもの心理や、面会交流中に子どもが殺害された事例の報告から、子どもの意見を尊重することや、子どもの心身の安全を第一に考えるような家庭裁判所の運用が求められています。
 本書では、面会交流について多角的に考えていきます。第1章では面会交流の実情を論じ、第2章では海外(オーストラリア・イギリス等)の法制度という観点から面会交流について考えます。第3章では、面会交流事例を多く扱う弁護士からの報告と論説です。第4章では面会交流に臨む同居親へのアンケート結果、第5章では同居親の体験談、第6章では面会交流に臨む子どもたちへの調査結果や体験談をふまえて考察します。第7章では、面会交流に直面する子どもたちの精神状態に関する精神科医の見解を紹介します。特に第4、5、6章では、家庭裁判所の面会交流で苦労する声を上げにくい子どもや同居親の声が含まれています。
 この本を編集したのは、筆者が19年間所属した家庭裁判所の調査官、裁判官、調停委員の皆さん、さらには、面会交流事件に関わる弁護士や、児童福祉の関係者、子どもの心のケアや離婚問題に携わる心理職の皆さん、子どもの面会交流問題に悩む当事者の方々に、子どもや同居親の声、海外の実情を知って欲しいと思ったからです。
 決して家庭裁判所を非難するためではありません。家庭裁判所も、多くの困難事件を抱えて、どうすれば事件を解決できるか奮闘しています。しかし、ケースの解決は、子どもの意に反して強いることではなく、子どもの幸せのために、子どもの意思が尊重され、子どもの安心が保障されるように行われなければなりません。
 家庭裁判所は、子どもの立場に立ち、子どもの心身の成長を守る職員の集まりだと信じています。
 この本は、当事者(「あんしん・あんぜんに暮らしたい親子の会」の皆さん)と、実務家、研究者との協働と学習、対話から生まれました。
 ぜひ、本書を読み解き、子どもたち、そして子どもを育てる同居親の声に耳を傾け、子どもの意思を尊重する社会になることを願っています。

著者プロフィール

熊上 崇  (クマガミ タカシ)  (編著

和光大学現代人間学部心理教育学科教授、筑波大学大学院人間総合科学研究科博士課程修了、博士(リハビリテーション科学)。元・家庭裁判所調査官。著書に「発達障害のある触法少年の心理・発達アセスメント」(単著、2015、明石書店)、「ケースで学ぶ司法犯罪心理学」(単著、2020、明石書店)、「心理検査のフィードバック」(編著、2022、図書文化)等。

岡村 晴美  (オカムラ ハルミ)  (編著

名古屋大学法学部卒。2007年1月に弁護士登録。いじめやハラスメントに関する事件のほか、DV、ストーカー、性被害事件など、女性の権利擁護に関する事件を中心に取り組む。弁護士法人名古屋南部法律事務所(愛知県弁護士会)所属。

小川 富之  (オガワ トミユキ)  (

大阪経済法科大学教授。民法・家族法。著書として「離別後の親子関係を問い直す――子どもの福祉と家事実務の架け橋をめざして」(共編、法律文化社、2016)、「欧米先進諸国における『子の最善の利益』の変遷」(梶村太市・長谷川京子・吉田容子編著「離婚後の子どもをどう守るか」所収、日本評論社、2020)など多数。社会活動として、ローエイシア・家族法部会会長(LAWASIA:The Law Association for Asia and the Pacific FamilyLaw and Family Rights Section)、AFCC(国際家庭裁判所調停裁判所協会・Association of Family and Conciliation Courts)執行理事・編集委員。世界会議「家族法と子どもの人権」(The World Congress on Family Law and the Rights of Children)執行部・プログラム委員・国際顧問等を歴任。

石堂 典秀  (イシドウ ノリヒデ)  (

中京大学スポーツ科学部教授。民法、スポーツ法、スポーツ政策を専門とする。主な著書・論文として「オーストラリア家族法における新たな展開――2006年家族法改正法をめぐる論議を中心として」(共著、成文堂、2008)、「裁判所侮辱と面接交渉」(『法社会学65号』2006)、「面接交渉の『強制』に関する諸問題」(『中京法学』40巻、2006)、他多数。

山田 嘉則  (ヤマダ ヨシノリ)  (

クリニックちえのわ、医師。

上記内容は本書刊行時のものです。