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ベルリンを知るための52章
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2023年3月10日
- 書店発売日
- 2023年2月17日
- 登録日
- 2022年11月8日
- 最終更新日
- 2023年4月3日
紹介
東西冷戦時代には壁を隔てて分断され、イデオロギーの違いによって分断を余儀なくされたベルリン。1990年の統合後、異なる歴史と価値観に折り合いをつけ、さらには異民族を吸引し、現在30%が移民という多文化な街に変貌と発展をとげたベルリンの歴史から最新事情までの光と影を描き出す。
目次
はじめに
Ⅰ 変貌する現代ベルリン
第1章 ベルリン発スタートアップ――パラダイムの転換とイノベーション
第2章 フードバンク最前線――食品ロスをなくす
第3章 シェアリング・エコノミー――私有と共有
第4章 ベルリンとサブカルチャー――変貌する拠点
第5章 ベルリンのカウンターカルチャー(対抗文化)――脱資本主義の胎動
第6章 ベルリンの「移民」と教育――多文化都市の素顔
第7章 新型コロナ・パンデミック下のベルリン――ドイツ流対応
Ⅱ 環境都市ベルリン
第8章 ポスト・メルケル新連立政権――移民から環境へ
第9章 ドイツのカーボンニュートラル――エネルギー政策の転換
第10章 電気自動車(EV)へのシフト――自動車王国ドイツの決断
第11章 スマートシティ・ベルリン――都市インフラの具体例
第12章 ベルリンの屋上緑化と街路樹――期待される効果
第13章 ベルリンの公園、都市再整備――自然を感じる大都会
第14章 ベルリンのミツバチ――自然との共生
Ⅲ 生活都市ベルリン
第15章 ベルリンのベジタリアンとヴィーガン――食生活の転換
第16章 オーガニック・マーケット――自然派志向
第17章 ファストフードとスローフード――現代社会の食文化
第18章 ベルリンの青空市と近郊農業(アーバン・ファーミング)――ベルリンの2つの顔
第19章 ベルリンのクラインガルテン――都市型農園
第20章 ベルリンのドメーネ・ダーレム(Domäne Dahlem)――体験型都市農園
第21章 ドメーネ・ダーレム見学記――農園管理人へのインタビュー
Ⅳ 「ベルリン名所」とその歩き方
第22章 シャルロッテンブルク宮殿――エピソードが語る歴史
第23章 ブランデンブルク門――歴史の証人
第24章 博物館島のペルガモン博物館――ベルリンにある遺構
第25章 フンボルト・フォーラム――複合民族博物館
第26章 ベルリン・フィルハーモニー物語――伝統と革新
第27章 ドイツ国会議事堂――生きた歴史博物館
第28章 観光名所となったベルリンの壁――分断の歴史の象徴
第29章 ベルリンの名所の歩き方――街巡りのオススメ
Ⅴ ベルリンの歴史、辺境から政治の中枢へ
第30章 ベルリンの誕生――双子都市
第31章 ブランデンブルク辺境伯領とドイツ騎士団国――「北の十字軍」からルター派へ
第32章 ユグノーの受け入れ――三十年戦争の後遺症
第33章 2つの顔を持つプロイセン王国――軍国主義と啓蒙主義
第34章 ナポレオンのベルリン侵攻――古いドイツの解体と改革
第35章 ベルリン大学の創設――フンボルトの理念
第36章 ドイツ統一のプレリュード(序曲)――関税同盟の効果
Ⅵ ドイツ帝国、ワイマル共和国からナチス時代のベルリン
第37章 ドイツ帝国の成立と首都ベルリンの変貌――ナショナリズムと帝国主義
第38章 第一次世界大戦と帝政崩壊――「背後からの匕首」伝説
第39章 ワイマル共和国の政治――不安定な多党化
第40章 「黄金の20年代」――花開いたベルリン文化
第41章 ナチス時代のベルリン――3つの炎が物語るもの
第42章 ベルリン・オリンピックの聖火リレー伝説――バルカン半島への視線
第43章 世界都市ゲルマニアとその瓦解――夢の跡
Ⅶ 分割から再統一へ
第44章 東西ドイツとベルリンの分割――冷戦の始まり
第45章 鉄のカーテンを越えて――私的なアーカイブ
第46章 壁の崩壊直後の現場にて――歴史が動くとき
第47章 首都はベルリンかボンか――一極集中と連邦制
第48章 ドイツ再統一とユグノーの恩返し――歴史の連鎖
第49章 オスタルギーとメルケルの涙――東西ベルリンの狭間で
第50章 ドイツ無血再統一――生き残ったアンペルマン
第51章 直近の連邦議会選挙とベルリン市議会選挙――ドイツの行方
第52章 『永遠平和のために』――カントの遺言
あとがき
主要参考文献
著者略歴
前書きなど
はじめに
(…前略…)
ベルリンはドイツの他地域と異なる、大きな変貌を遂げてきた。本書は、その動向も踏まえながら、現代ベルリン事情を紹介することを出版理由のひとつにしている。それは、近未来のベルリンがどこへ向かってゆこうとしているのかを見通すことにもつながるからである。
(…中略…)
こうして出来上がったのが本書であるが、その概要を簡単に説明しておきたい。前半のⅠ部~Ⅲ部では現代のベルリンをめぐる変貌ぶり、「環境都市ベルリン」、それから「生活都市ベルリン」という現代事情を述べ、Ⅳ部ではベルリンを訪れたいという人びとのために「ベルリンの名所」を採り上げた。後半のⅤ部~Ⅶ部ではベルリンの歴史を展望するというコンセプトになっている。前半の現代事情と後半の歴史は、分断されているのではなく、有機的に連動していることをご理解いただければありがたいと思う。
たとえば辺境の地であったベルリンが統一ドイツ帝国の首都となったプロセスには、プロイセンの東方植民運動、ユグノーの受け入れ、啓蒙主義と軍国主義などがあったが、ベルリンは第一次世界大戦、ナチスの台頭、第二次世界大戦の震源地となり、挙げ句の果てに廃墟と化す。ベルリンの波乱に満ちた歴史には、エスノ・ナショナリズム(民族・ナショナリズム)にもとづく「小ドイツ主義」、ナチス・ベルリン、東西冷戦の壁、外国人流入という激動の歴史が内包されているが、この波乱の歴史があったからこそ、現代のベルリンが存在するのである。現在、不死鳥のようにベルリンは生き返り、多文化メトロポリスとして世界へ発信している。
以上の観点から、本書では現代ベルリン事情を展開するが、たんにこれはベルリンの都市論だけに閉じたものではない。日本の大都市東京にもフィードバックさせることを念頭に置いて編まれたものである。ベルリンの動向から日本の巨大都市と比較すれば、東京がどの座標軸にあるのか、その類似性と差異がクローズアップされよう。
今後の世界において、都市はますますグローバル化し、コスモポリタン化が進展するであろう。それはたんにベルリンだけの問題ではなく、世界の都市問題に共通するものでもある。しかし、各都市には長年の伝統を受け継いだ特色がある。その意味において、本書の試みがメトロポリスの近未来への展望に、何かお役に立つことがあればまことに幸甚なことである。
上記内容は本書刊行時のものです。