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ブラジルの歴史を知るための50章
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2022年4月10日
- 書店発売日
- 2022年4月11日
- 登録日
- 2022年3月14日
- 最終更新日
- 2022年9月26日
紹介
国土の広大さ、人口の多さから「未来の大国」と認められながら、経済不況に陥る大国ブラジル。しかし、市場の大きさではブラジルの重要性は今も変わっていない。移民が国家形成に重要な役割を果たしたブラジルの人種混淆の歴史と現在の不平等も描き出す待望のブラジル史入門書!
目次
まえがき
第Ⅰ部 発見以前
1 ブラジル先史時代を巡る考古学論争――ユネスコ世界遺産から考える
2 先住民族――先住者としての権利を求め続ける終わりのない道のり
[コラム1]進行する森林破壊と森の守り人・先住民族の抵抗
第Ⅱ部 植民地期
3 ブラジルの「発見」――スペイン・ポルトガルの世界分割
4 ブラジルの開発――パウ-ブラジルとカピタニア制
5 イエズス会と植民地ブラジル――先住民への布教の成功と挫折
6 南極フランスと赤道フランス――フランス人のブラジル進出の夢
7 北東部とサトウキビ農園――砂糖産業の成立とブラジル社会の萌芽
[コラム2]ブラジル的ファミリー史(1)――ブアルケ家
8 アフリカ人奴隷――世界最大の輸入国
9 オランダの北東部支配――宗教的自由とサトウキビ
[コラム3]様々なディアスポラ(1)――17世紀ペルナンブーコのユダヤ人
10 バンデイラ(奥地探検隊)――「奴隷狩り」と奥地の開発
11 ゴールドラッシュ――鉱物資源の発見と経済地図の変化
12 ポンバルとリスボン大地震――最初の「近代的災害」
13 「ミナスの陰謀」と「1817年革命」――土着思想と独立運動
14 ポルトガル王室のブラジル移転――「環大西洋革命」の時代
第Ⅲ部 帝政期
15 イピランガの叫び――ブラジルの独立
16 第1次帝政と独立後の騒乱――ブラジル初代皇帝ペドロ1世の波乱の統治
17 摂政制と第2次帝政――ラストエンペラー「寛容王」ペドロ2世の誕生
18 博物学者が見たブラジル――マルティウスとダーウィン
19 パラグアイ戦争――女性たちから見た三国同盟戦争
20 キロンボ――逃亡奴隷の自己表現
[コラム4]様々なディアスポラ(2)――解放奴隷の西アフリカ帰還
21 奴隷制の廃止――黒人たちの運命
[コラム5]国民食フェイジョアーダのルーツを巡って
22 共和制宣言――帝政の終焉と軍部の台頭
[コラム6]様々なディアスポラ(3)――「コロニア・セシリア」の末裔たち
第Ⅳ部 共和制期
23 コーヒーとカカオ――茶褐色の嗜好品と多彩な労働者
[コラム7]シュラスコの歴史を巡って
24 外国人移民――――植民者、奴隷、そして新たな参画者
[コラム8]ブラジル的ファミリー史(2)――イタリア移民事例
25 カヌードス戦争――創られた「邪教徒集団の反乱」説
26 アマゾン――モノカルチャーからアグロフォレストリーへ
27 第1共和制――「剣の共和制」から「カフェ・コン・レイテ体制」へ
28 「近代芸術週間」――ギオマール・ノヴァイスを中心に再考する
29 テネンティズモとガウーショ――若手将校の武器が変えた社会のしくみ
30 1930年革命――工業化と労働者階級の地位向上と内陸部への前進
31 新国家体制――民族主義と国家主義、ブラジリダーデの時代
32 「ブラジル学」の新展開――ジルベルト・フレイレとセルジオ・ブアルケ
[コラム9]レヴィ=ストロースとブラジル
33 工業化と国内移民――サンパウロ州の事例
34 カンガセイロ――悪党かヒーローか
35 クビシェッキとブラジリア遷都――狂騒の5年
[コラム10]建築家オスカー・ニーマイヤー
36 北東部――干ばつとサンフランシスコ河中流域開発
37 サンバとボサノヴァ――20世紀におけるブラジル混血音楽の完成形
38 シネマ・ノーヴォ――ブラジル映画史に残したその功績
39 「人種民主主義」――実像ならぬブラジル社会の理想像か、それとも虚像か
第Ⅴ部 軍事政権期
40 軍事政権――権威主義体制下の政治と社会
[コラム11]F・H・カルドーゾ(元大統領)の従属的発展論
41 カーニバルに象徴されるブラジル性――移民・奴隷解放・混血の先に生み出されたブラジルの真髄
42 軍政下の文化――言論弾圧とトロピカリズモ
[コラム12]サッカーに見るブラジル社会の背景(1)
[コラム13]サッカーに見るブラジル社会の背景(2)
第Ⅵ部 新共和制
43 民政復帰と「失われた10年」――「中所得国の罠」に陥っているのか
44 ブラジル黒人運動――苦難に満ちた道のりとこれまでの成果
[コラム14]ブラジルにおけるアフリカ史研究・教育(1)
45 カルドーゾ、ルーラ、ボルソナーロ――3人の大統領の三者三様の特徴
[コラム15]ブラジルにおけるアフリカ史研究・教育(2)
46 ブラジルの農業パワー――潜在力と試練
47 環境と開発――環境破壊型から持続可能型開発へ
[コラム16]持続可能なアマゾン農林業への取組と課題
48 格差と分断を乗り越える――市民社会の行動から学ぶ
49 日系移民――激動の20世紀と共同体の発展
[コラム17]渋沢敬三『南米通信』(1958年)を再読する
50 日伯経済協力プロジェクト――1970年代という時代
ブラジルの歴史を知るためのブックガイド
ブラジル史略年表
前書きなど
はじめに
ブラジルと聞いて、どんなイメージを持たれるであろうか。一般的には熱帯アマゾン、リオのカーニバル、サンバやボサノヴァに代表される音楽、サッカーといったところだろうか。経済に関心のある人であれば、世界有数の農業大国(コーヒー、サトウキビ、オレンジ、大豆、トウモロコシ、牛肉、鶏肉など)にして資源大国(鉄鉱石、金、ボーキサイト、ニッケル、石油など)であることを思い浮かべるだろう。年配の人であれば20世紀後半の「ブラジルの奇跡」から経済の破綻(累積債務や債務不履行、ハイパーインフレ)のプロセスを思い浮かべる人もいるかもしれない。一方、昨今、日本の若者はブラジル風のリラックスしたライフスタイルに近づいているように思われる。Tシャツにバミューダパンツ、ビーチサンダル姿で、バーベキュー(ブラジルではシュラスコと言う)を楽しみ、アサイーなどのトロピカルフルーツのジュースを味わっている。
国土の広大さ(世界第5位)、人口の多さ(世界第5位。現在では2億人を超える)、資源の豊かさから、「未来の大国」として認められながらも、経済低迷を続けてきたブラジルは、21世紀の幕開けとともに、経済を立て直し、再び表舞台に現れてきた。ゴールドマン・サックス社は、2003年に発表したレポートの中でBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)について言及し、2050年にはBRICsの4カ国がGDPで上位6カ国に入ると予想した。2011年には既にGDPが世界第6位になり、2014年にはサッカーワールドカップを、2016年にはオリンピックを開催し、順風満帆であると思われたものの、その後、経済成長は鈍化し再び不況に陥ってしまった。
とは言うものの、世界におけるブラジルの重要性は変わってはいない。ブラジルの消費市場には変わらず熱い視線が注がれている。例えば、ビール消費量では世界3位、化粧品市場では世界第4位(1位米国、2位中国、3位日本)というように、世界でもトップクラスの市場規模を有している。
(…中略…)
このような一筋縄ではいかないブラジルの歴史を、50章に分けて記述したのが本書である。歴史事項とトピックをほぼ時系列に章立てした。各章で扱わなかったテーマやカバーしきれなかった箇所はコラムで補った。
追記
【執筆者一覧】
伊藤秋仁(いとう・あきひと)
京都外国語大学教授
主要業績:『ブラジル国家の形成』(共著、晃洋書房、2015年)、エドワード・E・テルズ『ブラジルの人種的不平等』(共訳、明石書店、2011年)、ドラウジオ・ヴァレーラ『カランヂル駅――ブラジル最大の刑務所における囚人たちの生態』(翻訳、春風社、2021年)
梅村誠エリオ(うめむら・まこと・えりお)
東京農工大学産学官連携研究員
主要業績:『抵抗と創造の森アマゾン』(共著、現代企画室、2017年)
小澤卓也(おざわ・たくや)
神戸大学大学院国際文化学研究科教授
主要業績:『先住民と国民国家』(単著、有志舎、2007年)、『コーヒーのグローバル・ヒストリー』(単著、ミネルヴァ書房、2010年)。
加賀美思帆(かがみ・しほ)
東京農工大学特任助教
主要業績:『特用農産物の市場流通と課題』(共著、農林統計協会、2008年)
河合沙織(かわい・さおり)
龍谷大学准教授
主要業績:「ブラジル有権者の急な右旋回:市データを用いた2018年大統領選挙の分析」(共著,『国民経済雑誌』219(6),2019年),A New "Order and Progress" in the Brazilian Economy, IDE Spot Survey (35) , 2015.
岸本憲明(きしもと・のりあき)
一般財団法人海外投融資情報財団シニアフェロー
主要業績:『現代ブラジル事典』(共著、新評論、2005年)、『市場と政府――ラテンアメリカの新たな開発枠組み』(共著、アジア経済研究所、1997年)
岸和田仁(きしわだ・ひとし)
日本ブラジル中央協会常務理事、隔月刊情報誌『ブラジル特報』編集人
主要業績:『サンフランシスコ河中流域日系人入植小史』(1994年)、『熱帯の多人種主義社会 ブラジル文化讃歌』(つげ書房新社、2005年)、『輝号(ブラジル「勝ち組」広報誌)復刻版』(解説、不二出版、2012年)、カエターノ・ヴェローゾ『熱帯の真実』(解説、アルテスパブリッシング、2020年)
國安真奈(くにやす・まな)
ポルトガル語会議通訳・翻訳者
主要業績:ルイ・カストロ『ボサノヴァの歴史』(翻訳、音楽之友社、2001年)、クリストファー・ダン『トロピカーリア――ブラジル音楽を変革した文化ムーヴメント』(翻訳、音楽之友社、2005年)、カエターノ・ヴェローゾ『熱帯の真実』(翻訳、アルテス・パブリッシング、2020年)。
疇谷憲洋(くろたに・のりひろ)
大分県立芸術文化短期大学教授
主要業績:「渡海者から献策家(アルビトリスタ)へ――新キリスト教徒商人ドゥアルテ・ゴメス・ソリスの意見と企図」上田信・中島楽章編『アジアの海を渡る人々 16・17世紀の渡海者』(春風社、2021年)
KTa☆brasil(ケイタ・ブラジル)
音楽家・プレゼンター/リオ市公式ジャーナリスト・カメラマン
プロフィール:Newsweek誌「世界が尊敬する日本人100」他、国際選出・受賞者。日本・ブラジル・第三国政府や国際企業のブラジル事業担当/メディア実績多数。ブラジルサッカー連盟CBF TV他多数TV局が単独特集、ドキュメンタリー作品化される。90年代よりブラジル各地~世界各地で活動。Império Serrano認定資格指導者・日本代表。『リオデジャネイロという生き方』(双葉社、2016年)命名・共著者。
ケペル木村(けぺる・きむら)
音楽ライター、ザブンベイロ
プロフィール:初渡伯は1986年で3カ月間滞在。1989年からブラジルCDの輸入と国内販売を行う。並行してブラジル音楽の演奏を始め、2018年にはSESCサンパウロに呼ばれて日本人による北東部音楽の演奏を披露する。
佐々木剛二(ささき・こうじ)
慶應義塾大学SFC研究所上席所員。博士(学術)。東京大学大学院総合文化研究科修了。州立カンピーナス大学客員研究員、日本学術振興会特別研究員、東京大学学術研究員、森記念財団都市戦略研究所研究員、慶應義塾大学特任講師などを経て現職。人類学、都市、持続可能性などに関する多様なプロジェクトに携わる。
主要業績:単著に『移民と徳――日系ブラジル知識人の歴史民族誌』(名古屋大学出版会、2020年)。
定森徹(さだもり・とおる)
NPO法人クルミン・ジャポン創設者、サマウーマ・コンサルティング代表。
主要業績:『抵抗と創造の森アマゾン』(共著、現代企画室、2017年)、『知る・わかる・伝えるSDGs I』(共著、学文社、2019年)
下郷さとみ(しもごう・さとみ)
ジャーナリスト
主要業績:『コロナ危機と未来の選択』(共著、コモンズ、2021年)、『創造と抵抗の森アマゾン』(共著、現代企画室、2017年)、『平和を考えよう』(あかね書房、2013年)。
ジャッケス・ヒベンボイン(Jacques Ribemboim)
ペルナンブーコ連邦農科大学教授
主要業績(タイトル和訳):『独立ノルデスチ』(Bagaço出版、2002年)、『ブラジルの持続可能な水産経済学』(Bagaço出版、2010年)、『1970年代80年代のブラジル経済(英文)』(NovoEstilo出版、2013年)、『フェルナンのペルナンブーコ』(UFRPE出版、2015年)、『ユダヤ論集』(Babecco出版、2017年)、『経済論集』(Babecco出版、2020年)
ジョゼ・ニヴァルド・ジュニオール(Jose Nivaldo Junior)
弁護士、作家、詩人
主要業績(タイトル和訳):『1964年 神の裁き』(Bagaço出版、2016年)、『ラヴァジャット時代の愛とコレラ』(Bagaço出版、2018年)、『マキアヴェリと権力』(Martin Claret出版、2020年)
住田育法(すみだ・いくのり)
京都外国語短期大学教授
主要業績:『ブラジルの都市問題――貧困と格差を越えて』(監修・共編著、2009年、春風社)、『ブラジル国家の形成――その歴史・民族・政治』(共著、2015年、晃洋書房)。
田村梨花(たむら・りか)
上智大学教授
主要業績:『ブラジルの人と社会』(共編、上智大学出版、2017年)、『抵抗と創造の森アマゾン――持続的な開発と民衆の運動』(共編、現代企画室、2017年)
旦敬介(だん・けいすけ)
明治大学教授
主要業績:チャトウィン『ウイダーの副王』(翻訳、みすず書房、2015年)、『ライティング・マシーン』(インスクリプト、2010年)、「環大西洋コミュニティ ブラジル帰還人の世界』(『神奈川大学評論』、2013年)
千年篤(ちとせ・あつし)
東京農工大学教授
主要業績:『共生社会システム学序説』(共著、青木書店、2007年)、Research Approaches to Sustainable Biomass Systems, co-edited by Seishu Tojo and Tadashi Hirasawa, Elsevier Academic Press, 2014.
福嶋伸洋(ふくしま・のぶひろ)
共立女子大学准教授
主要業績:『魔法使いの国の掟』(慶應義塾大学出版会、2011年)、『リオデジャネイロに降る雪』(岩波書店、2016年)。
藤掛洋子(ふじかけ・ようこ)
横浜国立大学都市科学部長・都市イノベーション研究院教授
主要業績:「パラグアイのスラム『バニャード・スール』におけるリスクとジェンダー――COVID-19禍におけるカテウラ地域住民の日常実践にかかる一考察」(国際ジェンダー学会編『国際ジェンダー学会誌』Vol.19:9-31)。
布留川正博(ふるがわ・まさひろ)
同志社大学名誉教授
主要業績:『奴隷船の世界史』(岩波新書、2019年)、『イギリスにおける奴隷貿易と奴隷制の廃止――環大西洋世界のなかで』(有斐閣、2020年)
三石誠司(みついし・せいじ)
宮城大学教授
主要業績『米国農業法の20年――商品・保全・作物収入保険の支出推移からの分析』(翻訳、農政調査委員会、2020年)、『トウモロコシ・大豆の生産費と輸出競争力――アルゼンチン・ブラジル・米国』(翻訳、農政調査委員会、2018年)。
矢澤達宏(やざわ・たつひろ)
上智大学教授
主要業績:『ブラジル黒人運動とアフリカ――ブラック・ディアスポラが父祖の地に向けてきたまなざし』(慶應義塾大学出版会、2019年)、『ポルトガル語圏世界への50のとびら』(上智大学出版、2016年)。
山崎圭一(やまざき・けいいち)
横浜国立大学教授
主要業績:『ゼロからはじめる経済入門――経済学への招待』(共編著、有斐閣、2019年)、『ラテンアメリカはどこへ行く』(共編著、ミネルヴァ書房、2017年)
山田祐彰(やまだ・まさあき)
東京農工大学教授
主要業績:『アマゾン――保全と開発』(共著、朝倉書店、2005年)、『農業経営の持続的成長と地域農業』(共著、養賢堂、2006年)
山本利彦(やまもと・としひこ)
元在サンパウロ日本国総領事館専門調査員
主要業績:O cinema de Glauber Rocha no Japão, Revista de Estudos Universitários, 2012.
上記内容は本書刊行時のものです。